《機械》〈回転機〉[R3:問7]各種電動機の始動電流の抑制方法に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

電源の電圧や周波数が一定の条件下,各種電動機では,始動電流を抑制するための種々の工夫がされている。

а.直流分巻電動機
電機子回路に\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)抵抗を接続して電源電圧を加え始動電流を制限する。回転速度が上昇するに従って抵抗値を減少させる。

b.三相かご形誘導電動機
\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)結線の一次巻線を\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)結線に接続を変えて電源電圧を加え始動電流を制限する。回転速度が上昇すると\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)結線に戻す。

c.三相巻線形誘導電動機
\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)回路に抵抗を接続して電源電圧を加え始動電流を制限する。回転速度が上昇するに従って抵抗値を減少させる。

d.三相同期電動機
無負荷で始動電動機(誘導電動機や直流電動機)を用いて同期速度付近まで加速する。次に,界磁を励磁して\( \ \fbox {  (オ)  } \ \)発電機として,三相電源との並列運転状態を実現する。そののち,始動用電動機の電源を遮断して同期電動機として運転する。

 上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

\[
\begin{array}{cccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) & (オ) \\
\hline
(1) &  直列  &  \mathrm {\Delta }  &  \mathrm {Y}  &  二次  &  同期  \\
\hline
(2) &  並列  &  \mathrm {Y}  &  \mathrm {\Delta }  &  一次  &  誘導  \\
\hline
(3) &  直列  &  \mathrm {Y}  &  \mathrm {\Delta }  &  二次  &  誘導  \\
\hline
(4) &  並列  &  \mathrm {Y}  &  \mathrm {\Delta }  &  一次  &  同期  \\
\hline
(5) &  直列  &  \mathrm {\Delta }  &  \mathrm {Y}  &  二次  &  誘導  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

各種電動機の始動方法に関する問題です。
電動機はそのまま始動すると,始動電流が非常に大きくなってしまうため,小形機を除き,何らかの工夫をして始動電流を抑える方法が取られます。
(オ)の空欄がやや引っ掛け問題のようになっているため,間違えないように注意しましょう。

1.代表的な各種電動機始動方法
本問に取り上げられている始動方法について解説します。
その他の誘導電動機の始動方法は平成30年問4,同期電動機の始動方法は平成25年問5に出題されているので,合わせて確認しておくようにしましょう。

①直流分巻電動機の始動
図1のように,電機子巻線に直列に始動抵抗を接続して,電機子回路に流れる始動電流を減少させます。
回転数が上昇したら,始動抵抗を減少させていきます。

②かご形誘導電動機の始動(\( \ \mathrm {Y}-\Delta \ \)始動法)
始動時は\( \ \mathrm {Y} \ \)巻線,定格時には\( \ \Delta \ \)巻線で運転する方法です。\( \ \mathrm {Y} \ \)巻線は\( \ \Delta \ \)巻線と比較して電圧が\( \ \displaystyle \frac {1}{\sqrt {3}} \ \)倍となるので,それぞれの始動電流の大きさの比は,
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {Y}} &=&\frac {\displaystyle \frac {V}{\sqrt {3}}}{Z} \\[ 5pt ] &=&\frac {V}{\sqrt {3}Z} \\[ 5pt ] I_{\mathrm {\Delta }} &=&\frac {\displaystyle \sqrt {3}V}{Z} \\[ 5pt ] \frac {I_{\mathrm {Y}}}{I_{\mathrm {\Delta }}}&=&\frac {\displaystyle \frac {V}{\sqrt {3}Z}}{\displaystyle \frac {\sqrt {3}V}{Z}} \\[ 5pt ] &=&\frac {1}{3} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,始動トルクの比は,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {T_{\mathrm {Y}}}{T_{\Delta }} &=&\frac {\displaystyle \left( \frac {V}{\sqrt {3}}\right) ^{2}}{V^{2}} \\[ 5pt ] &=&\frac {1}{3} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

③巻線形誘導電動機の始動法(二次抵抗法)
二次巻線にスリップリングを介し,外部可変抵抗を接続して始動する方法で,比例推移の原理を利用して,始動電流を抑制します。

④三相同期電動機の始動法(始動電動機法)
三相同期電動機に直結した誘導電動機や直流電動機を用いて同期速度付近まで加速した後,界磁電流を流して励磁し同期する方法です。始動用の誘導電動機は,同期電動機よりも磁極数を\( \ 2 \ \)極少ないものを選定して,同期速度以上に加速できるようにします。

【解答】

解答:(1)
(ア)
ワンポイント解説「1.代表的な各種電動機始動方法」の通り,直流分巻電動機では,電機子回路に直列抵抗を接続して始動電流を抑える方法が取られる場合があります。

(イ)
ワンポイント解説「1.代表的な各種電動機始動方法」の通り,三相かご形誘導電動機では,始動時は\( \ \mathrm {Y} \ \)結線,定格時には\( \ \Delta \ \)結線に接続を変えて始動する方法が取られる場合があります。したがって,定格時の巻線は\( \ \Delta \ \)巻線となります。

(ウ)
ワンポイント解説「1.代表的な各種電動機始動方法」の通り,\( \ \mathrm {Y}-\Delta \ \)始動法では始動時には\( \ \mathrm {Y} \ \)結線に接続を変えます。

(エ)
ワンポイント解説「1.代表的な各種電動機始動方法」の通り,巻線形誘導電動機では二次回路に抵抗を接続して始動電流を抑制する方法が取られます。

(オ)
ワンポイント解説「1.代表的な各種電動機始動方法」の通り,三相同期電動機の始動電動機法では,誘導電動機や直流電動機を使用して同期速度付近まで加速します。界磁を励磁して三相電源と同期するまでは界磁を励磁して,同期発電機として運転します。