《理論》〈電磁気〉[H28:問17]平行平板コンデンサに関する計算問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

図のように,十分大きい平らな金属板で覆われた床と平板電極で作られる空気コンデンサが二つ並列接続されている。二つの電極は床と平行であり,それらの面積は左側が\( \ A_{1}=10^{-3} \ {\mathrm {m}}^{2} \ \),右側が\( \ A_{2}=10^{-2} \ {\mathrm {m}}^{2} \ \)である。床と各電極の間隔は左側が\( \ d=10^{-3} \ \mathrm {m} \ \)で固定,右側が\( \ x \ \mathrm { [ m ] } \ \)で可変,直流電源電圧は\( \ V_{0}=1000 \ \mathrm {V} \ \)である。次の(a)及び(b)の問に答えよ。
ただし,空気の誘電率を\( \ \varepsilon =8.85\times 10^{-12} \ \mathrm {F/m} \ \)とし,静電容量を考える際にコンデンサの端効果は無視できるものとする。

(a) まず,右側の\( \ x \ \mathrm { [ m ] } \ \)を\( \ d \ \mathrm { [ m ] } \ \)と設定し,スイッチ\( \ \mathrm {S} \ \)を一旦閉じてから開いた。このとき,二枚の電極に蓄えられる合計電荷\( \ Q \ \)の値\( \ \mathrm { [ C ] } \ \)として最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 (1) \(8.0\times 10^{-9}\)  (2) \(1.6\times 10^{-8}\)  (3) \(9.7\times 10^{-8}\) 
 (4) \(1.9\times 10^{-7}\)  (5) \(1.6\times 10^{-6}\)

(b) 上記(a)の操作の後,徐々に\(x\)を増していったところ,\( \ x=3.0\times 10^{-3} \ \mathrm {m} \ \)のときに左側の電極と床との間に火花放電が生じた。左側のコンデンサの空隙の絶縁破壊電圧\( \ V \ \)の値\( \ \mathrm { [ V ] } \ \)として最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 (1) \(3.3\times 10^{2}\)  (2) \(2.5\times 10^{3}\)  (3) \(3.0\times 10^{3}\) 
 (4) \(5.1\times 10^{3}\)  (5) \(3.0\times 10^{4}\) 

【ワンポイント解説】

平行平板コンデンサの基本公式を理解していれば,問題なく解答できる問題です。理論科目合格するためには本問は完答したいところです。

1.コンデンサの基本公式
静電容量\( \ C \ \)のコンデンサに電圧\( \ V \ \)が加わったとき,十分時間が経った後コンデンサに蓄えられる電荷\( \ Q \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
Q&=&CV \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。
平行平板コンデンサの極板の面積\( \ S \ \),極板間の距離\( \ d \ \),極板間の誘電率を\( \ \varepsilon \ \)とした時,コンデンサの静電容量\( \ C \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
C&=&\frac {\varepsilon S}{d} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

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  平行平板コンデンサの静電容量まとめ

【解答】

(a)解答:(3)
左側のコンデンサの静電容量を\( \ C_{1} \ \),右側のコンデンサの静電容量を\( \ C_{2} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
C_{1}&=&\frac {\varepsilon A_{1}}{d} \\[ 5pt ] &=&\frac {8.85\times 10^{-12}\times 10^{-3}}{10^{-3}} \\[ 5pt ] &=&8.85\times 10^{-12} \ [ \mathrm {F} ] \end{eqnarray}
\] \[
\begin{eqnarray}
C_{2}&=&\frac {\varepsilon A_{2}}{x} \\[ 5pt ] &=&\frac {8.85\times 10^{-12}\times 10^{-2}}{10^{-3}} \\[ 5pt ] &=&8.85\times 10^{-11} \ [ \mathrm {F} ] \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となるので,二枚の電極に蓄えられる合計電荷\( \ Q \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
Q&=&\left( C_{1} + C_{2} \right) V_{0} \\[ 5pt ] &=&\left( 8.85\times 10^{-12} + 8.85\times 10^{-11} \right) \times 1000 \\[ 5pt ] &=&9.735\times 10^{-8} → 9.7\times 10^{-8} \ [ \mathrm {C} ] \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(b)解答:(2)
\( \ x=3.0\times 10^{-3}\mathrm {m} \ \)とした時の\( \ C_{1} \ \)と\( \ C_{2} \ \)の合計静電容量は,
\[
\begin{eqnarray}
C_{1} + C_{2}&=&\frac {\varepsilon A_{1}}{d}+\frac {\varepsilon A_{2}}{x} \\[ 5pt ] &=&\frac {8.85\times 10^{-12}\times 10^{-3}}{10^{-3}}+\frac {8.85\times 10^{-12}\times 10^{-2}}{3.0\times 10^{-3}} \\[ 5pt ] &≒&3.835\times 10^{-11} \ [ \mathrm {F} ] \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。よって,絶縁破壊発生時にコンデンサの両端にかかる電圧\( \ V \ \)は,蓄えられる電荷量の合計が変化しないことを考慮すると,
\[
\begin{eqnarray}
V&=&\frac {Q}{C_{1} + C_{2}} \\[ 5pt ] &=&\frac {9.735\times 10^{-8} }{3.835\times 10^{-11}} \\[ 5pt ] &≒&2.54\times 10^{3} → 2.5\times 10^{3} \ [ \mathrm {V} ] \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。