《電力》〈新エネルギー発電〉[H24:問5]風力発電に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

風力発電に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 風力発電は,風の力で風力発電機を回転させて電気を発生させる発電方式である。風が得られれば燃焼によらずパワーを得ることができるため,発電するときに\( \ \mathrm {CO_{2}} \ \)を排出しない再生可能エネルギーである。

(2) 風車で取り出せるパワーは風速に比例するため,発電量は風速に左右される。このため,安定して強い風が吹く場所が好ましい。

(3) 離島においては,風力発電に適した地域が多く存在する。離島の電力供給にディーゼル発電機を使用している場合,風力発電を導入すれば,そのディーゼル発電機の重油の使用量を減らす可能性がある。

(4) 一般的に,風力発電では同期発電機,永久磁石式発電機,誘導発電機が用いられる。特に,大形の風力発電機には,同期発電機又は誘導発電機が使われている。

(5) 風力発電では,翼が風を切るため騒音を発生する。風力発電を設置する場所によっては,この騒音が問題となる場合がある。この騒音対策として,翼の形を工夫して騒音を低減している。

【ワンポイント解説】

風力発電に関する一般事項に関する説明です。常識的な内容や想像しやすい選択肢もあり,間違いも風力の重要事項からで見つけやすい内容なので,比較的易しい部類の問題になると思います。

1.風力発電所の出力
図1に示すように,風車の受風面積を\( \ A \ \mathrm {[m^{2}]} \ \),風速を\( \ v \ \mathrm {[m/s]} \ \)とすると,単位時間当たりに通過する風の体積\( \ V \ \mathrm {[m^{3}/s]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
V &=&Av \ \mathrm {[m^{3}/s]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。したがって,単位時間当たりに通過する風の質量\( \ m \ \mathrm {[kg/s]} \ \)は,空気の密度を\( \ \rho \ \mathrm {[kg/m^{3}]} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
m &=&\rho V \\[ 5pt ] &=&\rho Av \ \mathrm {[kg/s]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。物体の運動エネルギーは\(\displaystyle E=\frac {1}{2}mv^{2}\)であるので,単位時間当たりの風のエネルギー(≒出力)\( \ P \ \mathrm {[W]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
P &=&\frac {1}{2}mv^{2} \\[ 5pt ] &=&\frac {1}{2}\rho Av^{3} \ \mathrm {[W]}\\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められます。

【解答】

解答:(2)
(1)正しい
問題文の通りです。風力発電は,風の力で風力発電機を回転させて電気を発生させる発電方式です。風が得られれば燃焼によらずパワーを得ることができるため,発電するときに\( \ \mathrm {CO_{2}} \ \)を排出しない再生可能エネルギーです。現在では一般常識的な内容になると思います。

(2)誤り
ワンポイント解説「1.風力発電所の出力」の通り,風車で取り出せるパワーは風速の3乗に比例するため,発電量は風速に大幅に左右されます。このため,安定して強い風が吹く場所が好ましく,日本では秋田県の日本海側の設置数が多くなっています。

(3)正しい
問題文の通り,離島においては,海に近いため風が強く吹く箇所が多く,風力発電に適した地域が多く存在します。離島の電力供給にディーゼル発電機を使用している場合,風力発電を導入すれば,そのディーゼル発電機の重油の使用量を減らすことが可能となります。

(4)正しい
問題文の通り,一般的に,風力発電では同期発電機,永久磁石式発電機,誘導発電機が用いられ,特に,大形の風力発電機には,同期発電機又は誘導発電機が使われています。同期発電機であると,励磁装置が必要であったり,構造が複雑になったりしますが,単独運転や力率調整も可能となるため,導入する際にはその辺りも検討内容となります。

(5)正しい
問題文の通り,風力発電では,翼が風を切るため騒音を発生し,風力発電を設置する場所によっては,この騒音が問題となる場合があります。そのため,住宅地等からは一定以上の距離を保ち,翼の形を工夫して騒音を低減する等の対策も必要となる場合があります。