《法規》〈電気施設管理〉[H22:問11]自家用電気施設の過電流継電器の整定に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

図のような自家用電気施設の供給系統において,変電室変圧器二次側\( \ \left( 210 \ \mathrm {[V]}\right) \ \)で三相短絡事故が発生した場合,次の(a)及び(b)に答えよ。

ただし,受電電圧\( \ 6 \ 600 \ \mathrm {[V]} \ \),三相短絡事故電流\( \ I_{\mathrm {s}}=7 \ \mathrm {[kA]} \ \)とし,変流器\( \ \mathrm {CT-3} \ \)の変流比は,\( \ \mathrm {75 \ A / 5 \ A} \ \) とする。

(a) 事故時における変流器\( \ \mathrm {CT-3} \ \)の二次電流\( \ \mathrm {[A]} \ \)の値として,最も近いのは次のうちどれか。

 (1) \( \ 5.6 \ \)  (2) \( \ 7.5 \ \)  (3) \( \ 11.2 \ \)  (4) \( \ 14.9 \ \)  (5) \( \ 23 \ \)

(b) この事故における保護協調において,施設内の過電流継電器の中で最も早い動作が求められる過電流継電器(以下,\( \ \mathrm {OCR-3} \ \)という。)の動作時間\( \ \mathrm {[秒]} \ \)の値として,最も近いのは次のうちどれか。

ただし,\( \ \mathrm {OCR-3} \ \)の動作時間演算式は\( \ \displaystyle T=\frac {80}{\left( N^{2}-1\right) }\times \frac {D}{10} [秒] \ \)とする。この演算式における\( \ T \ \)は\( \ \mathrm {OCR-3} \ \)の動作時間\( \ \mathrm {[秒]} \ \),\( \ N \ \)は\( \ \mathrm {OCR-3} \ \)の電流整定値に対する入力電流値の倍数を示し,\( \ D \ \)はダイヤル(時限)整定値である。

また,\( \ \mathrm {CT-3} \ \)に接続された\( \ \mathrm {OCR-3} \ \)の整定値は次のとおりとする。
\[
\begin{array}{|c|c|c|}
\hline
\mathrm {OCR} \ 名称  & 電流整定値 \ \mathrm {[A]} & ダイヤル(時限)整定値 \\
\hline
 \mathrm {OCR-3}  & 3 & 2 \\
\hline
\end{array}
\]  (1) \( \ 0.4 \ \)  (2) \( \ 0.7 \ \)  (3) \( \ 1.2 \ \)  (4) \( \ 1.7 \ \)  (5) \( \ 3.4 \ \)

【ワンポイント解説】

自家用電気施設の過電流継電器の整定に関する問題です。
(a)は変流比を理解していれば解ける問題で正答率が高く,(b)が過電流継電器の整定値に関する問題で少し差がついた問題と言えます。
(b)はその場で読み解いて解く必要がある問題ですので,本番でも出題された場合には落ち着いて解くようにしましょう。

1.計器用変成器
計器用変成器はそのままでは測定困難な高電圧や大電流を測定可能な大きさの電圧や電流に変成して測定機器を接続する機器です。計器用変圧器と変流器があります。

①計器用変圧器\( \ \left( \mathrm {VT} \right) \ \)
図1のように一次(主回路)側の高電圧を二次(計器)側の低電圧に変換する機器となります。
一次二次の巻数比と変圧比の関係は,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {N_{1}}{N_{2}}&=&\frac {V_{1}}{V_{2}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。
計器用変圧器\( \ \mathrm {VT} \ \)の二次側を短絡すると,二次側に電圧を発生させるため過大な電流が流れ,機器の焼損や波及事故が発生してしまう可能性があるので,二次側は絶対に短絡してはいけません。

②変流器\( \ \left( \mathrm {CT} \right) \ \)
図2のように一次(主回路)側の大電流を二次(計器)側の測定電流に変換する機器となります。
一次二次の巻数比と変流比の関係は,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {N_{1}}{N_{2}}&=&\frac {I_{2}}{I_{1}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。
変流器\( \ \mathrm {CT} \ \)の二次側を開放すると測定電流が全て励磁電流となるので,鉄心の磁束密度が著しく大きくなり,焼損するおそれがあります。したがって,二次側は絶対に開放してはいけません。

【解答】

(a)解答:(4)
変圧器二次側で三相短絡電流\( \ I_{\mathrm {s}}=7 \ \mathrm {[kA]} \ \)が流れたときの,変圧器一次側の電流値\( \ I_{\mathrm {s1}} \ \mathrm {[A]} \ \)は,ワンポイント解説「1.計器用変成器」の通り,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {N_{1}}{N_{2}}=\frac {V_{1}}{V_{2}}&=&\frac {I_{\mathrm {s}}}{I_{\mathrm {s1}}} \\[ 5pt ] I_{\mathrm {s1}}&=&\frac {V_{2}}{V_{1}}I_{\mathrm {s}} \\[ 5pt ] &=&\frac {210}{6 \ 600}\times 7\times 10^{3} \\[ 5pt ] &≒&222.7 \ \mathrm {[A]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であり,変流器\( \ \mathrm {CT-3} \ \)の変流比は,\( \ \mathrm {75 \ A / 5 \ A} \ \)であるから,変流器\( \ \mathrm {CT-3} \ \)の二次電流\( \ I_{\mathrm {s2}} \ \mathrm {[A]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {I_{\mathrm {s1}}}{I_{\mathrm {s2}}}&=&\frac {75}{5} \\[ 5pt ] I_{\mathrm {s2}}&=&\frac {5}{75}I_{\mathrm {s1}} \\[ 5pt ] &=&\frac {5}{75}\times 222.7 \\[ 5pt ] &≒&14.85 \ \mathrm {[A]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,最も近いのは\( \ 14.9 \ \mathrm {[A]} \ \)と求められる。

(b)解答:(2)
題意より,\( \ N \ \)は\( \ \mathrm {OCR-3} \ \)の電流整定値に対する入力電流値の倍数なので,
\[
\begin{eqnarray}
N&=&\frac {I_{\mathrm {s2}}}{3} \\[ 5pt ] &=&\frac {14.85}{3} \\[ 5pt ] &=&4.95 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,与えられている\( \ \mathrm {OCR-3} \ \)の動作時間演算式に各値を代入すると,
\[
\begin{eqnarray}
T&=&\frac {80}{\left( N^{2}-1\right) }\times \frac {D}{10} \\[ 5pt ] &=&\frac {80}{\left( 4.95^{2}-1\right) }\times \frac {2}{10} \\[ 5pt ] &≒&0.681 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,最も近いのは\( \ 0.7 \ \)と求められる。