《電力》〈送電〉[R07下:問9]架空送電線路の雷による過電圧とその対策に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

架空送電線路の雷害対策に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 二回線送電線路で,両回線の絶縁に格差を設け,二回線にまたがる事故を抑制する方法を不平衡絶縁方式という。

(2) 架空地線を多条化することで,架空地線と電力線間の結合率が増加し,鉄塔雷撃時に発生するアークホーン間電圧が抑制できるので,逆フラッシオーバの発生が抑制できる。

(3) 鉄塔塔脚の接地抵抗を低減させることで,電力線への雷撃に伴う逆フラッシオーバの発生を抑制できる。

(4) 送電用避雷装置は雷撃時に発生するアークホーン間電圧を抑制できるので,雷による事故を抑制できる。

(5) 直撃雷から架空送電線を遮へいする効果を大きくするためには,架空地線の遮へい角を小さくする。

【ワンポイント解説】

架空送電線路の雷による過電圧とその対策に関する問題です。
電験でも出題頻度の高い内容で,多くの類題が空欄穴埋問題でも出題されています。ここで必ず理解しておきましょう。
本問は平成26年問8からの再出題となります。

1.外部過電圧
外部過電圧は雷により発生する過電圧で,以下のように分類されます。

①直撃雷
図1のように送電線や機器に直接落雷する現象です。
過電圧の大きさは非常に大きく\( \ 100 \ \)万\( \ \mathrm {V} \ \)以上になり,がいしの絶縁耐力を超えフラッシオーバが発生します。
フラッシオーバをしないと機器に過電圧が加わるので,がいしの連結個数は適切にする必要があります。

②誘導雷
図2のように,帯電した雷雲(一般に夏季雷は負極性)が送電線に近づくと静電誘導により反対の極性の電荷が雷雲付近に集まり,落雷等で放電されると送電線に蓄えられていた電荷が一気に解放され,大きな電荷の移動が起こる現象です。
雷過電圧の中で最も発生数が多い特徴があります。

③逆フラッシオーバ
図3のように鉄塔や架空地線に落雷したときに,がいしの絶縁耐力を超え,送電線側に過電圧が侵入する現象です。

2.架空地線
<架空地線の役割>
架空地線は電線の上部、主に鉄塔の一番上に設ける裸電線で,以下のような役割があります。
①送電線への直撃雷を防止する。(遮へい角が小さい程遮へい効果は高い。)
②誘導雷(雷雲の電荷により反対の電荷が電線に現れ,落雷により雷雲の電荷がなくなるために電線で大きな電荷の移動が起こる現象)を軽減する。
③通信線への電磁誘導障害を軽減する。

<架空地線落雷時の対策>
また,架空地線や鉄塔に落雷した際の逆フラッシオーバに対する対策として,以下のような対策が取られます。
①埋設地線で鉄塔と大地の接地抵抗を小さくする。
②アークホーンでがいしの損傷を防止する。(逆フラッシオーバ自体の対策ではありません。)
③\( \ 2 \ \)回線送電線におけるがいしの連結個数に差をつけて(不平衡絶縁方式),両回線同時事故を防ぐ。

3.送電線用避雷装置
過電圧が発生した際に導通し,その後の続流を制限する装置です。アークホーンには一旦フラッシオーバが発生すると続流を遮断する機能がないため,変電所の遮断器等が動作し送電線事故に至る可能性がありますが,送電線用避雷装置には瞬時に続流を遮断する機能があるため,送電線の雷事故発生を防ぐことができます。
図2に示すような酸化亜鉛素子をがいしと並列して設置するもので,酸化亜鉛素子に直列ギャップを設けるのが一般的です。

【解答】

解答:(3)
(1)正しい
ワンポイント解説「2.架空地線」の通り,二回線送電線路で,両回線の絶縁に格差を設ける方法を不平衡絶縁方式といい,二回線同時事故発生による停電を防止することができます。

(2)正しい
ワンポイント解説「2.架空地線」の通り,架空地線を多条化することは雷害対策として有効です。また,多条化する際は,架空地線同士を離し,電力線に近接させると架空地線と電力線間の結合率が増加し,鉄塔雷撃時に発生するアークホーン間電圧が抑制できるので,逆フラッシオーバの発生が抑制できるとされています。

(3)誤り
ワンポイント解説「2.架空地線」の通り,鉄塔塔脚の接地抵抗を低減させることで,電力線への雷撃ではなく架空地線や鉄塔への雷撃に伴う逆フラッシオーバの発生を抑制することができます。

(4)正しい
ワンポイント解説「3.送電線用避雷装置」の通り,送電用避雷装置は酸化亜鉛素子を挿入することで,雷撃時に発生するアークホーン間電圧を抑制できるので,雷による事故を抑制できます。

(5)正しい
ワンポイント解説「2.架空地線」の通り,直撃雷から架空送電線を遮へいする効果を大きくするためには,架空地線の遮へい角を小さくすることが有効です。