《電力》〈変電〉[R4下:問7]変圧器の結線方式の違いと特性に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,変圧器の結線方式に関する記述である。

変圧器の一次側,二次側の結線に\( \ \mathrm {Y} \ \)結線及び\( \ \Delta \ \)結線を用いる方式は,結線の組合せにより四つのパターンがある。このうち,\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)結線はひずみ波の原因となる励磁電流の第\( \ 3 \ \)高調波が環流し,吸収される効果が得られるが,一方で中性点の接地が必要となる場合は適さない。\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)結線は一次側,二次側とも中性点接地が可能という特徴を有する。\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)結線及び\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)結線は第\( \ 3 \ \)高調波の環流回路があり,一次側若しくは二次側の中性点接地が可能である。\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)結線は昇圧用に,\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)結線は降圧用に用いられることが多い。

特別高圧系統では変圧器中性点を各種の方法で接地することから,\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)結線の変圧器が用いられるが,第\( \ 3 \ \)高調波の環流の効果を得る狙いから\( \ \fbox {  (オ)  } \ \)結線を用いた三次巻線を採用していることが多い。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。ただし,(ア)~(エ)の左側は一次側,右側は二次側の結線を表す。
\[
\begin{array}{cccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) & (オ) \\
\hline
(1) &  \mathrm {Y-Y}  &  \mathrm {\Delta -\Delta }  &  \mathrm {Y-\Delta }  &  \mathrm {\Delta -Y}  &  \Delta  \\
\hline
(2) &  \mathrm {\Delta -\Delta }  &  \mathrm {Y-Y}  &  \mathrm {\Delta -Y}  &  \mathrm {Y-\Delta }  &  \Delta  \\
\hline
(3) &  \mathrm {\Delta -\Delta }  &  \mathrm {Y-Y}  &  \mathrm {Y-\Delta }  &  \mathrm {\Delta -Y}  &  \Delta  \\
\hline
(4) &  \mathrm {Y-\Delta }  &  \mathrm {\Delta -Y}  &  \mathrm {\Delta -\Delta }  &  \mathrm {Y-Y}  &  \mathrm {Y}  \\
\hline
(5) &  \mathrm {\Delta -\Delta }  &  \mathrm {Y-Y}  &  \mathrm {\Delta -Y}  &  \mathrm {Y-\Delta }  &  \mathrm {Y}  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

変圧器の結線方式に関する問題です。
内容としては比較的定番の問題ですが,(ウ)と(エ)の空欄を間違えてしまった受験生もいたかなという印象です。
\( \ \mathrm {Y} \ \)結線の方が\( \ \Delta \ \)結線より相電圧が低いことを理解し,基本的に電圧が高い方の変圧器に高電圧がかからないよう\( \ \mathrm {Y} \ \)結線にすると考えると覚えやすいかと思います。

1.変圧器の結線方式
①\( \ \mathrm {Y-Y} \ \)結線
図1のような結線方式で,\( \ \Delta \ \)結線を持っていないため,第\( \ 3 \ \)調波を還流することができず,二次側の誘導起電力にひずみが発生してしまいます。
したがって,通常この方式を利用する時には,三次側に\( \ \Delta \ \)結線を設け,\( \ \mathrm {Y-Y-\Delta } \ \)結線として利用します。

②\( \ \mathrm {\Delta -\Delta } \ \)結線
図2のような結線方式で,一次二次側とも\( \ \Delta \ \)結線がなされているため,第\( \ 3 \ \)調波を還流することができ,二次側の誘導起電力はひずみのない正弦波が出力されます。
一次二次電圧間に位相差がなく,単相変圧器\( \ 3 \ \)台を利用した場合,\( \ 1 \ \)つの変圧器が故障しても\( \ \mathrm {V-V} \ \)結線として運転を継続することが可能となります。
一方で,中性点を持たないため,中性点接地を行う場合,接地用変圧器を使用する必要があります。

③\( \ \mathrm {Y-\Delta } \ \)結線もしくは\( \ \mathrm {\Delta -Y} \ \)結線
図3のような結線方式で,\( \ \mathrm {Y} \ \)結線側では中性点接地,\( \ \Delta \ \)結線側では第\( \ 3 \ \)調波を還流することができるので,双方の特長をどちらも利用できる方式と言えます。
しかしながら,一次二次の電圧に\( \ 30° \ \)の位相差を生じてしまうので,変圧器の並行運転の際には角変位に注意する必要があります。
一般に昇圧用には\( \ \mathrm {\Delta -Y} \ \)結線,降圧用には\( \ \mathrm {Y-\Delta } \ \)結線を使用します。

④\( \ \mathrm {Y-Y-\Delta } \ \)結線
一次二次間に位相差がなく中性点接地ができるという\( \ \mathrm {Y-Y} \ \)結線の特長,及び三次側に\( \ \Delta \ \)結線がなされているため,第\( \ 3 \ \)調波を還流することができるという\( \ \mathrm {Y-\Delta } \ \)の特長を併せ持ったような結線方式となります。

⑤\( \ \mathrm {V-V} \ \)結線
単相変圧器\( \ 3 \ \)台を利用して\( \ \mathrm {\Delta -\Delta } \ \)結線で運転している場合に,\( \ 1 \ \)の変圧器が故障して運転継続する場合に利用します。
また,あらかじめ設備を小さくしておき,将来増強することができるように,この方式が用いられることもあります。
設備利用率が容量の\( \ 86.6 \ % \ \left( \displaystyle \frac {\sqrt {3}}{2}\right) \)が最大で,出力は\( \ \mathrm {\Delta -\Delta } \ \)結線の\( \ 57.7 \ % \ \left( \displaystyle \frac {1}{\sqrt {3}}\right) \)が最大となります。

【解答】

解答:(2)
(ア)
ワンポイント解説「1.変圧器の結線方式」の通り,ひずみ波の原因となる励磁電流の第\( \ 3 \ \)高調波が環流し,吸収されるのは\( \ \Delta \ \)結線の特徴なので,\( \ \mathrm {\Delta -\Delta } \ \)結線となります。

(イ)
ワンポイント解説「1.変圧器の結線方式」の通り,中性点接地が可能というのは\( \ \mathrm {Y} \ \)結線の特徴なので,\( \ \mathrm {Y-Y} \ \)結線となります。

(ウ)
ワンポイント解説「1.変圧器の結線方式」の通り,\( \ \mathrm {Y-\Delta } \ \)結線及び\( \ \mathrm {\Delta -Y} \ \)結線のうち昇圧用に用いられるのは\( \ \mathrm {\Delta -Y} \ \)結線となります。

(エ)
ワンポイント解説「1.変圧器の結線方式」の通り,\( \ \mathrm {Y-\Delta } \ \)結線及び\( \ \mathrm {\Delta -Y} \ \)結線のうち降圧用に用いられるのは\( \ \mathrm {Y-\Delta } \ \)結線となります。

(オ)
ワンポイント解説「1.変圧器の結線方式」の通り,特別高圧系統では\( \ \mathrm {Y-Y-\Delta } \ \)結線が用いられ,三次巻線に\( \ \Delta \ \)結線を用います。