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【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
遮断器は送配電線や変電所母線,電気機器などの\( \ \fbox { (ア) } \ \)故障時にその回路を遮断するための開閉器であるが,平常時は回路の開閉操作にも用いられる。
電路を開閉する装置として他に\( \ \fbox { (イ) } \ \)があり,単に充電された電路を開閉するためのみに用いられる。
遮断器にはいくつか種類があるが,\( \ 22 \ \mathrm {[kV]} \ \)以下のものでは\( \ \fbox { (ウ) } \ \)及び保守性から従来の\( \ \fbox { (エ) } \ \)遮断器に代わって,真空遮断器が用いられている。また,\( \ 22 \ \mathrm {[kV]} \ \)を超えるものには優れた遮断性をもつ\( \ \mathrm {SF}_{6} \ \)(六ふっ化硫黄)ガスを使用したガス遮断器が多く用いられている。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる語句として,正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
\[
\begin{array}{ccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) \\
\hline
(1) & 断 線 & 断路器 & 防 音 & 油 \\
\hline
(2) & 短 絡 & 負荷開閉器 & 防 火 & 油 \\
\hline
(3) & 断 線 & 断路器 & 防 火 & 空 気 \\
\hline
(4) & 短 絡 & 断路器 & 防 火 & 油 \\
\hline
(5) & 断 線 & 負荷開閉器 & 防 音 & 空 気 \\
\hline
\end{array}
\]
【ワンポイント解説】
遮断器の用途や種類に関する問題です。
近年では真空遮断器やガス遮断器がメインとなっていますが,空気遮断器は動作時の騒音の問題があること,油遮断器は火災のおそれがあること,磁気遮断器は大型となり保守性や小型化の面で近年では真空遮断器が選択されやすい,程度の特徴は覚えておきましょう。
1.遮断器,開閉器,断路器
断路器,開閉器,遮断器はいずれも開閉設備ですが,用途が異なるためそれぞれの遮断できる電流値が異なります。
電験では細かな構造等は出題されませんが,その違いを理解しておくようにしましょう。
①遮断器
電路の開閉を行う装置の中で,最も大きな電流を開閉できる装置です。
通常運転時の電流のみでなく,短絡・地絡事故時に発生する故障電流を遮断して,事故箇所を切り離す役割があります。
電路開閉時にアークが発生するため,アークを消弧する機能を有し,その方法により,ガス遮断器,真空遮断器,空気遮断器,油遮断器,磁気遮断器等があります。
現在は\( \ \mathrm {SF_{6}} \ \)ガスをアークに吹き付け消弧するガス遮断器と真空バルブ内でアークを拡散させて消弧する真空遮断器が主流であり,電験でも出題が多いのはガス遮断器と真空遮断器に関する内容です。
②開閉器
通常運転時の負荷電流は遮断することは可能ですが,事故時の故障電流は遮断することができない開閉装置です。
発変電所等の特別高圧ではなく,配電線路での開閉に使用されることが多い設備です。
気中開閉器\( \ \left( \mathrm {PAS} \right) \ \)や真空開閉器\( \ \left( \mathrm {VCS} \right) \ \),ガス開閉器\( \ \left( \mathrm {PGS} \right) \ \)等があります
電験では配電の内容である,高圧カットアウトや区分開閉器に関する問題が出題されることが多いです。
③断路器
通電時には開閉できず,電流が流れていないときに開閉可能な開閉装置です。ただし,変圧器の励磁電流等の小さな電流は開閉することが可能です。
電路の保守作業を行う際等に作業箇所を切り離すために開閉することが多いです。
遮断器とセットで使用されることが多く,送電停止時には遮断器を開放してから断路器を開放し,送電開始時には断路器を投入してから遮断器を投入します。
2.遮断器の種類
遮断器はアークの消弧媒体により,以下の通りに分類できます。このうち,現在主として扱われているのは真空遮断器(\( \ 154 \ \mathrm {kV} \ \)程度まで)とガス遮断器になり,電験では主にこの二種類から出題されます。(古い設備では磁気遮断器や空気遮断器が使われている所もあります。)
①油遮断器\( \ \left( \mathrm {OCB}\right) \ \)
②磁気遮断器\( \ \left( \mathrm {MBB}\right) \ \)
②空気遮断器\( \ \left( \mathrm {ABB}\right) \ \)
④真空遮断器\( \ \left( \mathrm {VCB}\right) \ \)
⑤ガス遮断器\( \ \left( \mathrm {GCB}\right) \ \)
3.真空遮断器の特徴
真空の優れた絶縁耐力を利用して消弧する遮断器で,以下のような特徴があります。
・高真空に保った真空バルブ内で電極を開閉するため,高い絶縁耐力と拡散作用で遮断性能が高い。
・構造が簡単であるため,小形で軽量となり,メンテナンスも容易である。
・電極の消耗が少ないため,寿命が長い。
・密閉構造であり,遮断時の騒音が小さい。(空気遮断器は動作時爆発音のような騒音が発生します。)
・\( \ 22 \ \mathrm {kV} \ \)以下の系統で主流となっている。(さらに上の電圧階級でも採用はあります。)
出典:一般財団法人 中部電気保安協会 HP
https://www.ces.or.jp/security/technology/deterioration.html
4.ガス遮断器の特徴
消弧能力が高い\( \ \mathrm {SF_{6}} \ \)ガスを用いた遮断器で,遮断時に発生するアークを\( \ \mathrm {SF_{6}} \ \)ガスで吹き付け消弧します。特徴は以下の通りです。
・アーク消弧能力が高く,\( \ 187 \ \mathrm {kV} \ \)以上の超高圧系統でも使用可能
・\( \ \mathrm {SF_{6}} \ \)ガスが化学的に安定で不活性である
・絶縁耐力が高い
・絶縁耐力が金属粉等に異物により大きく低下する
・アークで\( \ \mathrm {HF} \ \)等の分解生成物ができるので,吸着剤での除去が必要
・低温で\( \ \mathrm {SF_{6}} \ \)ガスが液化するのでヒータ等の対策が必要
・温室効果ガスに指定されているので,構造を密閉式にし,圧力の管理を行う必要がある。
出典:プラズマ・核融合学会予備原稿 大電流遮断用ガス遮断器のCAE技術としての利用を目指した電磁流体シミュレーション技術の構築
http://www.jspf.or.jp/jspf_annual2018/JSPF35/pdf/3Bp06.pdf
【解答】
解答:(4)
(ア)
ワンポイント解説「1.遮断器,開閉器,断路器」の通り,遮断器は短絡故障時にその回路を遮断するための開閉器です。
(イ)
ワンポイント解説「1.遮断器,開閉器,断路器」の通り,単に充電された電路を開閉するためのみに用いられるのは断路器となります。
(ウ)
こちらは(エ)の空欄と関連して選択し,「(ウ)防火-(エ)油」もしくは「(ウ)防音-(エ)空気」がセットとなりますが,空気遮断器はどちらかというと保守は容易となるため,防火が適切となります。
(エ)
ワンポイント解説本文で解説しているように,防火及び保守性の観点でデメリットとなっているのは油遮断器となります。