《機械》〈電熱〉[H18:問3]製鋼用アーク炉設備に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

次の文章は,製鋼用アーク炉設備に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる語句又は数値を解答群の中から選び,その記号をマークシートに記入しなさい。

製鋼用アーク炉はアーク加熱応用の代表的な例であり,商用周波の三相交流電力をそのまま用いる交流アーク炉と整流装置を用いた直流アーク炉がある。両者共に電圧は数百ボルト程度,電流は数千アンペアから数万アンペア以上のアークを\( \ \fbox {  (1)  } \ \)と被溶解物である鉄くずや還元鉄の間に発生させ,これにより溶解し鋼を作る炉である。

炉内でのアーク長を一定に保つように機械的な制御装置が設けられているが,炉内のアーク長の変化は急しゅんで,機械的な制御装置ではこの急しゅんな変動への十分な応答は困難である。

交流炉の単純化された電気的等価回路は,アーク抵抗と給電回路のリアクタンスが直列接続されたものと表現できる。この回路で,抵抗に相当するアークが炉内での短絡からアークの消滅までを変動すると考えると,基本的には有効-無効電力の変動軌跡は\( \ \fbox {  (2)  } \ \)を描く。一方,直流炉における交流側での両電力の変動軌跡は,整流装置の電流制御機能により\( \ \fbox {  (3)  } \ \)となる。このように電力動揺の範囲は直流炉では交流炉の\( \ \fbox {  (4)  } \ \mathrm {[%]} \ \)程度となることから,同一電気定格容量の場合,弱小の電源系統への接続が比較的容易といわれている。

直流アーク炉では,直流母線に流れる電流が作る磁場により,アークに電磁力が作用し,アーク\( \ \fbox {  (5)  } \ \)が発生することで被溶解物の不均一溶解や炉内にホットスポットを生成する原因となる。これを抑制するために直流母線の配置には工夫が必要となる。

〔問3の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& ピンチ効果       &(ロ)& 33     &(ハ)& 楕 円 \\[ 5pt ] &(ニ)& 黒鉛電極     &(ホ)& 直 線     &(ヘ)& 円 \\[ 5pt ] &(ト)& 50      &(チ)& 2 \ 乗曲線       &(リ)& 半 円 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 金属電極     &(ル)& 偏 向     &(ヲ)& 20 \\[ 5pt ] &(ワ)& 1 / 4 \ 円     &(カ)& 不平衡     &(ヨ)& 銅合金電極 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

製鋼用アーク炉設備に関する問題です。
アーク加熱の基本や交流アーク炉と直流アーク炉の違い等専門性も高く,様々な分野を扱う電験としてはかなり厳しい問題であったかと思います。

1.アーク加熱
アークを黒鉛電極と被加熱物との間に発生させて数千℃~2万℃程度まで温度を上げ加熱・溶解する方法で,直接加熱方式と間接加熱方式があります。そして加える電流の種類として,三相交流をそのまま用いる交流アーク炉と直流に整流して用いる直流アーク炉があります。主に鉄くずや還元鉄による電気製鋼等に使用される加熱です。
アークの特性として,大電流の領域では,アーク電圧が電流に依存せずほぼ一定となりアーク長にほぼ比例する,という特徴があります。
また,アーク炉は一般に大容量の負荷であり,負荷変動や波形ひずみが電圧フリッカや高調波等の電源障害の発生源となる可能性があるので,無効電力補償装置等の対策を施す必要があります。

