《電力》〈送電〉[R08上:問10]地中送電線路の電力ケーブルで発生する損失の特徴に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★★★(難しい)

地中送電線路の電力ケーブルで発生する損失に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 電力ケーブルの抵抗損は,導体自身を流れる交流電流によって生じる交番磁界の影響で,導体を流れる電流密度分布に偏りが発生するという表皮効果によって大きくなる。導体の断面積が大きいほど表皮効果の影響が大きいため,分割導体や素線絶縁導体を採用することで抵抗損を低減することができる。

(2) 電力ケーブルの抵抗損は,近接して配置されるケーブル導体を流れる交流電流によって生じる交番磁界の影響で,導体を流れる電流密度分布に偏りが発生するという近接効果によって大きくなる。電力ケーブルの相間距離が短いほど近接効果の影響が大きいため,電力ケーブルの相間距離を離すことで抵抗損を低減することができる。

(3) 電力ケーブルの誘電損は,印加される交流電圧と同位相の電流成分が絶縁体にわずかに流れることで生じる。この誘電損は,絶縁体の誘電率及び誘電正接に比例し,印加電圧の\( \ 2 \ \)乗に比例するため,印加電圧が同じ場合には誘電率及び誘電正接の小さい絶縁体を使用することで誘電損を低減することができる。

(4) 電力ケーブルのシース回路損は,導体を流れる交流電流によって生じる交番磁界の影響で,金属シースの長手方向に電流が誘導されることで生じる。クロスボンド接地方式の採用によって,\( \ 3 \ \)相の各電力ケーブルの金属シースに流れる誘導電流どうしが打ち消し合う効果が得られるため,シース回路損を低減することができる。

(5) 電力ケーブルの渦電流損は,導体を流れる交流電流によって生じる交番磁界の影響で,金属シース内に渦電流が誘導されることで生じる。厚さの薄い金属シースの採用によって交番磁界の影響を小さくすることや,導電率の高い金属シースの採用によって渦電流による発熱を小さくすることで,渦電流損を低減することができる。

【ワンポイント解説】

地中送電線路の電力ケーブルで発生する各損失の特徴に関する問題です。
問題文が非常に長く,誤りが見つかりにくいので,苦戦した受験生が多かったかなと思います。しかしながら,間違い箇所が平成29年問10と同じ箇所であったため,過去問をしっかりと学習していた受験生は十分に対応できたかと思います。

1.ケーブルに発生する損失
①抵抗損
導体部の抵抗により発生する損失で,導体電流の\( \ 2 \ \)乗に比例します。

②誘電体損
ケーブルの絶縁体部に流れる電流のうち,抵抗成分に流れる電流による損失です。ケーブルは誘電体を金属で挟んだコンデンサのような構造をしているため,損失分も合わせ一相分等価回路は図2のように抵抗\( \ R \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)と静電容量\( \ C \ \mathrm {[F]} \ \)の並列回路となり,図3のベクトル図に示すような電流が流れます。ただし,\( \ \dot E \ \mathrm {[V]} \ \)はケーブルに加わる電圧の相電圧となります。
この時のコンデンサ分に流れる電流\( \ I_{\mathrm {C}} \ \mathrm {[A]} \ \)に対する抵抗分に流れる電流\( \ I_{\mathrm {R}} \ \mathrm {[A]} \ \)の割合\( \ \displaystyle \frac {I_{\mathrm {R}}}{I_{\mathrm {C}}}=\tan \delta \ \)を誘電正接と呼び,ケーブルが劣化してくると大きくなります。
ケーブルの誘電体損\( \ W_{\mathrm {d}} \ \mathrm {[W]} \ \)は,ケーブルに加わる電圧(線間電圧)を\( \ V \ \mathrm {[V]} \ \),周波数を\( \ f \ \mathrm {[Hz]} \ \),角周波数を\( \ \omega =2\pi f \ \mathrm {[rad / s]} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
W_{\mathrm {d}}&=&3\frac {V}{\sqrt {3}}I_{\mathrm {R}} \\[ 5pt ] &=&3\frac {V}{\sqrt {3}}I_{\mathrm {C}}\tan \delta \\[ 5pt ] &=&3\frac {V}{\sqrt {3}}\left( \omega C\frac {V}{\sqrt {3}}\right) \tan \delta \\[ 5pt ] &=&\omega CV^{2}\tan \delta \\[ 5pt ] &=&2\pi f CV^{2}\tan \delta \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,誘電体損は電圧\( \ V \ \mathrm {[V]} \ \)の\( \ 2 \ \)乗に比例し,周波数\( \ f \ \mathrm {[Hz]} \ \),誘電正接\( \ \tan \delta \ \)に比例することがわかります。

