《理論》〈電磁気〉[R3:問2]絶縁体の液体で満たしたときの小球間に働く静電力に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

二つの導体小球がそれぞれ電荷を帯びており,真空中で十分な距離を隔てて保持されている。ここで,真空の空間を,比誘電率\( \ 2 \ \)の絶縁体の液体で満たしたとき,小球の間に作用する静電力に関する記述として,正しいものを次の(1)~(5)うちから一つ選べ。

(1) 液体で満たすことで静電力の向きも大きさも変わらない。

(2) 液体で満たすことで静電力の向きは変わらず,大きさは\( \ 2 \ \)倍になる。

(3) 液体で満たすことで静電力の向きは変わらず,大きさは\( \ \displaystyle \frac {1}{2} \ \)倍になる。

(4) 液体で満たすことで静電力の向きは変わらず,大きさは\( \ \displaystyle \frac {1}{4} \ \)倍になる。

(5) 液体で満たすことで静電力の向きは逆になり,大きさは変わらない。

【ワンポイント解説】

クーロンの法則に関する問題です。
クーロンの法則は真空で適用する法則ですが,真空の誘電率を置き換えれば,誘電体中の力を求めることが可能となります。

1.クーロンの法則
真空中で距離\( \ r \ \)離れた二つの電荷\( \ Q_{\mathrm {A}} \ \),\( \ Q_{\mathrm {B}} \ \)に加わる力\( \ F \ \)は,真空の誘電率を\( \ \varepsilon _{0} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
F &=&\frac {Q_{\mathrm {A}}Q_{\mathrm {B}}}{4\pi \varepsilon _{0}r^{2}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

【解答】

解答:(3)
真空中で距離\( \ r \ \)離れた二つの電荷\( \ Q_{\mathrm {A}} \ \),\( \ Q_{\mathrm {B}} \ \)に加わる力\( \ F_{1} \ \)は,真空の誘電率を\( \ \varepsilon _{0} \ \)とすると,ワンポイント解説「1.クーロンの法則」の通り,
\[
\begin{eqnarray}
F_{1} &=&\frac {Q_{\mathrm {A}}Q_{\mathrm {B}}}{4\pi \varepsilon _{0}r^{2}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。真空の空間を,比誘電率\( \ 2 \ \)の絶縁体の液体で満たしたとき,誘電率は\( \ 2\varepsilon _{0} \ \)となるので,二つの電荷\( \ Q_{\mathrm {A}} \ \),\( \ Q_{\mathrm {B}} \ \)に加わる力\( \ F_{2} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
F_{2} &=&\frac {Q_{\mathrm {A}}Q_{\mathrm {B}}}{4\pi \cdot 2\varepsilon _{0}r^{2}} \\[ 5pt ] &=&\frac {Q_{\mathrm {A}}Q_{\mathrm {B}}}{8\pi \varepsilon _{0}r^{2}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。したがって,その比は,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {F_{2}}{F_{1}} &=&\frac {\displaystyle \frac {Q_{\mathrm {A}}Q_{\mathrm {B}}}{8\pi \varepsilon _{0}r^{2}}}{\displaystyle \frac {Q_{\mathrm {A}}Q_{\mathrm {B}}}{4\pi \varepsilon _{0}r^{2}}} \\[ 5pt ] &=&\frac {1}{2} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められ,静電力の向きは変わらず,大きさは\( \ \displaystyle \frac {1}{2} \ \)倍となる。