《理論》〈電気回路〉[R3:問10]RL直列回路の抵抗の大きさが変化したときの現象に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

開放電圧が\( \ V \ \mathrm {[V]} \ \)で出力抵抗が十分に低い直流電圧源と,インダクタンスが\( \ L \ \mathrm {[H]} \ \)のコイルが与えられ,抵抗\( \ R \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)が図1のようにスイッチ\( \ \mathrm {S} \ \)を介して接続されている。時刻\( \ t=0 \ \)でスイッチ\( \ \mathrm {S} \ \)を閉じ,コイルの電流\( \ i_{\mathrm {L}} \ \mathrm {[A]} \ \)の時間に対する変化を計測して,波形として表す。\( \ R=1 \ \mathrm {\Omega } \ \)としたところ,波形が図2であったとする。\( \ R=2 \ \mathrm {\Omega } \ \)であればどのような波形となるか,波形の変化を最も適切に表すものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
 ただし,選択肢の図中の点線は図2と同じ波形を表し,実線は\( \ R=2 \ \mathrm {\Omega } \ \)のときの波形を表している。



【ワンポイント解説】

\( \ RL \ \)直列回路の過渡現象に関する問題です。
リアクトルの定常状態の特徴と時定数の特徴を共に理解しておかないと解けない問題なので,例年の過渡現象に比べると少し難易度が高めの問題となるかと思います。

1.過渡現象におけるリアクトルの過渡状態と定常状態
① 過渡状態
リアクトルに流れる電流値を維持しようとする働きをします。したがって,リアクトルに電圧を印加した瞬間はほとんど電流は流れないので,開放として考えます。

② 定常状態
電圧を印加して十分時間が経過した後は,リアクトルの抵抗はほぼ零になります。したがって,短絡として考えます。

2.過渡現象におけるコンデンサの過渡状態と定常状態
① 過渡状態
コンデンサに蓄えられている電荷が零であるので,電流がものすごく流れやすい状態,すなわち短絡として考えます。

② 定常状態
コンデンサに十分に電荷が蓄えられているので,電流をこれ以上蓄えようとしない,すなわち開放として考えます。

3.時定数
過渡現象におけるリアクトルやコンデンサの電圧の導出は微分方程式の計算を伴うため二種以上の範囲となりますが,図3や図4のような回路が与えられると,図3のリアクトル電圧\( \ V_{\mathrm {L}} \ \mathrm {[V]} \ \)及び回路を流れる電流\( \ I_{\mathrm {L}} \ \mathrm {[A]} \ \),図4のコンデンサ電圧\( \ V_{\mathrm {C}} \ \mathrm {[V]} \ \)及び回路を流れる電流\( \ I_{\mathrm {C}} \ \mathrm {[A]} \ \)はそれぞれ,
\[
\begin{eqnarray}
V_{\mathrm {L}} &=&E\mathrm {e}^{-\frac {R}{L}t} \\[ 5pt ] I_{\mathrm {L}} &=&\frac {E}{R}\left( 1-\mathrm {e}^{-\frac {R}{L}t}\right) \\[ 5pt ] V_{\mathrm {C}} &=&E\left( 1-\mathrm {e}^{-\frac {t}{CR}}\right) \\[ 5pt ] I_{\mathrm {C}} &=&\frac {E}{R}\mathrm {e}^{-\frac {t}{CR}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] で与えられ,\( \ \displaystyle t=\frac {L}{R} \ \)及び\( \ t=CR \ \)となる時間を時定数\( \ \tau \ \)と呼びます。

時定数\( \ \tau \ \)が大きくなると図5のように経過時間に対し,収束するまでの時間が遅くなります。

【解答】

解答:(4)
ワンポイント解説「1.過渡現象におけるリアクトルの過渡状態と定常状態」の通り,定常状態における電流値\( \ I_{\mathrm {s}} \ \mathrm {[A]} \ \)は,リアクトルを短絡すれば良いので,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {s}} &=&\frac {E}{R} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。したがって,\( \ R=1 \ \mathrm {\Omega } \ \)から\( \ R=2 \ \mathrm {\Omega } \ \)に変化すると,定常状態における電流値\( \ I_{\mathrm {s}} \ \mathrm {[A]} \ \)は\( \ \displaystyle \frac {1}{2} \ \)倍となる。
また,ワンポイント解説「3.時定数」の通り,時定数は\( \ \displaystyle t=\frac {L}{R} \ \)で表されるため,\( \ R=1 \ \mathrm {\Omega } \ \)から\( \ R=2 \ \mathrm {\Omega } \ \)に変化すると時定数は小さくなる。したがって,電流の収束は速くなる。
以上を満たすグラフは(4)となる。