《電力》〈原子力〉[R2:問4]ウラン235など原子燃料に使用される物質に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,原子燃料に関する記述である。

核分裂は様々な原子核で起こるが,ウラン\( \ 235 \ \)などのように核分裂を起こし,連鎖反応を持続できる物質を\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)といい,ウラン\( \ 238 \ \)のように中性子を吸収して\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)になる物質を\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)という。天然ウラン中に含まれるウラン\( \ 235 \ \)は約\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \mathrm {%} \ \)で,残りは核分裂を起こしにくいウラン\( \ 238 \ \)である。ここで,ウラン\( \ 235 \ \)の濃度が天然ウランの濃度を超えるものは,濃縮ウランと呼ばれており,濃縮度\( \ 3 \ \mathrm {%} \ \)から\( \ 5 \ \mathrm {%} \ \)程度の\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)は原子炉の核燃料として使用される。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

\[
\begin{array}{ccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) \\
\hline
(1) &  核分裂性物質  &  親物質  &  1.5  &  低濃縮ウラン  \\
\hline
(2) &  核分裂性物質  &  親物質  &  0.7  &  低濃縮ウラン  \\
\hline
(3) &  核分裂生成物  &  親物質  &  0.7  &  高濃縮ウラン  \\
\hline
(4) &  核分裂生成物  &  中間物質  &  0.7  &  低濃縮ウラン  \\
\hline
(5) &  放射性物質  &  中間物質  &  1.5  &  高濃縮ウラン  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

原子炉内の連鎖反応に関する出題で原子力発電の問題としては比較的易しい問題になるかと思います。
空欄の(イ)だけはあまり電験のテキストでは名称は出てこないので,ここで覚えておきましょう。他の空欄は大抵のテキストには掲載されている内容かと思います。確実に分かる選択肢から正答を導き出すことも重要です。

1.原子炉での核分裂反応
原子燃料であるウランは核分裂性物質であるウラン\( \ 235 \ \)と中性子を吸収して核分裂性物質になるウラン\( \ 238 \ \)があり,それぞれの核分裂反応のイメージは図1及び図2に示すような形となります。

①ウラン\( \ 235 \ \)の核分裂反応
核分裂性物質であるウラン\( \ 235 \ \)は熱中性子が衝突することで,核分裂が発生し,その時にエネルギーを出すと同時に放射性物質と高速中性子を\( \ 2~3 \ \)個程度出します。高速中性子が再び減速材(軽水)にて減速され熱中性子になり,また別のウラン\( \ 235 \ \)に衝突することで連鎖反応を繰り返します。

②ウラン\( \ 238 \ \)の核分裂反応
親物質であるウラン\( \ 238 \ \)は熱中性子を一旦捕獲・吸収することで,核分裂性物質であるプルトニウム\( \ 239 \ \)になり,ウラン\( \ 235 \ \)と同様な核分裂反応を起こします。

以上のような過程を繰り返すことで連鎖反応を起こすのが原子炉での核分裂反応となります。
天然ウランでは\( \ 99 \ \mathrm {%} \ \)以上がウラン\( \ 238 \ \)でウラン\( \ 235 \ \)の割合は\( \ 0.7 \ \mathrm {%} \ \)程度しかなく,これでは連鎖反応が続かないので,連鎖反応が継続可能な\( \ 3 ~ 5 \ \mathrm {%} \ \)程度に濃縮(低濃縮ウラン)して使用します。

【解答】

解答:(2)
(ア)
ワンポイント解説「1.原子炉での核分裂反応」の通り,ウラン\( \ 235 \ \)を核分裂性物質と言います。核分裂生成物とは,核分裂によって発生した放射性物質を含む物質で,ヨウ素\( \ 131 \ \)、セシウム\( \ 137 \ \)、ストロンチウム\( \ 90 \ \)などがあります。

(イ)
ワンポイント解説「1.原子炉での核分裂反応」の通り,ウラン\( \ 238 \ \)を親物質と言います。

(ウ)
ワンポイント解説「1.原子炉での核分裂反応」の通り,天然に含まれるウラン\( \ 235 \ \)の割合は\( \ 0.7 \ \mathrm {%} \ \)程度です。

(エ)
ワンポイント解説「1.原子炉での核分裂反応」の通り,原子炉の核燃料として使用するのは低濃縮ウランとなります。