《法規》〈電気施設管理〉[H19:問10]絶縁油の保守,点検のため行う試験に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

自家用需要家が絶縁油の保守,点検のため行う試験には,絶縁耐力試験及び\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)試験が一般に実施されている。

絶縁油,特に変圧器油は,使用中に次第に劣化して酸価が上がり,\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)や耐圧が下がるなどの諸性能が低下し,ついには泥状のスラッジができるようになる。変圧器油劣化の主原因は,油と接触する空気が油中に溶け込み,その中の酸素による酸化であって,この酸化反応は変圧器の運転による\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)の上昇によって特に促進される。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ)及び(ウ)に当てはまる語句として,正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
\[
\begin{array}{cccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) \\
\hline
(1) &  酸価度  &  濃 度  &  湿 度  \\
\hline
(2) &  酸価度  &  抵抗率  &  湿 度  \\
\hline
(3) &  重合度  &  濃 度  &  湿 度  \\
\hline
(4) &  酸価度  &  抵抗率  &  温 度  \\
\hline
(5) &  重合度  &  抵抗率  &  温 度  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

絶縁油の保守,点検のため行う試験に関する問題です。
絶縁油は必ず劣化するので,定期的に絶縁劣化診断を行う必要があります。電気主任技術者には様々な試験結果をもとに総合的に判断する能力が求められます。

1.絶縁油の絶縁劣化診断
絶縁油は新油においては絶縁破壊電圧が高いですが,空気中の水分や不純物が溶け込むことにより劣化し抵抗率や絶縁破壊電圧が低下していきます。したがって,以下の例に示すような絶縁劣化診断を定期的に行う必要があります。

①絶縁破壊電圧試験
絶縁油で満たした容器内で球状電極間にギャップを設け,商用周波数の試験電圧を一定の割合で上昇させその絶縁破壊電圧を測定する試験です。YouTubeの動画でもアップされていますので,見てみるとイメージが沸くかと思います。

②全酸価試験
絶縁油\( \ 1 \ \mathrm {g} \ \)中に含まれる全酸性成分を中和するのに要するアルカリ成分の量で酸化を測定します。
具体的には,トルエンとエタノールを混合した溶剤に入れよく溶解した後,アルカリブルー\( \ \mathrm {6B} \ \)を指示薬として水酸化カリウム溶液の標準エタノール溶液で滴定し,色が青から紫がかった赤に変化したときの水酸化カリウム溶液の分量により酸価度を測定します。

③油中ガス分析
変圧器の絶縁油を採取し溶解している可燃性ガスをクロマトグラフによって検出し,ガスの種類・発生量や増加量,ガスの成分比を基準値と比較することにより,変圧器内部の異常の有無を判定する方法です。
変圧器では,部分放電や局部過熱のような発熱を伴い絶縁油や絶縁紙が熱分解することでガスが発生します。
一酸化炭素,二酸化炭素,メタン,水素等は主に経年劣化で発生し,異常時にはアセチレンが発生します。

④部分放電測定
絶縁油が劣化すると部分放電が発生するため,この微小パルス又は超音波を検出することで部分放電を検出し劣化を診断します。

【解答】

解答:(4)
(ア)
 ワンポイント解説「1.絶縁油の絶縁劣化診断」の通り,絶縁油の保守,点検のため行う試験には,酸価度試験があります。

(イ)
 ワンポイント解説「1.絶縁油の絶縁劣化診断」の通り,絶縁油は劣化して酸価が上がり,抵抗率や耐圧が下がるなどの諸性能が低下していきます。

(ウ)
 ワンポイント解説「1.絶縁油の絶縁劣化診断」の通り,変圧器油の酸化反応は変圧器の運転による湿度の上昇によって特に促進されます。