《電力》〈水力発電〉[H23:問1] 揚水発電所のポンプ水車入力遮断に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,揚水発電所におけるポンプ水車の入力遮断に関する記述である。文中の\(\fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$}\)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

揚水運転中の発電電動機が電力系統から遮断されると,\(\fbox {  (1)  }\)が急閉される。揚水量は回転速度の低下に伴って減少し,流水は\(\fbox {  (1)  }\)が全閉するよりも早く水車方向に逆流し始める。\(\fbox {  (2)  }\)内部の水圧は,最初は揚水量の急減により急速に降下するが,\(\fbox {  (1)  }\)全閉時には水車方向の流水を遮断するので水圧上昇が起こり,運転時の水圧より高くなった後に静水圧になる。これらの現象により,\(\fbox {  (3)  }\)がない揚水発電所では,ポンプ水車の入力遮断時に,\(\fbox {  (2)  }\)と導水路の接続部の曲がり部で,水流が急減して\(\fbox {  (4)  }\)が発生する場合がある。

入力遮断時に万一\(\fbox {  (1)  }\)が閉鎖しない場合には,揚水量は回転速度の低下によって急減し,流水は数秒後に水車方向に逆流し,回転もポンプ方向から水車方向に転じて,\(\fbox {  (5)  }\)に至る。

〔問1の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 無拘束速度状態   &(ロ)& 水圧管路   &(ハ)& 吸出し菅 \\[ 5pt ] &(ニ)& 排砂ゲート   &(ホ)& カルマン渦   &(ヘ)& キャビテーション \\[ 5pt ] &(ト)& ガイドベーン   &(チ)& 沈砂地   &(リ)& サージタンク \\[ 5pt ] &(ヌ)& 放水口   &(ル)& 可変速運転状態   &(ヲ)& ケーシング \\[ 5pt ] &(ワ)& )発電状態   &(カ)& ガバナ   &(ヨ)& 水柱分離
\end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

水力発電所の緊急停止に関する問題です。図1に示すような揚水発電所の概略フローがきちんと頭の中に入っていないと解答は難しいです。何も見ずに図1は書けるにしておきましょう。

【用語の解説】

(イ)無拘束速度状態
 電力系統から遮断した際,ガイドベーンが閉鎖しない場合に水車が回転する無負荷状態での回転速度。

(ロ)水圧管路
 図1に示す通り,サージタンクから水車までの管路。水圧変動に耐えうる強度が要求される。

(ハ)吸出し管
 反動水車のみに設置されているもので,ラッパ状になっており位置エネルギーと速度エネルギーを有効に回収し,水車の効率を上げる。

(ニ)排砂ゲート
 ダムの貯水池に溜まった砂を下流に流し,貯水池の貯水量が減らないようにするためのゲート。

(ホ)カルマン渦
 流体が何かの物体にぶつかる等で流れが変わった際に発生する渦。水力発電所においてはランナの裏側等でカルマン渦が発生しやすい。

(ヘ)キャビテーション
 水車の特定の箇所の圧力が水の飽和水蒸気圧以下に低下したり真空部分ができると,水蒸気の気泡が発生する。この気泡が圧力の高いところに移動するとまた液化して,気泡が崩壊しランナの壊食等が発生する。

(ト)ガイドベーン
 水車の入口に設けられる水量を調整する案内羽根。

(チ)沈砂地
 流速を遅くして砂を沈降させるための池。ダム式ではダムがその代わりをするため必要がない。

(リ)サージタンク
 水圧管路の水圧が上昇した際に,圧力水を放出して、圧力上昇を抑えるためのタンク。

(ヌ)放水口
 水車で仕事をした水を河川に戻す場所。

(ル)可変速運転状態
 近年の揚水発電所で実施されている負荷調整方法です。揚水運転時に入力電力を調整し,系統負荷を調整します。

(ヲ)ケーシング
 外箱いわゆるケースです。この設問では水車の外箱という意味でしょう。

(ワ)発電状態
 この問の中では水車が発電運転中の状態を意味するものと思われます。

(カ)ガバナ
 調速機のことで,通常運転時は負荷変化に合わせガイドベーンの開度を調整し水量を調整し,水車の回転数を一定に保つためのものです。

(ヨ)水柱分離
 何らかの形で水菅の両側から斥力(引張力)が働き,水柱(水)が分離し,圧力が急激に低下する現象です。負圧部ではウォータハンマが発生したり,管路が破損する可能性があります。

【解答】

(1)解答:ト
 題意より,解答候補は(ニ)排砂ゲート,(ト)ガイドベーン,(カ)ガバナの三択に絞れると思います。このうち水量が減らすことができるのは(ト)ガイドベーン,(カ)ガバナですが,ガバナには緊急時の遮断能力はありません。

(2)解答:ロ
 題意より,解答候補は(ロ)水圧管路,(ハ)吸出し菅,(ヌ)放水口の三択に絞れると思います。図1に示す通り当該施設は(ロ)水圧管路になります。

(3)解答:リ
 題意より,解答候補は(リ)サージタンクもしくは(ヲ)ケーシングになると思いますが,圧力の変動対策に設置するのは(リ)サージタンクとなります。

(4)解答:ヨ
 題意より,解答候補は(ホ)カルマン渦,(ヘ)キャビテーション,(ヨ)水柱分離になると思います。(ホ)カルマン渦,(ヘ)キャビテーションに似たような現象は起きなくもなさそうですが,最も適切なものは(ヨ)水柱分離でしょう。

(5)解答:イ
 題意より,解答候補は(イ)無拘束速度状態,(ル)可変速運転状態,(ワ)発電状態の三択に絞れると思います。このうち(ル)可変速運転状態は通常運転時の状態なので対象外です。水車の回転方向から(ワ)発電状態と言えなくもなさそうですが,ガイドベーンが閉鎖しない場合とわざわざ記載しているので(イ)無拘束速度状態の方が適切でしょう。



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