《理論》〈電磁気〉[R07上:問2]絶縁体の液体で満たしたときの球状導体の特性の変化に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

真空中に\( \ Q \ \mathrm {[C]} \ \)の電荷を持つ半径\( \ r \ \mathrm {[m]} \ \)の球状導体がある。ここで,真空の空間を比誘電率\( \ 2 \ \)の絶縁体の液体で満たしたとすると,静電気に関する記述として,正しいものを次の(1)~(5)うちから一つ選べ。ただし,無限遠点の電位を零電位とする。

(1) 球状導体表面の電位は,液体を満たす前の\( \ 2 \ \)倍になった。

(2) 球状導体表面の電界の強さは,液体を満たす前の\( \ 2 \ \)倍になった。

(3) 球状導体表面の電束密度は,液体を満たす前の\( \ 2 \ \)倍になった。

(4) 球状導体から出る電気力線の本数は,液体を満たす前の\( \ 2 \ \)倍になった。

(5) 球状導体の静電容量は,液体を満たす前の\( \ 2 \ \)倍になった。

【ワンポイント解説】

空間の誘電率が変化した場合の各パラメータの変化を問う問題です。
電磁気の基本公式を理解しているかどうかが問われています。
令和3年問2と似たような出題形式で,本問の方が計算量は少ないですが問われている知識は多いです。

1.クーロンの法則
真空中で距離\( \ r \ \mathrm {[m]} \ \)離れた二つの電荷\( \ Q_{\mathrm {A}} \ \mathrm {[C]} \ \),\( \ Q_{\mathrm {B}} \ \mathrm {[C]} \ \)に加わる力\( \ F \ \mathrm {[N]} \ \)は,真空の誘電率を\( \ \varepsilon _{0} \ \mathrm {[F / m]} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
F &=&\frac {Q_{\mathrm {A}}Q_{\mathrm {B}}}{4\pi \varepsilon _{0}r^{2}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。このとき,\( \ Q_{\mathrm {A}} \ \),\( \ Q_{\mathrm {B}} \ \)の\( \ + \ \)\( \ – \ \)の符号が同符号である場合には斥力(反発する力),異符号である場合には引力(引き合う力)が働きます。

2.真空中の電界の大きさ
真空中に電荷\( \ Q \ \mathrm {[C]} \ \)をおいた時,電荷から距離\( \ r \ \mathrm {[m]} \ \)離れた場所の電界の大きさ\( \ E \ \mathrm {[N / C]} \ \)は,真空の誘電率を\( \ \varepsilon _{0} \ \mathrm {[F / m]} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
E &=&\frac {Q}{4\pi \varepsilon _{0}r^{2}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。この場所に電荷\( \ q \ \mathrm {[C]} \ \)の電荷を置けば,
\[
\begin{eqnarray}
F &=&qE \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] の力が働きます。

3.点電荷を置いたときの周囲の電位
真空中に電荷\( \ Q \ \mathrm {[C]} \ \)を置いた時,距離\( \ r \ \mathrm {[m]} \ \)離れた位置の電位\( \ V \ \mathrm {[V]} \ \)は,真空の誘電率を\( \ \varepsilon _{0} \ \mathrm {[F / m]} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
V &=&\frac {Q}{4\pi \varepsilon _{0}r} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。クーロンの法則\( \ \displaystyle F=\frac {Q_{1}Q_{2}}{4\pi \varepsilon _{0}r^{2}} \ \)や電界の式\( \ \displaystyle E=\frac {Q}{4\pi \varepsilon _{0}r^{2}} \ \)と似ているので合わせて覚えておきましょう。

4.電気力線の特徴
電気力線は正電荷から負電荷に向かう仮想の線で,以下のような特徴があります。言葉ではなく図で覚えておいて,内容を理解した方が良いと思います。
①電気力線の本数は電荷\( \ Q \ \mathrm {[C]} \ \),誘電率\( \ \varepsilon \ \mathrm {[F/m]} \ \)を用いると,\( \ \displaystyle \frac {Q}{\varepsilon } \ \)本である。
②電気力線は正電荷から垂直に出て,負電荷に垂直に入る。
③電気力線同士は反発し合う。
④電気力線は枝分かれしたり,交差したりしない。
⑤電気力線の向きは電界の向きと一致し,電気力線の密度は電界の大きさに比例する。

5.電束密度\( \ D \ \)と電界\( \ E \ \)の関係
空間の誘電率を\( \ \varepsilon \ \mathrm {[F / m]} \ \)とすると,電束密度\( \ D \ \mathrm {[C / m^{2}]} \ \)と電界\( \ E \ \mathrm {[V / m]} \ \)には,
\[
\begin{eqnarray}
D&=&\varepsilon E \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] の関係があります。真空の誘電率を\( \ \varepsilon _{0} \ \mathrm {[F / m]} \ \),誘電体の比誘電率を\( \ \varepsilon _{\mathrm {r}} \ \)とすると,\( \ \varepsilon = \varepsilon _{\mathrm {r}}\varepsilon _{0} \ \)の関係があるので,
\[
\begin{eqnarray}
D&=&\varepsilon _{\mathrm {r}}\varepsilon _{0}E \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

6.電荷\( \ Q \ \)と静電容量\( \ C \ \)及び電位\( \ V \ \)の関係
空間中の静電容量\( \ C \ \mathrm {[F]} \ \)のコンデンサにおいて,蓄えられる電荷\( \ Q \ \mathrm {[C]} \ \)と導体表面の電位\( \ V \ \mathrm {[V]} \ \)には,
\[
\begin{eqnarray}
Q &=&CV \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] の関係があります。

【解答】

解答:(5)
(1):誤り
ワンポイント解説「3.点電荷を置いたときの周囲の電位」の通り,電位は誘電率に反比例するので,球状導体表面の電位は,液体を満たす前の\( \ \displaystyle \frac {1}{2} \ \)倍になります

(2):誤り
ワンポイント解説「2.真空中の電界の大きさ」の通り,電界の強さは誘電率に反比例するので,球状導体表面の電界の強さは,液体を満たす前の\( \ \displaystyle \frac {1}{2} \ \)倍になります

(3):誤り
ワンポイント解説「5.電束密度\( \ D \ \)と電界\( \ E \ \)の関係」の通り,電束密度は電界の強さに比例し,電界の強さは誘電率に反比例するので,球状導体表面の電束密度は,液体を満たす前の\( \ \displaystyle \frac {1}{2} \ \)倍になります

(4):誤り
ワンポイント解説「4.電気力線の特徴」の通り,電気力線の密度は電界の大きさに比例し,電界の強さは誘電率に反比例するので,球状導体から出る電気力線の本数は,液体を満たす前の\( \ \displaystyle \frac {1}{2} \ \)倍になります

(5):正しい
ワンポイント解説「6.電荷\( \ Q \ \)と静電容量\( \ C \ \)及び電位\( \ V \ \)の関係」の通り,\( \ \displaystyle C=\frac {Q}{V} \ \)の関係があり,ワンポイント解説「3.点電荷を置いたときの周囲の電位」の式を変形すると,
\[
\begin{eqnarray}
V &=&\frac {Q}{4\pi \varepsilon _{0}r} \\[ 5pt ] \frac {Q}{V} &=&4\pi \varepsilon _{0}r \\[ 5pt ] C&=&4\pi \varepsilon _{0}r \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となるので,静電容量は誘電率に比例し,液体を満たす前の\( \ 2 \ \)倍になります。