《理論》〈電気及び電子計測〉[R4下:問14]アナログーディジタル変換に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

データ変換に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) アナログ量を忠実に再現するために必要な標本化の周期の上限は,再現したいアナログ量の最高周波数により決まる。

(2) 量子化において,一般には数値に誤差が生じる。

(3) 符号化では,量子化された数値が\( \ 2 \ \)進符号などのディジタル信号に変換される。

(4) ディジタル量は,伝送路の環境変化や伝送路で混入する雑音に強い。

(5) ディジタルオシロスコープで変化する電圧の波形を表示するには,その電圧をアナログ-ディジタル変換してからコンピュータで\( \ \mathrm {FFT} \ \)演算を行い,その結果を出力する。

【ワンポイント解説】

データ変換の内容を問う問題です。
内容的には理論科目よりも機械科目の情報伝送に近い内容かと思います。恐らく内容的に多くの受験生が苦戦した問題と思いますので,合格に向けては捨て問としてしまっても良いかもしれません。

1.ディジタル伝送方式
ディジタル伝送方式は,アナログ量である情報をディジタル量に変換\( \ \mathrm {A / D} \ \)変換してから情報を伝送する仕組みで,下記のような過程を経て情報を伝送します。量子化されていることから雑音(ノイズ)の影響を受けにくいことやコンピュータで処理しやすい等の特長がありいます。

①標本化(サンプリング)
 アナログ量の大きさを一定周期\( \ T \ \)ごとに読み取り,期間\( \ T \ \)の間はその値が一定であるようにすることです。\( \ \displaystyle \frac {1}{T} \ \)をサンプリング周波数と言います。サンプリング周波数の\( \ \displaystyle \frac {1}{2} \ \)以上の周波数(ナイキスト周波数)を持つと,折り返し誤差が発生する(エイリアシング現象)ので,フィルタで除去する必要があります。

②量子化
 標本化した情報を\( \ \mathrm {A / D} \ \)変換器でディジタル値に変換することを言います。

③符号化
 量子化した情報をサンプリング周波数毎のパルス化することを言います。

【解答】

解答:(5)
(1):正しい
ワンポイント解説「1.ディジタル伝送方式」の通り,標本化の周期の上限は,再現したいアナログ量の最高周波数によって決まります。

(2):正しい
問題文の通り,量子化においては周期毎の一定値とするため,アナログ値とは誤差が生じます。

(3):正しい
問題文の通り,符号化では,量子化された数値が\( \ 2 \ \)進符号などの伝送に適したディジタル信号に変換されます。

(4):正しい
問題文の通り,ディジタル量は,伝送路の環境変化や伝送路で混入する雑音に強くなります。

(5):誤り
ディジタルオシロスコープで変化する電圧の波形を表示するには,その電圧をアナログ-ディジタル変換して表示しますが,コンピュータで高速フーリエ変換\( \ \left( \mathrm {FFT}\right) \ \)を行う必要はありません。