《法規》〈電気施設管理〉[H22:問10]配電系統の高調波の特徴と対策に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

次の文章は,配電系統の高調波についての記述である。不適切なものは次のうちどれか。

(1) 高調波電流を多く含んだ程度に応じて電圧ひずみが大きくなる。

(2) 高調波発生機器を設置していない高圧需要家であっても直列リアクトルを付けないコンデンサ設備が存在する場合,電圧ひずみを増大させることがある。

(3) 低圧側の第\( \ 3 \ \)次高調波は,零相(各相が同相)となるため高圧側にあまり現れない。

(4) 高調波電流流出抑制対策のコンデンサ設備は,高調波発生源が変圧器の低圧側にある場合,高圧側に設置した方が高調波電流流出抑制の効果が大きい。

(5) 高調波電流流出抑制対策設備に,高調波電流を吸収する受動フィルタと高調波電流の逆極性の電流を発生する能動フィルタがある。

【ワンポイント解説】

配電系統の高調波に特徴とその対策方法に関する問題です。
恐らく\( \ 1 \ \)種のパワーエレクトロニクスの問題まで取り組んでいないとなかなか理屈は理解できない内容です。かなり細かな部分を問う問題ですので,とりあえずは高調波の特徴と日本における対策の内容を覚え,本問は消去法で正答できるようになれば十分かと思います。

1.高調波
「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」では高調波環境目標レベルとして\( \ 6.6 \ \mathrm {kV} \ \)配電系統で\( \ 5 \ \mathrm {%} \ \),特別高圧系統で\( \ 3 \ \mathrm {%} \ \)を維持すると定められています。

①高調波の発生源
アーク炉等の負荷,変圧器の磁気飽和,パワーエレクトロニクス機器等。
\( \ 3 \ \)次,\( \ 5 \ \)次,\( \ 7 \ \)次,\( \ 11 \ \)次の奇数次の高調波が多く,偶数次では\( \ 2 \ \)次の高調波も発生します。\( \ 3 \ \)次の高調波は変圧器の\( \ \Delta \ \)結線で還流させることができるので,電力系統としては最も多い\( \ 5 \ \)次の高調波に対する対策を行います。

②高調波による影響
・コンデンサやリアクトルが過熱,焼損
・電力用ヒューズのエレメントが過熱,溶断
・変圧器が振動,過熱
・発電機の巻線が過熱
・保護継電器が誤動作
・配電用遮断器が誤トリップ
・ラジオやテレビに可聴雑音が発生
・半導体機器が故障及び性能劣化

③高調波の対策
・整流器の相数を増加する
・電力用コンデンサには必ず直列リアクトルを設置する
・パッシブフィルタ,アクティブフィルタを設置する
・短絡容量の大きな系統から受電する

【解答】

解答:(4)
(1)正しい
問題文の通りです。ひずみ波は基本波+高調波で構成されるため,高調波電流を多く含んだ程度に応じて電圧ひずみは大きくなります。

(2)正しい
問題文の通りです。コンデンサ設備が存在する場合,特定の高調波成分に対し系統のリアクタンスと並列共振状態になり,電圧ひずみが増大する可能性があります。

(3)正しい
ワンポイント解説「1.高調波」の通り,\( \ 3 \ \)次の高調波は変圧器の\( \ \Delta \ \)結線で還流させることができるので,高圧側にあまり現れません。

(4)誤り
高調波電流流出抑制対策のコンデンサ設備は,高調波発生源が変圧器の低圧側にある場合には,分流の法則に従い低圧側に設置した方が高調波電流流出抑制の効果が大きいです。

(5)正しい
ワンポイント解説「1.高調波」の通り,フィルタ設備には高調波電流を吸収する受動フィルタ(パッシブフィルタ)と高調波電流の逆極性の電流を発生する能動フィルタ(アクティブフィルタ)があります。フィルタ設備に関する出題は1種ではされています。