《機械》〈パワーエレクトロニクス〉[H30:問16]降圧チョッパに関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

図1に示す降圧チョッパの回路は,電圧\( \ E \ \)の直流電源,スイッチングする半導体バルブデバイス\( \ \mathrm {S} \ \),ダイオード\( \ \mathrm {D} \ \),リアクトル\( \ \mathrm {L} \ \),及び抵抗\( \ \mathrm {R} \ \)の負荷から構成されている。また,図2には,図1の回路に示すダイオード\( \ \mathrm {D} \ \)の電圧\( \ v_{\mathrm {D}} \ \)と負荷の電流\( \ i_{\mathrm {R}} \ \)の波形を示す。次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a) 降圧チョッパの回路動作に関し,図3~図5に,実線で示した回路に流れる電流のループと方向を示した三つの電流経路を考える。図2の時刻\( \ t_{1} \ \)及び時刻\( \ t_{2} \ \)において,それぞれどの電流経路となるか。正しい組合せを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[
\begin{array}{ccc}
& 時刻 \ t_{1} & 時刻 \ t_{2} \\
\hline
(1) &  電流経路\left( \mathrm {A} \right)  &  電流経路\left( \mathrm {B} \right)  \\
\hline
(2) &  電流経路\left( \mathrm {A} \right)  &  電流経路\left( \mathrm {C} \right)  \\
\hline
(3) &  電流経路\left( \mathrm {B} \right)  &  電流経路\left( \mathrm {A} \right)  \\
\hline
(4) &  電流経路\left( \mathrm {B} \right)  &  電流経路\left( \mathrm {C} \right)  \\
\hline
(5) &  電流経路\left( \mathrm {C} \right)  &  電流経路\left( \mathrm {B} \right)  \\
\hline
\end{array}
\]

(b) 電圧\( \ E \ \)が\( \ 100 \ \mathrm {V} \ \),降圧チョッパの通流率が\( \ 50 \ % \ \),負荷抵抗\( \ R \ \)が\( \ 2 \ \Omega \ \)とする。デバイス\( \ \mathrm {S} \ \)は周期\( \ T \ \)の高周波でスイッチングし,リアクトル\( \ \mathrm {L} \ \)の平滑作用により,図2に示す電流\( \ i_{\mathrm {R}} \ \)のリプル成分は十分小さいとする。電流\( \ i_{\mathrm {R}} \ \)の平均値\( \ I_{\mathrm {R}} \ \mathrm {[A]} \ \)として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 (1) \( \ 17.7 \ \)  (2) \( \ 25.0 \ \)  (3) \( \ 35.4 \ \)  (4) \( \ 50.1 \ \)  (5) \( \ 70.7 \ \)



【ワンポイント解説】

パワーエレクトロニクスの問題は公式の丸暗記では応用が利かないので,回路のメカニズムを理解することが重要となります。本問(a)ではメカニズムを理解することができ,(b)ではその結果どうなるかを理解できるので,学習教材としては非常に良い問題と言えます。

1.降圧チョッパ
図6-1及び図6-2は降圧チョッパの例を示します。
スイッチ\( \ \mathrm {S} \ \)がオンになると,図6-1のように電源からの電流はスイッチ\( \ \mathrm {S} \ \)を通り,リアクトル\( \ L \ \)側に電流が流れますが,ダイオード\( \ \mathrm {D} \ \)は逆向きなので電流が流れません。
スイッチ\( \ \mathrm {S} \ \)がオフになると,図6-2のように電源から電流は流れず,リアクトル\( \ L \ \)に蓄えられているエネルギーから出力側と還流ダイオード\( \ \mathrm {D} \ \)に電流が流れます。
したがって降圧チョッパの出力電圧の平均値\( \ V_{\mathrm {o}} \ \)は,スイッチのオン時間を\( \ T_{\mathrm {on}} \ \),オフ時間を\( \ T_{\mathrm {off}} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
V_{\mathrm {o}}&=&\frac {T_{\mathrm {on}}}{T_{\mathrm {on}}+T_{\mathrm {off}}}E \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] で求められます。このとき,\( \ E \ \)の係数
\[
\begin{eqnarray}
\gamma &=&\frac {T_{\mathrm {ON}}}{T_{\mathrm {ON}}+T_{\mathrm {OFF}}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] を通流率といいます。


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  降圧チョッパ回路の理論

【解答】

(a)解答:(1)
ワンポイント解説「1.降圧チョッパ」の通り,スイッチ\( \ \mathrm {S} \ \)が\( \ \mathrm {ON} \ \)の時,電流は電源\( \ E \ \)から流れ図3に示すような電流経路\( \ \mathrm {(A)} \ \)となり,スイッチ\( \ \mathrm {S} \ \)が\( \ \mathrm {OFF} \ \)の時,リアクトル\( \ \mathrm {L} \ \)に蓄えられたエネルギーが放出され,図4に示すような電流経路\( \ \mathrm {(B)} \ \)となります。時刻\( \ t_{1} \ \)では\( \ v_{\mathrm {D}}=E \ \mathrm {[V]} \ \)なのでスイッチ\( \ \mathrm {S} \ \)は\( \ \mathrm {ON} \ \),時刻\( \ t_{2} \ \)では\( \ v_{\mathrm {D}}=0 \ \mathrm {[V]} \ \)なのでスイッチ\( \ \mathrm {S} \ \)は\( \ \mathrm {OFF} \ \)となります。

よって,時刻\( \ t_{1} \ \)では電流経路\( \ \mathrm {(A)} \ \),時刻\( \ t_{2} \ \)では電流経路\( \ \mathrm {(B)} \ \)と求められます。

(b)解答:(2)
電源電圧\( \ E=100 \ \mathrm {[V]} \ \),通流率\( \ \gamma =0.5 \ \)であるから,降圧チョッパの平均出力電圧\( \ V_{\mathrm {o}} \ \mathrm {[V]} \ \)は,ワンポイント解説「1.降圧チョッパ」の通り,
\[
\begin{eqnarray}
V_{\mathrm {o}} &=&\frac {T_{\mathrm {ON}}}{T_{\mathrm {ON}}+T_{\mathrm {OFF}}}E \\[ 5pt ] &=&\gamma E \\[ 5pt ] &=&0.5\times 100 \\[ 5pt ] &=&50 \ \mathrm {[V]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。したがって,負荷抵抗\( \ R=2 \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)であるので,電流\( \ i_{\mathrm {R}} \ \)の平均値\( \ I_{\mathrm {R}} \ \mathrm {[A]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {R}} &=&\frac {V_{\mathrm {o}}}{R} \\[ 5pt ] &=&\frac {50}{2} \\[ 5pt ] &=&25 \ \mathrm {[A]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。