【問題】
【難易度】★★★★☆(やや難しい)
次の文章は,二つの重陽子による核反応について述べている。
重陽子\( \ {}^{2}_{1}\mathrm {H} \ \)は重水素の原子核で,陽子と中性子が\( \ 1 \ \)個ずつ結合したものである。
\[
\begin{eqnarray}
{}^{2}_{1}\mathrm {H}+{}^{2}_{1}\mathrm {H} &→&{}^{3}_{2}\mathrm {He}+{}^{1}_{0}\mathrm {n} ····························· ① \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
①式に示す核反応式では質量数の大きい原子核が生ずるので,これは\( \ \fbox { (ア) } \ \)反応である。反応後の総質量は\( \ \mathit {\Delta }m \ \mathrm {[kg]} \ \)だけ\( \ \fbox { (イ) } \ \)し,\( \ \fbox { (ウ) } \ \mathrm {[J]} \ \)で表される核エネルギー:\( \ 5.4\times 10^{-13} \ \mathrm {J} \ \)が放出される。また①式の核反応を起こすには,二つの重陽子を \( \ 4.0\times 10^{-15} \ \mathrm {m} \ \)程度の距離に近づける必要がある。その距離における重陽子間の静電気力による位置エネルギーは\( \ \fbox { (エ) } \ \mathrm {J} \ \)である。
ただし,真空中の光の速さは\( \ c=3.0\times 10^{8} \ \mathrm {m / s} \ \),静電気に関するクーロンの法則の比例定数は\( \ k=9.0\times 10^{9} \ \mathrm {N\cdot m^{2} / C^{2}} \ \),電気素量は\( \ e=1.6\times 10^{-19} \ \mathrm {C} \ \)とする。また二つの点電荷\( \ q_{1} \ \mathrm {[C]} \ \),\( \ q_{2} \ \mathrm {[C]} \ \)が距離\( \ r \ \mathrm {[m]} \ \)離れて存在するときに各点電荷が持つ位置エネルギーは\( \ \displaystyle U=k\frac {q_{1}\cdot q_{2}}{r} \ \mathrm {[J]} \ \)(無限遠点を基準とする)で与えられる。
上記の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[
\begin{array}{ccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) \\
\hline
(1) & 核分裂 & 増加 & \mathit {\Delta }m\cdot c^{2} & 3.6\times 10^{-14} \\
\hline
(2) & 核融合 & 減少 & \mathit {\Delta }m\cdot c^{2} & 5.8\times 10^{-14} \\
\hline
(3) & 核融合 & 減少 & \mathit {\Delta }m\cdot c^{2} & 3.6\times 10^{-14} \\
\hline
(4) & 核融合 & 増加 & \displaystyle \frac {1}{2} \mathit {\Delta }m\cdot c^{2} & 5.8\times 10^{-14} \\
\hline
(5) & 核分裂 & 減少 & \displaystyle \frac {1}{2} \mathit {\Delta }m\cdot c^{2} & 3.6\times 10^{-14} \\
\hline
\end{array}
\]
【ワンポイント解説】
二つの重陽子による核反応に関する問題です。
これまで電験では出題されてこなかった内容ですが,化石燃料に変わるエネルギーとして注目されているエネルギーなので,知識として知っている受験生もいらっしゃったかと思います。
1.核融合反応
核融合反応は,水素のような軽い原子核同士が融合して,より重い原子核(ヘリウムなど)に変わる現象です。太陽をはじめとする恒星が莫大な光と熱を出し続けているエネルギー源であり,地上で人工的に起こす発電技術としても研究が進められています。
代表的な核融合反応は地上で最も反応を起こしやすい重水素\( \ \left( \mathrm {D}\right) \ \)と三重水素(トリチウム:\( \ \left( \mathrm {T}\right) \ \))を用いた反応で,\( \ \mathrm {DT} \ \)反応と呼ばれます。
\[
\begin{eqnarray}
{}^{2}_{1}\mathrm {H}+{}^{3}_{1}\mathrm {H} &→&{}^{4}_{2}\mathrm {He}+{}^{1}_{0}\mathrm {n} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
核融合反応が起こると,反応後の原子核の方がより強固に結合することから,反応前の合計質量よりも反応後の合計質量の方が軽くなります。この失われた質量(質量欠損)\( \ \Delta m \ \mathrm {[kg]} \ \)によるエネルギー\( \ E \ \mathrm {[J]} \ \)は,光の速度を\( \ c=3.0\times 10^{8} \ \mathrm {[m / s]} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
E &=&\Delta m c^{2} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
の関係があります。
2.核融合発電の技術的課題
原子核は陽子と中性子で構成されているため,全体としてはプラスの電荷を帯びています。
核融合を起こすには,二つの原子核を至近距離まで接近させ非常に強い引力である核力を働かせる必要がありますが,近づけようとするとプラスの電荷同士で大きな反発力であるクーロン力が働くため,容易に近づけることができません(クーロン障壁)。
したがって,燃料を原子核と電子がバラバラに飛び交う超高温プラズマ状態にして,原子核同士を高速度で衝突させる必要があり,これが大きな技術的課題となっています。
【解答】
解答:(2)
(ア)
ワンポイント解説「1.核融合反応」の通り,軽い重陽子(質量数\( \ 2 \ \))同士が合体して,より質量数の大きいヘリウム(質量数\( \ 3 \ \))が生じているため,核融合反応となります。
(イ)
ワンポイント解説「1.核融合反応」の通り,核融合反応において,反応後の総質量は\( \ \mathit {\Delta }m \ \mathrm {[kg]} \ \)だけ減少します。
(ウ)
ワンポイント解説「1.核融合反応」の通り,核融合反応におけるエネルギーは,\( \ \mathit {\Delta }m\cdot c^{2} \ \mathrm {[J]} \ \)となります。
(エ)
反応式より,それぞれの重陽子の電荷の大きさは陽子\( \ 1 \ \)個分,すなわち\( \ q_{1}=q_{2}=1.6\times 10^{-19} \ \mathrm {[C]} \ \)と考えればよいです。したがって,重陽子間の静電気力による位置エネルギー\( \ U \ \mathrm {[J]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
U&=&k\frac {q_{1}\cdot q_{2}}{r} \\[ 5pt ]
&=&9.0\times 10^{9}\times \frac {1.6\times 10^{-19}\times 1.6\times 10^{-19}}{4.0\times 10^{-15}} \\[ 5pt ]
&≒&5.8\times 10^{-14} \ \mathrm {[J]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
と求められます。












