《機械》〈回転機〉[H25:問3]三相誘導電動機の回転磁界に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

三相誘導電動機の回転磁界に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 三相誘導電動機の一次巻線による励磁と,三相同期電動機の電機子反作用とは,それぞれの機種固有の表現になっているが,三相巻線に電流が流れて生じる回転磁界という点では同じ現象である。

(2) \( \ 3 \ \)組のコイルを互いに電気角で\( \ 120 \ \mathrm {[°]} \)ずらして配置し,三相電源から三相交流を流せば回転磁界ができる。磁界の回転方向を逆転させるには,三相電源の\( \ 3 \ \)線のうち,いずれかの\( \ 2 \ \)線を入れ換える。

(3) 交番磁界は正転と逆転の回転磁界を合成したものである。三相電源の\( \ 3 \ \)線のうち\( \ 1 \ \)線が断線した三相誘導電動機の回転磁界は単相の交番磁界であるが,正転の回転磁界が残っているので,静止時に負荷が軽い場合は正回転を始める。

(4) 回転磁界の隣り合う磁極間(\( \ \mathrm {N} \ \)極と\( \ \mathrm {S} \ \)極間)の幾何学的角度は,\( \ 2 \ \)極機は\( \ 180 \ \mathrm {[°]} \),\( \ 4 \ \)極機は\( \ 90 \ \mathrm {[°]} \),\( \ 6 \ \)極機は\( \ 60 \ \mathrm {[°]} \),\( \ 8 \ \)極機は\( \ 45 \ \mathrm {[°]} \)であるが,電気角は全て\( \ 180 \ \mathrm {[°]} \)である。

(5) 三相交流の\( \ 1 \ \)周期の間に,回転磁界は電気角で\( \ 360 \ \mathrm {[°]} \)回転する。幾何学的角度では,\( \ 2 \ \)極機は\( \ 360 \ \mathrm {[°]} \),\( \ 4 \ \)極機は\( \ 180 \ \mathrm {[°]} \),\( \ 6 \ \)極機は\( \ 120 \ \mathrm {[°]} \),\( \ 8 \ \)極機は\( \ 90 \ \mathrm {[°]} \)回転するので,極数を多くすると,回転速度を小さくすることができる。

【ワンポイント解説】

三相誘導電動機の特徴に関する問題です。3つの巻線を\( \ 120 \ \mathrm {°} \)ずつずらして配置して,三相交流電流を流すと回転磁界ができます。

【解答】

解答:(3)
(1):正しい
問題文の通りです。電機子反作用は同期機において,主磁束以外にも負荷電流によって生じる磁束により,主磁束に影響が出る現象で,三相巻線に電流が流れて生じる回転磁界という点では同じ現象となります。

(2):正しい
問題文の通りです。三相電源の\( \ 3 \ \)線のうち,いずれかの\( \ 2 \ \)線を入れ換えれば,磁界の回転方向を逆転させることができるので,ブレーキとして扱うこともできます。

(3):誤り
三相電源の\( \ 3 \ \)線のうち\( \ 1 \ \)線が断線した三相誘導電動機の回転磁界は単相の交番磁界となり,正転の回転磁界が残っていますが,静止時には回転を始めることはありません

(4):正しい
問題文の通りです。回転磁界の隣り合う磁極間(\( \ \mathrm {N} \ \)極と\( \ \mathrm {S} \ \)極間)の幾何学的角度は,\( \ 2 \ \)極機は\( \ 180 \ \mathrm {[°]} \),\( \ 4 \ \)極機は\( \ 90 \ \mathrm {[°]} \),\( \ 6 \ \)極機は\( \ 60 \ \mathrm {[°]} \),\( \ 8 \ \)極機は\( \ 45 \ \mathrm {[°]} \)ですが,\( \ \mathrm {N} \ \)極から\( \ \mathrm {S} \ \)極へと変化するため,電気角は全て\( \ 180 \ \mathrm {[°]} \)となります。

(5):正しい
問題文の通りです。回転速度は極数により変化させることが可能となります。下の公式は覚えておきましょう。
同期速度\( \ N_{\mathrm {s}} \ \),周波数\( \ f \ \),極数\( \ p \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
N_{\mathrm {s}} &=& \frac {120f}{p} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。