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【問題】
【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)
図1から図5に示す\( \ 5 \ \)種類の回路は,\( \ R \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)の抵抗と静電容量\( \ C \ \mathrm {[F]} \ \)のコンデンサの個数と組み合わせを異にしたものである。コンデンサの初期電荷を零として,スイッチ\( \ \mathrm {S} \ \)を閉じたときの回路の過渡的な現象を考える。そのとき,これら回路のうちで時定数が最も大きい回路を示す図として,正しいのは次のうちどれか。

【ワンポイント解説】
抵抗とコンデンサの直並列を組み合わせて時定数を比較する問題です。
\( \ RC \ \)回路の時定数の式は覚えておく必要がありますので,公式として覚えておきましょう。合成抵抗や合成静電容量は過渡現象の前の分野で学習する内容なので,分からないという方は他の問題やテキスト等で復習しておいて下さい。
1.過渡現象におけるリアクトルの過渡状態と定常状態
① 過渡状態
リアクトルに流れる電流値を維持しようとする働きをします。したがって,リアクトルに電圧を印加した瞬間はほとんど電流は流れないので,開放として考えます。
② 定常状態
電圧を印加して十分時間が経過した後は,リアクトルの抵抗はほぼ零になります。したがって,短絡として考えます。
2.過渡現象におけるコンデンサの過渡状態と定常状態
① 過渡状態
コンデンサに蓄えられている電荷が零であるので,電流がものすごく流れやすい状態,すなわち短絡として考えます。
② 定常状態
コンデンサに十分に電荷が蓄えられているので,電流をこれ以上蓄えようとしない,すなわち開放として考えます。
3.時定数
過渡現象におけるリアクトルやコンデンサの電圧の導出は微分方程式の計算を伴うため二種以上の範囲となりますが,図1-1や図2-1のような回路が与えられると,図1-1のリアクトル電圧\( \ V_{\mathrm {L}} \ \mathrm {[V]} \ \)及び回路を流れる電流\( \ I_{\mathrm {L}} \ \mathrm {[A]} \ \),図2-1のコンデンサ電圧\( \ V_{\mathrm {C}} \ \mathrm {[V]} \ \)及び回路を流れる電流\( \ I_{\mathrm {C}} \ \mathrm {[A]} \ \)はそれぞれ,
\[
\begin{eqnarray}
V_{\mathrm {L}} &=&E\mathrm {e}^{-\frac {R}{L}t} \\[ 5pt ]
I_{\mathrm {L}} &=&\frac {E}{R}\left( 1-\mathrm {e}^{-\frac {R}{L}t}\right) \\[ 5pt ]
V_{\mathrm {C}} &=&E\left( 1-\mathrm {e}^{-\frac {t}{CR}}\right) \\[ 5pt ]
I_{\mathrm {C}} &=&\frac {E}{R}\mathrm {e}^{-\frac {t}{CR}} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
で与えられ,\( \ \displaystyle t=\frac {L}{R} \ \)及び\( \ t=CR \ \)となる時間を時定数\( \ \tau \ \)と呼びます。

時定数\( \ \tau \ \)が大きくなると図1-2及び図2-2のように経過時間に対し,収束するまでの時間が遅くなります。

【解答】
解答:(4)
(1)
ワンポイント解説「3.時定数」の通り,時定数は\( \ CR \ \)となります。
(2)
\( \ 2 \ \)つのコンデンサの直列合成静電容量は\( \ \displaystyle \frac {C\cdot C}{C+C}=\frac {C}{2} \ \)なので,ワンポイント解説「3.時定数」の通り,時定数は\( \ \displaystyle \frac {CR}{2} \ \)となります。
(3)
\( \ 2 \ \)つの抵抗の並列合成抵抗は\( \ \displaystyle \frac {R\cdot R}{R+R}=\frac {R}{2} \ \)なので,ワンポイント解説「3.時定数」の通り,時定数は\( \ \displaystyle \frac {CR}{2} \ \)となります。
(4)
\( \ 2 \ \)つのコンデンサの並列合成静電容量は\( \ \displaystyle C+C=2C \ \)なので,ワンポイント解説「3.時定数」の通り,時定数は\( \ \displaystyle 2CR \ \)となります。
(5)
\( \ 2 \ \)つの抵抗の並列合成抵抗は\( \ \displaystyle \frac {R\cdot R}{R+R}=\frac {R}{2} \ \),\( \ 2 \ \)つのコンデンサの並列合成静電容量は\( \ \displaystyle C+C=2C \ \)なので,ワンポイント解説「3.時定数」の通り,時定数は\( \ \displaystyle \frac {R}{2}\cdot2C= CR \ \)となります。
以上から,時定数が最も大きいのは(4)となります。