《法規》〈電気設備技術基準〉[H24:問9]低圧屋内配線の電線及び遮断器に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

次の文章は,「電気設備技術基準の解釈」に基づく,低圧屋内幹線に使用する電線の許容電流とその幹線を保護する遮断器の定格電流との組み合わせに関する工事例である。ここで,当該低圧幹線に接続する負荷のうち,電動機又はこれに類する起動電流が大きい電気機械器具を「電動機等」という。

a.電動機等の定格電流の合計が\( \ 40 \ \mathrm {[A]} \ \),他の電気使用機械器具の定格電流の合計が\( \ 30 \ \mathrm {[A]} \ \)のとき,許容電流\( \ \fbox {  (ア)  } \ \mathrm {[A]} \ \)以上の電線と定格電流が\( \ \fbox {  (イ)  } \ \mathrm {[A]} \ \)以下の過電流遮断器とを組み合わせて使用した。

b.電動機等の定格電流の合計が\( \ 20 \ \mathrm {[A]} \ \),他の電気使用機械器具の定格電流の合計が\( \ 50 \ \mathrm {[A]} \ \)のとき,許容電流\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \mathrm {[A]} \ \)以上の電線と定格電流が\( \ 100 \ \mathrm {[A]} \ \)以下の過電流遮断器とを組み合わせて使用した。

c.電動機等の定格電流の合計が\( \ 60 \ \mathrm {[A]} \ \),他の電気使用機械器具の定格電流の合計が\( \ 0 \ \mathrm {[A]} \ \)のとき,許容電流\( \ 66 \ \mathrm {[A]} \ \)以上の電線と定格電流が\( \ \fbox {  (エ)  } \ \mathrm {[A]} \ \)以下の過電流遮断器とを組み合わせて使用した。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

\[
\begin{array}{ccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) \\
\hline
(1) &  85  &  150  &  75  &  200  \\
\hline
(2) &  85  &  160  &  70  &  165  \\
\hline
(3) &  80  &  160  &  75  &  165  \\
\hline
(4) &  80  &  150  &  70  &  200  \\
\hline
(5) &  80  &  150  &  70  &  165  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

電気設備技術基準の解釈第148条からの出題です。数値を丸暗記することはかなり厳しいとは思いますが,演習を繰り返すことにより徐々に身についていく内容です。問題文の数値を入れ替える等してご自身で内容を理解するようにして下さい。

1.低圧幹線における電線の許容電流
電動機等の定格電流の合計を\( \ I_{1} \ \),他の電気使用機械器具の定格電流の合計を\( \ I_{2} \ \)とすると,低圧幹線の許容電流は下表のように整理されます。
\[
\begin{array}{|c|c|}
\hline
& 電線の許容電流 \\
\hline
I_{1}≦I_{2} & I_{1}+I_{2} \\
\hline
I_{1}>I_{2} かつ I_{1}≦50\mathrm {A} & 1.25I_{1}+I_{2} \\
\hline
I_{1}>I_{2} かつ I_{1}>50\mathrm {A} & 1.1I_{1}+I_{2} \\
\hline
\end{array}
\]

2.低圧幹線における過電流遮断器の定格電流
低圧幹線の許容電流を\( \ I_{\mathrm {c}} \ \),電動機等の定格電流の合計を\( \ I_{1} \ \),他の電気使用機械器具の定格電流の合計\( \ I_{2} \ \)とすると,低圧幹線における過電流遮断器の定格電流は下表のように整理されます。

\[
\begin{array}{|c|c|}
\hline
& 過電流遮断器の定格電流 \\
\hline
電動機等なし & I_{\mathrm {c}} \\
\hline
電動機等あり & \displaystyle {3I_{1}+I_{2}又は2.5I_{\mathrm {c}}}\atop \displaystyle {の小さい方} \\
\hline
\end{array}
\]

【解答】

解答:(5)
(ア)
ワンポイント解説「1.低圧幹線における電線の許容電流」の通り数値を当てはめると,電動機等の定格電流の合計\( \ I_{1}=40 \ \mathrm {[A]} \ \),他の電気使用機械器具の定格電流の合計\( \ I_{2}=30 \ \mathrm {[A]} \ \)であるから,\( \ I_{1}>I_{2} かつ I_{1}≦50\mathrm {A} \ \)なので,許容電流\( \ I_{\mathrm {c}} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {c}} &=& 1.25I_{1}+I_{2} \\[ 5pt ] &=& 1.25\times 40+30 \\[ 5pt ] &=& 80 \ \mathrm {[A]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(イ)
ワンポイント解説「2.低圧幹線における過電流遮断器の定格電流」の通り数値を当てはめると,電動機等の定格電流の合計\( \ I_{1}=40 \ \mathrm {[A]} \ \),他の電気使用機械器具の定格電流の合計\( \ I_{2}=30 \ \mathrm {[A]} \ \),電線の許容電流\( \ I_{\mathrm {c}}=80 \ \mathrm {[A]} \ \)であるから,過電流遮断器の定格電流\( \ I_{\mathrm {n}} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {n}} &=& 3I_{1}+I_{2} \\[ 5pt ] &=& 3\times 40+30 \\[ 5pt ] &=& 150 \ \mathrm {[A]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] または,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {n}} &=& 2.5I_{\mathrm {c}} \\[ 5pt ] &=& 2.5\times 80 \\[ 5pt ] &=& 200 \ \mathrm {[A]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となるので,小さい方の値である\( \ 150 \ \mathrm {A} \ \)が求められる。

