《理論》〈電子理論〉[H26:問12]半導体のpn接合を利用した素子に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

半導体の\(\mathrm {pn}\)接合を利用した素子に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) ダイオードに\(\mathrm {p}\)形が負,\(\mathrm {n}\)形が正となる電圧を加えたとき,\(\mathrm {p}\)形,\(\mathrm {n}\)形それぞれの領域の少数キャリヤに対しては,順電圧と考えられるので,この少数キャリヤが移動することによって,極めてわずかな電流が流れる。

(2) \(\mathrm {pn}\)接合をもつ半導体を用いた太陽電池では,その\(\mathrm {pn}\)接合部に光を照射すると,電子と正孔が発生し,それらが\(\mathrm {pn}\)接合部で分けられ電子が\(\mathrm {n}\)形,正孔が\(\mathrm {p}\)形のそれぞれの電極に集まる。その結果,起電力が生じる。

(3) 発光ダイオードの\(\mathrm {pn}\)接合領域に順電圧を加えると,\(\mathrm {pn}\)接合領域でキャリヤの再結合が起こる。再結合によって,そのエネルギーに相当する波長の光が接合部付近から放出される。

(4) 定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)はダイオードにみられる順電圧・電流特性の急激な降伏現象を利用したものである。

(5) 空乏層の静電容量が,逆電圧によって変化する性質を利用したダイオードの可変容量ダイオード又はバラクタダイオードという。逆電圧の大きさを小さくしていくと,静電容量は大きくなる。

【ワンポイント解説】

半導体の特性を問う問題です。\(\mathrm {pn}\)接合に関する問題は,電子理論の中でも非常に出題されやすい問題なので、よく理解しておくようにしておきましょう。

【解答】

解答:(4)
(1):正しい
問題文の通り,\(\mathrm {p}\)形が負,\(\mathrm {n}\)形が正となる電圧すなわち逆電圧を加えた場合でも,少数キャリヤがあるので,極めてわずかな電流が流れます。

(2):正しい
太陽電池の原理そのものの説明です。\(\mathrm {pn}\)接合部に光を照射すると,電子と正孔が発生し,それらが\(\mathrm {pn}\)接合部で分けられ電子が\(\mathrm {n}\)形,正孔が\(\mathrm {p}\)形のそれぞれの電極に集まる結果,起電力が生じます。したがって,発生する電気は直流となるので,系統に連系する際はインバータが必要になります。

(3):正しい
発光ダイオードの原理そのものの説明となります。

(4):誤り
ツェナーダイオードは下図のように逆電圧の急激な降伏現象を利用し,定電圧を出力させます。

(5):正しい
問題文の通り,可変容量ダイオードはツェナー電圧以下の逆電圧を加えることによって,コンデンサとして利用します。逆電圧の大きさを小さくすると,静電容量は大きくなります。