《電力》〈送電〉[R05下:問11]直流送電の特徴や注意点に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

直流送電に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 系統連系のための直流送電では,交直変換所の設置が必要となる。

(2) 交流送電のような同期安定度の問題がないので,長距離送電に適している。

(3) 直流の高電圧大電流の遮断は,交流の場合より容易である。

(4) 直流は,変圧器で簡単に昇圧や降圧ができない。

(5) 交直変換器からは高調波が発生するので,フィルタ設置等の対策が必要である。

【ワンポイント解説】

直流送電に関する問題です。
直流送電は長距離送電に向いている送電方式で,北海道-本州直流連系や紀伊水道直流連系があり,いずれも\( \ 100 \ \mathrm {km} \ \)以上の海底ケーブルとなります。
本問はやや古いですが,平成15年問8からの再出題となります。

1.直流送電の得失
<直流送電のメリット>
・安定度の問題がないため,送電線の熱的許容電流まで送電容量を増やせます。したがって,大容量の送電に有利です。
・無効電流による損失がないので,送電損失が少ないです。したがって,長距離送電に有利です。
・同容量のケーブルで,交流に比べ\( \ \sqrt {2} \ \)倍までの電圧を送電できます。
・電圧最大値が実効値と等しいので,絶縁強度を低減が図れます。
・静電容量による充電電流が流れないため,誘電損が発生しません。
・送電線が2条で良いため,建設コストが下がります。

<直流送電のデメリット>
・交直変換装置が必要です。
・交流のように零点がないため,高電圧・大電流の遮断が難しいです。
・変換装置から高調波が発生するため,フィルタや調相設備の設置が必要です。
大地帰路方式において,電食が発生しやすいです。
・変圧器で電圧の変成ができません。

【解答】

解答:(3)
(1)正しい
ワンポイント解説「1.直流送電の得失」の通り,交流系統と連系するために交直変換所が必要となります。

(2)正しい
ワンポイント解説「1.直流送電の得失」の通り,直流送電では同期安定度の問題がないので,長距離送電に適しています。

(3)誤り
ワンポイント解説「1.直流送電の得失」の通り,直流では電流零点がないので,高電圧大電流の遮断は困難となります。

(4)正しい
ワンポイント解説「1.直流送電の得失」の通り,直流では変圧器で簡単に昇圧や降圧ができません。

(5)正しい
ワンポイント解説「1.直流送電の得失」の通り,交直変換器からは高調波が発生するので,フィルタ設備等の対策が必要です。