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【問題】
【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)
電動機ではずみ車を加速して,運動エネルギーを蓄えることを考える。
まず,加速するための電動機のトルクを考える。加速途中の電動機の回転速度を\( \ N \ \mathrm {[{min}^{-1}]} \ \)とすると,そのときの毎秒の回転速度\( \ n \ \mathrm {[s^{-1}]} \ \)は①式で表される。
\[
\begin{eqnarray}
\fbox { (ア) } ・・・・・・・・・・・・・・・・・ ① \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
この回転速度\( \ n \ \mathrm {[s^{-1}]} \ \)から②式で角速度\( \ \omega \ \mathrm {[rad/s]} \ \)を求めることができる。
\[
\begin{eqnarray}
\fbox { (イ) } ・・・・・・・・・・・・・・・・・ ② \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
このときの電動機が\( \ 1 \ \)秒間にする仕事,すなわち出力を\( \ P \ \mathrm {[W]} \ \)とすると,トルク\( \ T \ \mathrm {[N\cdot m]} \ \)は③式となる。
\[
\begin{eqnarray}
\fbox { (ウ) } ・・・・・・・・・・・・・・・・・ ③ \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
③式のトルクによってはずみ車を加速する。電動機が出力し続けて加速している間,この分のエネルギーがはずみ車に注入される。電動機に直結するはずみ車の慣性モーメントを\( \ I \ \mathrm {[kg\cdot m^{2}]} \ \)として,加速が完了したときの電動機の角速度を\( \ \omega _{0} \ \mathrm {[rad/s]} \ \)とすると,このはずみ車に蓄えられている運動エネルギー\( \ E \ \mathrm {[J]} \ \)は④式となる。
\[
\begin{eqnarray}
\fbox { (エ) } ・・・・・・・・・・・・・・・・・ ④ \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
上記の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[
\begin{array}{ccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) \\
\hline
(1) & n=\displaystyle \frac {N}{60} & \omega =2\pi \times n & T=\displaystyle \frac {P}{\omega } & E=\displaystyle \frac {1}{2}I^{2}\omega _{0} \\
\hline
(2) & n=60N & \omega =\displaystyle \frac {n}{2\pi } & T=P\omega & E=\displaystyle \frac {1}{2}I^{2}\omega _{0} \\
\hline
(3) & n=\displaystyle \frac {N}{60} & \omega =2\pi \times n & T=P\omega & E=\displaystyle \frac {1}{2}I\omega _{0}^{2} \\
\hline
(4) & n=60N & \omega =\displaystyle \frac {n}{2\pi } & T=\displaystyle \frac {P}{\omega } & E=\displaystyle \frac {1}{2}I^{2}\omega _{0} \\
\hline
(5) & n=\displaystyle \frac {N}{60} & \omega =2\pi \times n & T=\displaystyle \frac {P}{\omega } & E=\displaystyle \frac {1}{2}I\omega _{0}^{2} \\
\hline
\end{array}
\]
【ワンポイント解説】
はずみ車の原理に関する問題です。
近年はフライホイールという蓄電システムが確立しているので,電験でも出題されやすい問題と言えます。
本問は平成25年問10からの再出題となります。
1.出力\( \ P \ \)とトルク\( \ T \ \)の関係
一般に電動機の出力\( \ P \ \mathrm {[W]} \ \)とトルク\( \ T \ \mathrm {[N\cdot m]} \ \)には,角速度\( \ \omega \ \mathrm {[rad/s]} \ \)であるとき,
\[
\begin{eqnarray}
P &=& \omega T \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
の関係があります。
2.慣性モーメント\( \ J \ \)
質量\( \ m \ \mathrm {[kg]} \ \),速度\( \ v \ \mathrm {[m/s]} \ \)で回転している回転体の運動エネルギー\( \ W \ \mathrm {[J]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
W &=& \frac {1}{2}mv^{2} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
であり,回転体の半径を\( \ r \ \mathrm {[m]} \ \),角速度を\( \ \omega \ \mathrm {[rad/s]} \ \)とすると,\( \ v=r\omega \ \)の関係があるから,
\[
\begin{eqnarray}
W &=& \frac {1}{2}m\left( r\omega \right) ^{2} \\[ 5pt ]
&=& \frac {1}{2}mr^{2}\omega ^{2} \\[ 5pt ]
&=& \frac {1}{2}J\omega ^{2} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となります。この\( \ J=mr ^{2} \ \)を慣性モーメントと呼びます。
慣性モーメントが大きいと,回転体は加速しにくく,減速しにくいという特徴があります。
【解答】
解答:(5)
(ア)
\( \ N \ \mathrm {[{min}^{-1}]} \ \)は\( \ 1 \ \)分あたりの回転速度,\( \ n \ \mathrm {[s^{-1}]} \ \)は\( \ 1 \ \)秒あたりの回転速度であるので,\( \ \displaystyle n=\frac {N}{60} \ \)となります。
(イ)
\( \ 1 \ \)回転あたりの弧度は\( \ 2\pi \ \)なので,角速度\( \ \omega \ \mathrm {[rad/s]} \ \)は,\( \ \omega =2\pi n \ \)となります。\( \ \displaystyle \omega =\frac {2\pi N}{60} \ \)も非常によく使う公式なので,暗記しておくようにしましょう。
(ウ)
ワンポイント解説「1.出力\( \ P \ \)とトルク\( \ T \ \)の関係」の通り,トルクは\( \ \displaystyle T =\frac {P}{\omega } \ \)となります。
(エ)
ワンポイント解説「2.慣性モーメント\( \ J \ \)」の通り,はずみ車に蓄えられている運動エネルギーは\( \ \displaystyle E=\displaystyle \frac {1}{2}I\omega _{0}^{2} \ \)となります。