《電力》〈送電〉[R4下:問8]架空送電線路の構成要素に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

架空送電線路の構成要素に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) アークホーン:
 がいしの両端に設けられた金属電極をいい,雷サージによるフラッシオーバの際生じるアークを電極間に生じさせ,がいし破損を防止するものである。

(2) トーショナルダンパ:
 着雪防止が目的で電線に取り付ける。風による振動エネルギーで着雪を防止し,ギャロッピングによる電線間の短絡事故などを防止するものである。

(3) アーマロッド:
 電線の振動疲労防止やアークスポットによる電線溶断防止のため,クランプ付近の電線に同一材質の金属を巻き付けるものである。

(4) 相間スペーサ:
 強風などによる電線相互の接近及び衝突を防止するため,電線相互の間隔を保持する器具として取り付けるものである。

(5) 埋設地線:
 塔脚の地下に放射状に埋設された接地線,あるいは,いくつかの鉄塔を地下で連結する接地線をいい,鉄塔の塔脚接地抵抗を小さくし,逆フラッシオーバを抑止する目的等のため取り付けるものである。

【ワンポイント解説】

送電線の振動対策や雷害対策に関する問題です。
いずれの内容も非常に出題されやすい頻出内容なので,概要を理解しておくようにしましょう。

1.電線の振動
電線が振動すると隣の電線と接触し,短絡事故が発生したり,振動による応力で,電線の損傷や破断等が発生する可能性があります。
①微風振動
 電線に対して直角に微風(数\( \ \mathrm {m/s} \ \))が当たると気流の流れにより電線の背後にカルマン渦が生じて上下の振動が発生します。電線が軽く,径間が長い場合に発生しやすくなります。

②サブスパン振動
 多導体の送電線のスペーサ間のことをサブスパンと言い,そこに風速\( \ \mathrm {10m/s} \ \)以上の風が吹くと電線背後にカルマン渦が発生し振動する現象です。

③ギャロッピング
 電線の表面に非対称な氷雪が付着し,風下側にカルマン渦が生じて振動します。振動数はサブスパン振動と同程度と言われています。

④スリートジャンプ
 電線に雪が積雪し,それが落ちる反動で振動する現象で,振幅が大きく短絡のリスクが高い現象です。

⑤コロナ振動
 雨が降っている時や霧が出ている時に発生しやすく,電線から水滴が離れる際にコロナ放電により,電線に反発力が生じて振動する現象です。

2.電線の振動対策
①ダンパの設置
 電線に取り付けるおもりで,ダンパの設置により,振動エネルギーを吸収します。

②アーマロッドによる補強
 電線に巻き付ける物で,振動の吸収と電線の補強を行います。下図のダンパの上の電線に巻き付けられている導体がアーマロッドです。

③スペーサの設置
 多導体にスペーサを設置し,電線同士の接触を防止します。

④難着雪リングの取付
 電線からすべり落ちてきた雪をリング部で落下させることにより,氷雪の付着と成長を防止します。


出典:TDKテクノマガジンHP
https://www.tdk.com/ja/tech-mag/ninja/099

3.架空地線
<架空地線の役割>
架空地線は電線の上部、主に鉄塔の一番上に設ける裸電線で,以下のような役割があります。
①送電線への直撃雷を防止する。
②誘導雷(雷雲の電荷により反対の電荷が電線に現れ,落雷により雷雲の電荷がなくなるために電線で大きな電荷の移動が起こる現象)を軽減する。
③通信線への電磁誘導障害を軽減する。

<架空地線落雷時の対策>
また,架空地線や鉄塔に落雷した際の逆フラッシオーバに対する対策として,以下のような対策が取られます。
①埋設地線で鉄塔と大地の接地抵抗を小さくする。
②アークホーンでがいしの損傷を防止する。(逆フラッシオーバ自体の対策ではありません。)
③\( \ 2 \ \)回線送電線におけるがいしの連結個数に差をつけて,両回線同時事故を防ぐ。

【解答】

解答:(2)
(1)正しい
ワンポイント解説「3.架空地線」の通り,アークホーンはがいしの両端に設けられる金属電極で,フラッシオーバの際生じるアークを電極間に生じさせ,がいしを保護するものです。

(2)誤り
ワンポイント解説「2.電線の振動対策」の通り,トーショナルダンパは電線に取り付けるおもりで,風による上下の振動を防止するものです。

(3)正しい
ワンポイント解説「2.電線の振動対策」の通り,アーマロッドは,電線の振動疲労防止,さらにはアークスポットによる電線溶断防止のためクランプ付近の電線に同一材質の金属を巻き付け補強するものです。

(4)正しい
ワンポイント解説「2.電線の振動対策」の通り,相間スペーサは強風などによる電線相互の接近及び衝突を防止するため,電線相互の間隔を保持する器具として取り付けるもので,主に多導体方式に使用されます。

(5)正しい
ワンポイント解説「3.架空地線」の通り,塔脚の地下に放射状に埋設された接地線で,鉄塔の塔脚接地抵抗を小さくし,逆フラッシオーバを抑止する目的等のため取り付けるものです。