《電力》〈水力〉[R06上:問1]衝動水車を中心とした水力発電所の内容に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

水力発電所に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 衝動水車にはペルトン水車などがある。

(2) ペルトン水車の水圧管の先端ノズル内にはニードル弁があり,通常運転時は出力変化に応じて流量調整を行う。

(3) 故障発生時などでペルトン水車を急停止させるときは,ニードル弁でノズルから出る噴流を急速に止めると同時にデフレクタを停止位置にして噴流を完全に遮断する。

(4) 小水力発電は,主に流れ込み式,水路式が多く,比較的小規模な発電設備で発電を行う。一般河川の水のエネルギーの利用だけでなく,農業用水,上下水道など低落差あるいは少流量の水のエネルギーも活用している。

(5) クロスフロー水車は小水力発電で多く用いられ,円筒状のランナの軸に直角方向から流水が流入しランナ内を貫通して流出する水車である。ガイドベーンを有し低流量時でも効率低下が小さい。

【ワンポイント解説】

水力発電所のうち,主に衝動水車に関する問題です。
サラッと読んでしまうと誤りの選択肢の間違いに気付きにくい内容となっています。問1から受験生に少し厳しい問題ですが,一語一語に注意して消去法で解いていくようにして下さい。

1.衝動水車
水のもつ位置エネルギー(位置水頭)を運動エネルギー(速度水頭)に変え,流水をランナに作用させる水車を衝動水車と言います。
代表的なものにペルトン水車があり,図1に示すように主にノズル,ニードル,ランナ等から構成され,ノズルから水を噴射し,ランナを回転させます。水量は主にニードルで調整します。
水車の負荷が急激に減少し水量を減少させるときは,水圧管内圧力の異常上昇を防ぐため,デフレクタを挿入してランナに当たる噴流をそらせておいて,ニードルを徐々に閉止していきます。

2.反動水車
水のもつ位置エネルギー(位置水頭)を圧力エネルギー(圧力水頭)に変換し,ランナに作用させる水車を反動水車と言います。
代表的なものにフランシス水車があり,入口にあるガイドベーンとランナの羽根の開度で出力を調整します。他にもランナを通過する流水の方向が斜めのものを斜流水車(ランナを可動式としたものをデリア水車),流水がランナの軸方向に通過するものをプロペラ水車(ランナを可動式としたものをカプラン水車)と言います。高落差のものからフランシス水車→斜流水車→プロペラ水車となります。
また,出口部に吸出し管というラッパ状の管を設け,ランナ出口から放水面までの位置エネルギーを有効利用します。


出典:みんなが欲しかった!電験三種電力の実践問題集 P.7

【解答】

解答:(3)
(1):正しい
ワンポイント解説「1.衝動水車」の通り,衝動水車にはペルトン水車などがあります。

(2):正しい
ワンポイント解説「1.衝動水車」の通り,ペルトン水車の水圧管の先端ノズル内にはニードル弁があり,通常運転時は出力変化に応じてニードル弁の開度を調整し流量調整を行います。

(3):誤り
ワンポイント解説「1.衝動水車」の通り,故障発生時などでペルトン水車を急停止させるときは,デフレクタで噴流を遮断しておいて,ニードル弁でノズルから出る噴流を徐々に止めていきます

(4):正しい
問題文の通り,ダム式を用いる大規模な水力発電と異なり,小水力発電は,主に流れ込み式,水路式が多く,比較的小規模な発電設備で発電を行います。また,一般河川の水のエネルギーの利用だけでなく,農業用水,上下水道など低落差あるいは少流量の水のエネルギーも活用します。

(5):正しい
クロスフロー水車は衝動水車と反動水車を組み合わせたような水車で,小水力発電で多く用いられ,円筒状のランナの軸に直角方向から流水が流入しランナ内を貫通して流出します。ガイドベーンを有し低流量時でも効率低下が小さいという特徴があります。