《理論》〈電磁気〉[H30:問1]帯電した導体球に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

次の文章は,帯電した導体球に関する記述である。

真空中で導体球\(\mathrm {A}\)及び\(\mathrm {B}\)が軽い絶縁体の糸で固定点\(\mathrm {O}\)からつり下げられている。真空の誘電率を\(\varepsilon _{0} \ \mathrm {[F / m]}\),重力加速度を\(g \ \mathrm {[m / s^{2}]}\)とする。\(\mathrm {A}\)及び\(\mathrm {B}\)は同じ大きさと質量\(m \ \mathrm {[kg]}\)をもつ。糸の長さは各導体球の中心点が点\(\mathrm {O}\)から距離\(l \ \mathrm {[m]}\)となる長さである。

まず,導体球\(\mathrm {A}\)及び\(\mathrm {B}\)にそれぞれ電荷\(Q \ \mathrm {[C]}\),\(3Q \ \mathrm {[C]}\)を与えて帯電させたところ,静電力による\(\fbox {  (ア)  }\)が生じ,図のように\(\mathrm {A}\)及び\(\mathrm {B}\)の中心点間が\(d \ \mathrm {[m]}\)離れた状態で釣り合った。ただし,導体球の直径は\(d\)に比べて十分に小さいとする。このとき,個々の導体球において,静電力\(F=\fbox {  (イ)  } \ \mathrm {[N]}\),重力\(mg \ \mathrm {[N]}\),糸の張力\(T \ \mathrm {[N]}\),の三つの力が釣り合っている。三平方の定理より\(F^{2}+\left( mg \right) ^{2}=T^{2}\)が成り立ち,張力の方向を考えると\(\displaystyle \frac {F}{T}\)は\(\displaystyle \frac {d}{2l}\)に等しい。これらより\(T\)を消去し整理すると,\(d\)が満たす式として,
\[
\begin{eqnarray}
k\left( \frac {d}{2l}\right) ^{3}&=&\sqrt {1-\left( \frac {d}{2l}\right) ^{2}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] が導かれる。ただし,係数\(k=\fbox {  (ウ)  }\)である。

次に,\(\mathrm {A}\)と\(\mathrm {B}\)とを一旦接触させたところ\(\mathrm {AB}\)間で電荷が移動し,同電位となった。そして\(\mathrm {A}\)と\(\mathrm {B}\)とが力の釣合いの位置に戻った。接触前に比べ,距離\(d\)は\(\fbox {  (エ)  }\)した。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

\[
\begin{array}{ccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) \\
\hline
(1) & 反発力 & \frac {3Q^{2}}{4\pi \varepsilon _{0} d^{2}} & \frac {16\pi \varepsilon _{0} l^{2}mg}{3Q^{2}} & 増加 \\
\hline
(2) & 吸引力 & \frac {Q^{2}}{4\pi \varepsilon _{0} d^{2}} & \frac {4\pi \varepsilon _{0} l^{2}mg}{3Q^{2}} & 増加 \\
\hline
(3) & 反発力 & \frac {3Q^{2}}{4\pi \varepsilon _{0} d^{2}} & \frac {4\pi \varepsilon _{0} l^{2}mg}{3Q^{2}} & 増加 \\
\hline
(4) & 反発力 & \frac {Q^{2}}{4\pi \varepsilon _{0} d^{2}} & \frac {16\pi \varepsilon _{0} l^{2}mg}{3Q^{2}} & 減少 \\
\hline
(5) & 吸引力 & \frac {Q^{2}}{4\pi \varepsilon _{0} d^{2}} & \frac {4\pi \varepsilon _{0} l^{2}mg}{3Q^{2}} & 減少 \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

クーロンの法則を基本とした計算問題です。(ア),(イ),(エ)は標準的な問題ですが,(ウ)の計算がやや面倒な問題です。(ア),(イ),(エ)が分かっても(ウ)が分からなければ選択肢は一つに絞れないので,やや難しめの問題であると思います。

1.クーロンの法則
真空中で距離\(r\)離れた二つの電荷\(Q_{\mathrm {A}}\),\(Q_{\mathrm {B}}\)に加わる力\(F\)は,真空の誘電率を\(\varepsilon _{0}\)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
F &=&\frac {Q_{\mathrm {A}}Q_{\mathrm {B}}}{4\pi \varepsilon _{0}r^{2}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

【解答】

解答:(1)
(ア)
題意より各導体球に与えられている電荷はともに+なので反発力となる。

(イ)
ワンポイント解説「1.クーロンの法則」の法則より,各導体球に働く静電力\(F\)は,
\[
\begin{eqnarray}
F &=&\frac {Q\times 3Q}{4\pi \varepsilon _{0}d^{2}} \\[ 5pt ] &=&\frac {3Q^{2}}{4\pi \varepsilon _{0}d^{2}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。このとき,静電力\(F\),重力\(mg\),張力\(T\)は図1のように描ける。

(ウ)
図1より,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {F}{T} &=&\frac {\frac {d}{2}}{l} \\[ 5pt ] &=&\frac {d}{2l} \\[ 5pt ] T&=&\frac {2l}{d}F
\end{eqnarray}
\] であるから,これを\(F^{2}+\left( mg \right) ^{2}=T^{2}\)の式に整理して代入すると,
\[
\begin{eqnarray}
F^{2}+\left( mg \right) ^{2} &=&T^{2} \\[ 5pt ] \left( \frac {F}{T}\right) ^{2} +\left( \frac {mg}{T}\right) ^{2}&=&1 \\[ 5pt ] \left( \frac {d}{2l}\right) ^{2} +\left( \frac {mgd}{2lF}\right) ^{2}&=&1 \\[ 5pt ] \left( \frac {mgd}{2lF}\right) ^{2}&=&1-\left( \frac {d}{2l}\right) ^{2} \\[ 5pt ] \frac {mgd}{2lF}&=&\sqrt {1-\left( \frac {d}{2l}\right) ^{2}} \\[ 5pt ] \frac {mgd}{2l}\cdot \frac {4\pi \varepsilon _{0}d^{2}}{3Q^{2}}&=&\sqrt {1-\left( \frac {d}{2l}\right) ^{2}} \\[ 5pt ] \frac {4\pi \varepsilon _{0}mg}{3Q^{2}}\cdot \frac {d^{3}}{2l}&=&\sqrt {1-\left( \frac {d}{2l}\right) ^{2}} \\[ 5pt ] \frac {16\pi \varepsilon _{0}l^{2}mg}{3Q^{2}}\cdot \left( \frac {d}{2l}\right) ^{3}&=&\sqrt {1-\left( \frac {d}{2l}\right) ^{2}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となるので,\(\displaystyle k=\frac {16\pi \varepsilon _{0}l^{2}mg}{3Q^{2}}\)と求められる。(←補足説明)

(エ)
一旦接触させると,導体球\(\mathrm {B}\)から導体球\(\mathrm {A}\)に電荷が移動し,両方の電荷が等しくなり,共に\(2Q\)となる。よって,\(\mathrm {AB}\)間の距離が\(d^{\prime }\)になったとすると,ワンポイント解説「1.クーロンの法則」より,各導体球に働く静電力\(F\)は,
\[
\begin{eqnarray}
F &=&\frac {2Q\times 2Q}{4\pi \varepsilon _{0}{d^{\prime }}^{2}} \\[ 5pt ] &=&\frac {4Q^{2}}{4\pi \varepsilon _{0}{d^{\prime }}^{2}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,(イ)の解答と比較すると\(d^{\prime } > d\)とならなければ釣り合わないので,距離は増加する。