③シース損
ケーブルの絶縁体部の外側に巻く金属(シース)に発生する損失で,図4に示すようにシースを流れる循環電流によるシース回路損と渦電流による渦電流損があります。ケーブル導体を流れる電流から発生する磁束により電圧が誘起され損失が発生します。

2.クロスボンド接地方式
こう長の長い長距離のケーブル系統で採用される方式です。ケーブルを\( \ 3 \ \)本の倍数に分割し,接続箱部分で各相の金属シースを入れ替えて接続し,ケーブルのシース部を絶縁接続して,図1のような回路を構成します。各区間で発生するシース誘起電圧の位相が\( \ 120^{\circ } \ \)ずつずれるため,各相に流れるシース電流のベクトル和をほぼ零になります。
したがって,両端を接地してループ回路を形成してもシース電流を小さくすることができます。

3.表皮効果
交流電流において,導体内を流れる電流によりアンペールの法則に沿った磁界が発生し,その発生した磁界の変化によりファラデーの電磁誘導の法則に沿った渦電流が発生することで,導体内の電流分布が外側に集中する現象です。
電線の断面積が大きい電線では無視できなくなり,角周波数と透磁率,導電率が大きくなるほど顕著となります。

4.近接効果
平行して並ぶ\( \ 2 \ \)本以上の電線に交流電流が流れているとき,導体内を流れる電流によりアンペールの法則に沿った磁界が発生し,その発生した磁界の変化によりファラデーの電磁誘導の法則に沿った渦電流が発生することで,互いの磁場が干渉し合って電線内部の電流密度が偏る現象です。相間距離が短いほど近接効果の影響は大きくなります。

【解答】

解答:(5)
(1)正しい
ワンポイント解説「3.表皮効果」の通り,電力ケーブルの抵抗損は表皮効果によって大きくなり,導体の断面積が大きいほど表皮効果の影響が大きいため,分割導体や素線絶縁導体を採用することで抵抗損を低減することができます。

(2)正しい
ワンポイント解説「4.近接効果」の通り,電力ケーブルの抵抗損は近接効果によって大きくなり,電力ケーブルの相間距離が短いほど近接効果の影響が大きいため,電力ケーブルの相間距離を離すことで抵抗損を低減することができます。

(3)正しい
ワンポイント解説「1.ケーブルに発生する損失」の通り,電力ケーブルの誘電損は,印加される交流電圧と同位相の電流成分が絶縁体にわずかに流れることで生じ,絶縁体の静電容量(∝誘電率)及び誘電正接に比例し,印加電圧の\( \ 2 \ \)乗に比例するため,印加電圧が同じ場合には誘電率及び誘電正接の小さい絶縁体を使用することで誘電損を低減することができます。

(4)正しい
ワンポイント解説「2.クロスボンド接地方式」の通り,電力ケーブルのシース回路損は,金属シースの長手方向に電流が誘導されることで生じ,クロスボンド接地方式の採用によって,\( \ 3 \ \)相の各電力ケーブルの金属シースに流れる誘導電流どうしが打ち消し合う効果が得られるため,シース回路損を低減することができます。

(5)誤り
ワンポイント解説「1.ケーブルに発生する損失」の通り,電力ケーブルの渦電流損は,導体を流れる交流電流によって生じる交番磁界の影響で,金属シース内に渦電流が誘導されることで生じます。厚さの薄い金属シースの採用によって交番磁界の影響を小さくすることや,導電率の低い金属シースの採用によって渦電流による発熱を小さくすることで,渦電流損を低減することができます。