(ウ)
ワンポイント解説「1.低圧幹線における電線の許容電流」の通り数値を当てはめると,電動機等の定格電流の合計\( \ I_{1}=20 \ \mathrm {[A]} \ \),他の電気使用機械器具の定格電流の合計\( \ I_{2}=50 \ \mathrm {[A]} \ \)であるから,\( \ I_{1}≦I_{2} \ \)なので,許容電流\( \ I_{\mathrm {c}} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {c}} &=& I_{1}+I_{2} \\[ 5pt ] &=& 20+50 \\[ 5pt ] &=& 70 \ \mathrm {[A]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(エ)
ワンポイント解説「1.低圧幹線における電線の許容電流」の通り数値を当てはめると,電動機等の定格電流の合計\( \ I_{1}=60 \ \mathrm {[A]} \ \),他の電気使用機械器具の定格電流の合計\( \ I_{2}=0 \ \mathrm {[A]} \ \)であるから,\( \ I_{1}>I_{2} \ \)かつ\( \ I_{1}>50\mathrm {A} \ \)なので,許容電流\( \ I_{\mathrm {c}} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {c}} &=& 1.1I_{1}+I_{2} \\[ 5pt ] &=& 1.1\times 60+0 \\[ 5pt ] &=& 66 \ \mathrm {[A]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,ワンポイント解説「2.低圧幹線における過電流遮断器の定格電流」の通り数値を当てはめると,過電流遮断器の定格電流\( \ I_{\mathrm {n}} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {n}} &=& 3I_{1}+I_{2} \\[ 5pt ] &=& 3\times 60+0 \\[ 5pt ] &=& 180 \ \mathrm {[A]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] または,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {n}} &=& 2.5I_{\mathrm {c}} \\[ 5pt ] &=& 2.5\times 66 \\[ 5pt ] &=& 165 \ \mathrm {[A]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となるので,小さい方の値である\( \ 165 \ \mathrm {A} \ \)が求められる。

<電気設備技術基準の解釈第148条(抜粋)>
低圧幹線は、次の各号によること。
一 損傷を受けるおそれがない場所に施設すること。
二 電線の許容電流は、低圧幹線の各部分ごとに、その部分を通じて供給される(ウ)電気使用機械器具の定格電流の合計値以上であること。ただし、当該低圧幹線に接続する負荷のうち、電動機又はこれに類する起動電流が大きい電気機械器具(以下この条において「電動機等」という。)の定格電流の合計が、他の電気使用機械器具の定格電流の合計より大きい場合は、他の電気使用機械器具の定格電流の合計に次の値を加えた値以上であること。
イ (ア)電動機等の定格電流の合計が50A以下の場合は、その定格電流の合計の1.25倍
ロ (エ)電動機等の定格電流の合計が50Aを超える場合は、その定格電流の合計の1.1倍
三 前号の規定における電流値は、需要率、力率等が明らかな場合には、これらによって適当に修正した値とすることができる。
四 低圧幹線の電源側電路には、当該低圧幹線を保護する過電流遮断器を施設すること。ただし、次のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
イ 低圧幹線の許容電流が、当該低圧幹線の電源側に接続する他の低圧幹線を保護する過電流遮断器の定格電流の55%以上である場合
ロ 過電流遮断器に直接接続する低圧幹線又はイに掲げる低圧幹線に接続する長さ8m以下の低圧幹線であって、当該低圧幹線の許容電流が、当該低圧幹線の電源側に接続する他の低圧幹線を保護する過電流遮断器の定格電流の35%以上である場合
ハ 過電流遮断器に直接接続する低圧幹線又はイ若しくはロに掲げる低圧幹線に接続する長さ3m以下の低圧幹線であって、当該低圧幹線の負荷側に他の低圧幹線を接続しない場合
ニ 低圧幹線に電気を供給する電源が太陽電池のみであって、当該低圧幹線の許容電流が、当該低圧幹線を通過する最大短絡電流以上である場合
五 前号の規定における「当該低圧幹線を保護する過電流遮断器」は、その定格電流が、当該低圧幹線の許容電流以下のものであること。ただし、低圧幹線に電動機等が接続される場合の定格電流は、次のいずれかによることができる。
イ (イ)電動機等の定格電流の合計の3倍に、他の電気使用機械器具の定格電流の合計を加えた値以下であること。
ロ (エ)イの規定による値が当該低圧幹線の許容電流を2.5倍した値を超える場合は、その許容電流を2.5倍した値以下であること。
ハ 当該低圧幹線の許容電流が100Aを超える場合であって、イ又はロの規定による値が過電流遮断器の標準定格に該当しないときは、イ又はロの規定による値の直近上位の標準定格であること。
六 第四号の規定により施設する過電流遮断器は、各極(多線式電路の中性極を除く。)に施設すること。ただし、対地電圧が150V以下の低圧屋内電路の接地側電線以外の電線に施設した過電流遮断器が動作した場合において、各極が同時に遮断されるときは、当該電路の接地側電線に過電流遮断器を施設しないことができる。