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【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
次の文章は,ヒートポンプに関する記述である。
ヒートポンプはエアコンや冷蔵庫,給湯器などに広く使われている。図はエアコン(冷房時)の動作概念図である。\( \ \fbox { (ア) } \ \)温の冷媒は圧縮機に吸引され,室内機にある熱交換器において,室内の熱を吸収しながら\( \ \fbox { (イ) } \ \)する。次に,冷媒は圧縮機で圧縮されて\( \ \fbox { (ウ) } \ \)温になり,室外機にある熱交換器において,外気へ熱を放出しながら\( \ \fbox { (エ) } \ \)する。その後,膨張弁を通って\( \ \fbox { (ア) } \ \)温となり,再び室内機に送られる。
暖房時には,室外機の四方弁が切り替わって,冷媒の流れる方向が逆になり,室外機で吸収された外気の熱が室内機から室内に放出される。ヒートポンプの効率(成績係数)は,熱交換器で吸収した熱量を\( \ Q \ \mathrm {[J]} \ \),ヒートポンプの消費電力を\( \ W \ \mathrm {[J]} \ \)とし,熱損失などを無視すると,冷房時は\( \ \displaystyle \frac {Q}{W} \ \),暖房時は\( \ \displaystyle 1+\frac {Q}{W} \ \)で与えられる。これらの値は外気温度によって変化\( \ \fbox { (オ) } \ \)。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[
\begin{array}{cccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) & (オ) \\
\hline
(1) & 低 & 気 化 & 高 & 液 化 & しない \\
\hline
(2) & 高 & 液 化 & 低 & 気 化 & しない \\
\hline
(3) & 低 & 液 化 & 高 & 気 化 & す る \\
\hline
(4) & 高 & 気 化 & 低 & 液 化 & す る \\
\hline
(5) & 低 & 気 化 & 高 & 液 化 & す る \\
\hline
\end{array}
\]
【ワンポイント解説】
ヒートポンプに関する問題です。
ヒートポンプのメカニズムや成績係数の問題は電熱の分野では比較的出題されやすい内容なので,計算問題も含め確実に理解しておくようにしましょう。
1.ヒートポンプの構成機器
ヒートポンプのフローを図1に示します。冷房時が青線,暖房時は赤線の流れとなります。冷房時を例に示します。
蒸発器:膨張弁からの低温低圧の液を蒸発させ気化させます。
四方弁:暖房冷房時に圧縮機に流れる媒体の向きを同じにするために向きを変えるものです。
圧縮機:蒸発器から出た低圧の蒸気を高圧蒸気にします。
凝縮器:圧縮機で高温高圧となった蒸気を凝縮し,液化させます。
膨張弁:凝縮器から出た液を膨張し,低温低圧の液にします。
※図1において,暖房時には熱交換器である蒸発器と凝縮器の役割が逆となります。
2.ヒートポンプの成績係数(\( \ \mathrm {COP} \ \))
図1において,蒸発器の吸熱量\( \ Q_{\mathrm {L}} \ \)及び圧縮機にかける仕事量\( \ W \ \)と凝縮器の放熱量\( \ Q_{\mathrm {H}} \ \)は等しいので,
\[
\begin{eqnarray}
Q_{\mathrm {H}}&=&Q_{\mathrm {L}}+W \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
という関係があり,冷房時と暖房時の成績係数\( \ \mathrm {{COP}_{L}} \ \),\( \ \mathrm {{COP}_{H}} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
\mathrm {{COP}_{L}}&=&\frac {Q_{\mathrm {L}}}{W} \\[ 5pt ]
\mathrm {{COP}_{H}}&=&\frac {Q_{\mathrm {H}}}{W} \\[ 5pt ]
&=&\frac {Q_{\mathrm {L}}+W}{W} \\[ 5pt ]
&=&1+\frac {Q_{\mathrm {L}}}{W} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となります。
【解答】
解答:(5)
(ア)
(イ)
ワンポイント解説「1.ヒートポンプの構成機器」の通り,冷房時は室内を冷やすために蒸発器にて熱交換して,冷媒は熱を吸収し温度が上昇し気化します。したがって,(ア)が低温,(イ)が気化となります。
(ウ)
(エ)
ワンポイント解説「1.ヒートポンプの構成機器」の通り,室外機においては高温となった冷媒を冷やして液化するために,外気と熱交換します。したがって,(ウ)が高温,(エ)が液化となります。
(オ)
外気温が高い場合,室外機における熱交換が悪くなり,冷媒の冷却効率が悪くなるため,ヒートポンプの効率も低下します。したがって,成績係数は外気温度によって変化します。