《機械》〈回転機〉[H26:問9]電動機の速度制御に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,電動機の速度制御に関する記述である。

他励直流電動機の速度制御には,界磁回路の直流電流を調整する方法のほかに,電機子回路の\(\fbox {  (ア)  }\)を調整する方法がある。これは,磁束一定の条件で,誘導起電力が\(\fbox {  (イ)  }\)に比例している特性を利用したものである。この方法によると,速度が一定となる定常状態において,負荷トルクの変動によって電機子抵抗による電圧降下分だけの速度変動を生じる。

誘導電動機の速度制御には,電源が商用電源である場合は滑りを広く利用する方法がある。その方法は\(\fbox {  (ウ)  }\)や,巻線形誘導電動機の二次抵抗による比例推移を利用する制御である。しかし,滑りを利用する方法は,速度が定格速度に比べて低くなるほど二次効率が\(\fbox {  (エ)  }\)する。これを改善する巻線形誘導電動機の二次励磁という制御は,二次回路に電力変換器を接続して二次抵抗損に相当する電力を交流電源\(\fbox {  (オ)  }\)する方法である。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[
\begin{array}{cccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) & (オ) \\
\hline
(1) & 直流電圧 & 速 度 & 一次電圧制御 & 低 下 & に返還 \\
\hline
(2) & 直流電流 & 速 度 & 極数変換 & 増 加 & から供給 \\
\hline
(3) & 直流電圧 & 電機子電流 & 極数変換 & 低 下 & に返還 \\
\hline
(4) & 直流電圧 & 電機子電流 & 一次電圧制御 & 増 加 & に返還 \\
\hline
(5) & 直流電流 & 電機子電流 & 一次電圧制御 & 低 下 & から供給 \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

電動機の特性に関する問題です。選択肢の数が多く,3つが分かれば答えが導き出せるので比較的正答率は高くなると思います。等価回路を描ければ答えがある程度導きだせると思います。

1.分巻電動機の等価回路
分巻電動機の等価回路を図1に示します。ここで\(V\)は端子電圧,\(E\)は逆起電力,\(I_{\mathrm {f}}\)は界磁電流,\(I_{\mathrm {a}}\)は電機子電流,\(R_{\mathrm {f}}\)は界磁抵抗,\(R_{\mathrm {a}}\)は電機子抵抗となります。

2.誘導電動機の等価回路
誘導電動機の等価回路は図2のようになります。ここで\({\dot V}_{1}\)は一次電圧,\({\dot I}_{1}\)は一次電流,\({\dot I}_{0}\)は励磁電流,\({\dot I}_{2}\)は二次電流,\(r_{1}\)は一次巻線抵抗,\(r_{2}^{\prime }\)は二次抵抗の一次換算値,\(x_{1}\)は一次漏れリアクタンス,\(x_{2}^{\prime }\)は二次漏れリアクタンスの一次換算値,\(s\)は滑りとなります。

【解答】

解答:(1)
(ア)
誘導起電力\(E\)と磁束\(\phi \),回転数\(N\)の間には,\(E=k\phi N\)の関係があるので,図1において電機子電圧を調整すれば,誘導起電力の調整ができ,回転数の調整が可能となります。

(イ)
\(E=k\phi N\)の関係があるので,誘導起電力は速度に比例しています。

(ウ)
誘導起電力の回転速度\(N\)は,周波数\(f\),極数\(p\),滑り\(s\)とすると,
\[
N=\frac {120f}{p} (1-s)
\] の関係があり,一次電圧制御により\(1-s\)を調整することができます。

(エ)
滑りを利用する方法は,二次銅損が滑りに比例するので,速度が低くなるほど効率が低下します。

(オ)
二次励磁制御は,電力変換器を接続して二次抵抗損を電力に返還する方法です。