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【問題】
【難易度】★★★★☆(やや難しい)
図の回路のスイッチ\( \ \mathrm {S} \ \)を\( \ t=0 \ \mathrm {s} \ \)で閉じる。電流\( \ i_{\mathrm {S}} \ \mathrm {[A]} \ \)の波形として最も適切に表すものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし,スイッチ\( \ \mathrm {S} \ \)を閉じる直前に,回路は定常状態にあったとする。
【ワンポイント解説】
リアクトルとコンデンサを組み合わせた過渡現象に関する問題です。
令和4年下期問10を基に作成されたと思われますが,コンデンサを\( \ 2 \ \mathrm {F} \ \)とすることで,さらに難解にした印象です。
令和4年の問題を理解した上で,時定数がどうなるかを考えると解法の糸口が見えてきます。
1.過渡現象におけるリアクトルの過渡状態と定常状態
① 過渡状態
リアクトルに流れる電流値を維持しようとする働きをします。したがって,リアクトルに電圧を印加した瞬間はほとんど電流は流れないので,開放として考えます。
② 定常状態
電圧を印加して十分時間が経過した後は,リアクトルの抵抗はほぼ零になります。したがって,短絡として考えます。
2.過渡現象におけるコンデンサの過渡状態と定常状態
① 過渡状態
コンデンサに蓄えられている電荷が零であるので,電流がものすごく流れやすい状態,すなわち短絡として考えます。
② 定常状態
コンデンサに十分に電荷が蓄えられているので,電流をこれ以上蓄えようとしない,すなわち開放として考えます。
3.時定数
過渡現象におけるリアクトルやコンデンサの電圧の導出は微分方程式の計算を伴うため二種以上の範囲となりますが,図1-1や図2-1のような回路が与えられると,図1-1のリアクトル電圧\( \ V_{\mathrm {L}} \ \mathrm {[V]} \ \)及び回路を流れる電流\( \ I_{\mathrm {L}} \ \mathrm {[A]} \ \),図2-1のコンデンサ電圧\( \ V_{\mathrm {C}} \ \mathrm {[V]} \ \)及び回路を流れる電流\( \ I_{\mathrm {C}} \ \mathrm {[A]} \ \)はそれぞれ,
\[
\begin{eqnarray}
V_{\mathrm {L}} &=&E\mathrm {e}^{-\frac {R}{L}t} \\[ 5pt ]
I_{\mathrm {L}} &=&\frac {E}{R}\left( 1-\mathrm {e}^{-\frac {R}{L}t}\right) \\[ 5pt ]
V_{\mathrm {C}} &=&E\left( 1-\mathrm {e}^{-\frac {t}{CR}}\right) \\[ 5pt ]
I_{\mathrm {C}} &=&\frac {E}{R}\mathrm {e}^{-\frac {t}{CR}} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
で与えられ,\( \ \displaystyle t=\frac {L}{R} \ \)及び\( \ t=CR \ \)となる時間を時定数\( \ \tau \ \)と呼びます。
時定数\( \ \tau \ \)が大きくなると図1-2及び図2-2のように経過時間に対し,収束するまでの時間が遅くなります。
【解答】
解答:(3)
ワンポイント解説「2.過渡現象におけるコンデンサの過渡状態と定常状態」の通り,スイッチ\( \ \mathrm {S} \ \)を閉じる直前の定常状態においてはコンデンサに十分に電荷が蓄えられているため,回路に流れる電流は\( \ 0 \ \mathrm {A} \ \)で,電圧はすべてコンデンサに加わる。
スイッチ\( \ \mathrm {S} \ \)を閉じると回路が短絡されるので,図3に示すように電源から抵抗とコイルを通り電流が流れる閉回路\( \ 1 \ \)と,コンデンサから電荷が放出される閉回路\( \ 2 \ \)ができ,それぞれ分けて考える。(2つの電源があると考え,重ね合わせの理を適用するようなイメージ)
閉回路\( \ 1 \ \)においては,ワンポイント解説「1.過渡現象におけるリアクトルの過渡状態と定常状態」の通り,最初は電流が流れないが徐々に流れるようになり定常状態では\( \ 1 \ \mathrm {A} \ \)になるため,図4に示すような電流\( \ i_{\mathrm {S1}} \ \mathrm {[A]} \ \)が流れると考えることができる。ただし,時定数\( \ \displaystyle \tau _{1}=\frac {L}{R}=\frac {1}{1}=1 \ \mathrm {[s]} \ \)であることに注意する。
閉回路\( \ 2 \ \)においては,ワンポイント解説「2.過渡現象におけるコンデンサの過渡状態と定常状態」の通り,最初はコンデンサ電圧が\( \ 1 \ \mathrm {V} \ \)であるため電流\( \ 1 \ \mathrm {A} \ \)が流れるが,電荷が放出された定常状態では電流が流れなくなるため,図5に示すような電流\( \ i_{\mathrm {S2}} \ \mathrm {[A]} \ \)が流れると考えることができる。ただし,時定数\( \ \displaystyle \tau _{2}=CR=2\times 1=2 \ \mathrm {[s]} \ \)であることに注意する。
よって,求める電流\( \ i_{\mathrm {S}} \ \mathrm {[A]} \ \)は\( \ i_{\mathrm {S1}} \ \mathrm {[A]} \ \)と\( \ i_{\mathrm {S2}} \ \mathrm {[A]} \ \)を合算した電流となるため,図6のようなグラフとなる。