《機械》〈回転機〉[H22:問6]電気機器の磁束を利用する観点からの分類に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

電気機器は磁束を利用する観点から,次のように分類して考えることができる。

a. 交流で励磁する\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)と\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)は,負荷電流を流す巻線が磁束を発生する巻線を兼用するなどの共通点があるので,基本的に同じ形の等価回路を用いて特性計算を行う。

b. 直流で励磁する\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)と\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)は,負荷電流を流す電機子巻線と,磁束を発生する界磁巻線を分けて設ける。

c. \( \ \fbox {  (エ)  } \ \)を自己始動電動機として用いる場合,その磁極表面にかご形導体を設け,\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)と同様の始動トルクを発生させる。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる語句として,正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
\[
\begin{array}{ccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) \\
\hline
(1) &  誘導機  &  変圧器  &  直流機  &  同期機  \\
\hline
(2) &  変圧器  &  誘導機  &  同期機  &  直流機  \\
\hline
(3) &  誘導機  &  変圧器  &  同期機  &  直流機  \\
\hline
(4) &  変圧器  &  誘導機  &  直流機  &  同期機  \\
\hline
(5) &  変圧器  &  同期機  &  直流機  &  誘導機  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

四機(直流機,誘導機,同期機,変圧器)の分類に関する問題です。
おそらく多くの受験生はaとbの内容による分類はできると思いますが,cの分類を迷ってしまった方が多かったのではないかと予想されます。
自己始動電動機やかご形導体というキーワードから正答を導ければと思います。

1.三相誘導電動機の\( \ \mathrm {L} \ \)形等価回路
誘導電動機の\( \ \mathrm {L} \ \)形等価回路は図1のようになります。図1において,\( \ {\dot V}_{1} \ \mathrm {[V]} \ \)は一次側端子電圧,\( \ {\dot I}_{1} \ \mathrm {[A]} \ \)は一次電流,\( \ {\dot I}_{2}^{\prime } \ \mathrm {[A]} \ \)は二次電流の一次換算,\( \ {\dot I}_{0} \ \mathrm {[A]} \ \)は励磁電流,\( \ r_{1} \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)は一次巻線抵抗,\( \ r_{2}^{\prime } \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)は二次巻線抵抗の一次換算,\( \ x_{1} \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)は一次漏れリアクタンス,\( \ x_{2}^{\prime } \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)は二次漏れリアクタンスの一次換算,\( \ s \ \)は滑りとなります。

2.変圧器の等価回路(一次換算)
変圧器の一次換算等価回路を図2に示します。ただし,\( \ {\dot V}_{1} \ \)は一次側端子電圧,\( \ {\dot I}_{1} \ \)は一次電流,\( \ {\dot I}_{2} \ \)は二次電流,\( \ {\dot I}_{0} \ \)は励磁電流,\( \ r_{1} \ \)は一次巻線抵抗,\( \ r_{2} \ \)は二次巻線抵抗,\( \ x_{1} \ \)は一次漏れリアクタンス,\( \ x_{2} \ \)は二次漏れリアクタンス,\( \ a \ \)は変圧比(巻数比)となります。

3.同期電動機の始動法
同期電動機停止時は,回転磁界によるトルクが\( \ \displaystyle \frac {1}{2} \ \)回転ごとに交互に入れ替わるので,平均トルクが零となります。したがってこのままでは起動しませんので,以下に示すような始動法により始動トルクを与え始動します。

①自己始動法
回転子の磁極面に施した制動巻線を利用して始動する方式です。制動巻線に発生するトルクにより始動させ,制動巻線はかご形誘導電動機の回転子と同じ原理で始動させます。

②始動電動機法
三相同期電動機に直結した誘導電動機や直流電動機を用いて同期速度付近まで加速した後,界磁電流を流して励磁し同期する方法です。始動用の誘導電動機は,同期電動機よりも磁極数を\( \ 2 \ \)極少ないものを選定して,同期速度以上に加速できるようにします。

③サイリスタ始動法
同期電動機をあらかじめ励磁しておき,サイリスタ変換装置により電動機の周波数を変化させることにより始動する方法です。

④同期始動法
同期電動機と同期発電機を停止状態で接続し,同期発電機を始動して同期速度まで回転数を上昇させる方式です。ほかの同期発電機が使用できる場合に限り適用されます。

⑤低周波始動法
周波数を可変させることができる電源を使用して始動する方式です。低周波のうちに同期化した後,励磁を与えて加速していきます。

【解答】

解答:(4)
(ア)
ワンポイント解説「1.三相誘導電動機の\( \ \mathrm {L} \ \)形等価回路」及び「2.変圧器の等価回路(一次換算)」の通り,負荷電流を流す巻線が磁束を発生する巻線を兼用するなどの共通点があり,基本的に同じ形の等価回路であることから,誘導機もしくは変圧器であることがわかります。またc.の文章において「\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)と同様の始動トルク」となっていることから,回転機でない変圧器が正答となります。

(イ)
(ア)と同様,誘導機もしくは変圧器であることがわかり,cの文章においてかご形誘導電動機の内容を説明していることから誘導機が正答となります。

(ウ)
直流機及び同期機は直流でともに直流で励磁しますが,cの文章において同期機の自己始動法を説明していることから直流機が正答となります。

(エ)
直流機及び同期機は直流でともに直流で励磁しますが,ワンポイント解説「3.同期電動機の始動法」の通り,cの文章は自己始動法の説明をしているので同期機が正答となります。