《機械》〈電熱〉[R05下:問12]誘導加熱の原理や特徴,用途に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

誘導加熱に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 産業用では金属の溶解や金属部分の熱処理などに用いられ,民生用では調理加熱に用いられている。

(2) 金属製の被加熱物を交番磁界内に置くことで発生するジュール熱によって被加熱物自体が発熱する。

(3) 被加熱物の透磁率が高いものほど加熱されやすい。

(4) 被加熱物に印加する交番磁界の周波数が高いほど,被加熱物の内部が加熱されやすい。

(5) 被加熱物として,銅,アルミよりも,鉄,ステンレスの方が加熱されやすい。

【ワンポイント解説】

誘導加熱に関する問題です。
誘導加熱の周波数の内部の浸透深さの関係は,実際のコンロの強火と弱火と類似した関係があります。
煮込み料理等弱火(周波数が低い)の方がじっくりと内部まで浸透していく感覚はわかるかと思います。
本問は平成29年問13からの再出題となります。

1.誘導加熱
交番磁界中に導電体を置くことによって,ファラデーの電磁誘導の法則により渦電流が生じ,その抵抗損(ジュール損)によって発熱します。オール電化のコンロ等はこの原理を利用しています。
交番磁束は表皮効果によって被加熱物の表面近くに集まり,渦電流も被加熱物の表面付近に集中します。その指標として誘導加熱による物体への電流浸透の深さ\( \ \delta \ \mathrm {[cm]} \ \)があり,比透磁率\( \ \mu _{\mathrm {s}} \ \),抵抗率\( \ \rho \ \mathrm {[\mu \Omega \cdot cm]} \ \),周波数\( \ f \ \mathrm {[Hz]} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
\delta &=&5.03\sqrt {\frac {\rho }{\mu _{\mathrm {s}} f}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,周波数が低いほど物体への電流浸透の深さは深くなります。

【解答】

解答:(4)
(1)正しい
問題文の通り,誘導加熱は産業用では金属の溶解や金属部分の熱処理などに用いられ,民生用では調理加熱に用いられています。

(2)正しい
ワンポイント解説「1.誘導加熱」の通り,誘導加熱は金属製の被加熱物を交番磁界内に置くことで発生するジュール熱によって被加熱物自体が発熱します。

(3)正しい
問題文の通り,被加熱物の透磁率が高いものほど加熱されやすいという特徴があります。透磁率が高い=物体内を通る磁束が多い→渦電流が大きくなる→発熱が増えるとなります。

(4)誤り
ワンポイント解説「1.誘導加熱」の通り,浸透深さ\( \ \delta \ \)は,\( \ \displaystyle \delta ∝\sqrt {\frac {1}{f}} \ \)の関係があり,周波数が高いほど内部が加熱されにくくなります。

(5)正しい
ワンポイント解説「1.誘導加熱」の通り,抵抗率が大きくなるほど加熱されやすいため,被加熱物として,金属の中でも導電率が高い銅,アルミよりも,導電率が低い鉄,ステンレスの方が加熱されやすい特徴があります。