2.交流アーク炉と直流アーク炉の比較
製鋼用アーク炉における交流炉と直流炉の主な違いは下表の通りとなります。
\[
\begin{array}{|c|c|c|}
\hline
& 交流アーク炉 & 直流アーク炉 \\
\hline
電極の本数 & 三相交流のため通常 \ 3 \ 本 & 通常は上部電極 \ 1 \ 本 \\
\hline
{\displaystyle 電力動揺}\atop {\displaystyle (電圧フリッカ)} & {\displaystyle アーク長変動がそのまま}\atop {\displaystyle 電力変動になり,大きい} & {\displaystyle 整流装置の高速電流制御により,}\atop {\displaystyle 交流炉の 約 \ 50 \ % \ 程度に減少  } \\
\hline
電極消耗量 & {\displaystyle 電極先端の熱集中や}\atop {\displaystyle フリッカの影響で多い} & 交流炉に比べて少ない \\
\hline
その他の特徴 & {\displaystyle 三相の不平衡,電圧フリッカ}\atop {\displaystyle 対策が必要        } & {\displaystyle 大電流により発生する磁場による }\atop {\displaystyle 電磁力でアークが曲がる偏向が発生} \\
\hline
\end{array}
\]

【解答】

(1)解答:ニ
題意より解答候補は,(ニ)黒鉛電極,(ヌ)金属電極,(ヨ)銅合金電極,になると思います。
ワンポイント解説「1.アーク加熱」の通り,アーク炉においてアークを発生させるのは黒鉛電極と被溶解物である鉄くずや還元鉄の間となります。

(2)解答:リ
題意より解答候補は,(ハ)楕円,(ホ)直線,(ヘ)円,(チ)\( \ 2 \ \)乗曲線,(リ)半円,(ワ)\( \ 1 / 4 \ \)円,になると思います。
問題文の通り,交流炉の単純化された電気的等価回路は,アーク抵抗\( \ R \ \)と給電回路のリアクタンス\( \ X \ \)が直列接続されたものと表現できるので,電源電圧\( \ V \ \)とすると回路に流れる電流\( \ I \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
I &=& \frac {V}{\sqrt {R^{2}+X^{2}}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,有効電力\( \ P \ \)及び無効電力\( \ Q \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
P &=& RI^{2} \\[ 5pt ] &=& \frac {RV^{2}}{R^{2}+X^{2}} ・・・・・・・・・ ① \\[ 5pt ] Q &=& XI^{2} \\[ 5pt ] &=& \frac {XV^{2}}{R^{2}+X^{2}} ・・・・・・・・・ ② \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。②式を\( \ R \ \)について整理すると,
\[
\begin{eqnarray}
R^{2}+X^{2} &=& \frac {XV^{2}}{Q} \\[ 5pt ] R^{2} &=& \frac {XV^{2}}{Q}-X^{2} \\[ 5pt ] R&=& \sqrt {\frac {XV^{2}}{Q}-X^{2}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となるので,これを①に代入すれば,
\[
\begin{eqnarray}
P &=& \frac {\displaystyle \sqrt {\frac {XV^{2}}{Q}-X^{2}} V^{2}}{\displaystyle \frac {XV^{2}}{Q}} \\[ 5pt ] P &=& \frac {\displaystyle \sqrt {\frac {XV^{2}}{Q}-X^{2}} Q}{X} \\[ 5pt ] \frac {PX}{Q}&=& \sqrt {\frac {XV^{2}}{Q}-X^{2}} \\[ 5pt ] \frac {P^{2}X^{2}}{Q^{2}}&=& \frac {XV^{2}}{Q}-X^{2} \\[ 5pt ] P^{2}X^{2}&=& QXV^{2}-Q^{2}X^{2} \\[ 5pt ] P^{2}X^{2}+Q^{2}X^{2}-QXV^{2}&=&0 \\[ 5pt ] P^{2}+Q^{2}-\frac {QV^{2}}{X}&=&0 \\[ 5pt ] P^{2}+\left( Q-\frac {V^{2}}{2X}\right) -\left( \frac {V^{2}}{2X}\right) ^{2}&=&0 \\[ 5pt ] P^{2}+\left( Q-\frac {V^{2}}{2X}\right) &=&\left( \frac {V^{2}}{2X}\right) ^{2} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,\( \ P\gt 0 \ \)なので,有効-無効電力の変動軌跡は図2に示すような半円を描くことになります。(試験では暗記を前提として解答することになります。)

(3)解答:ワ
題意より解答候補は,(ハ)楕円,(ホ)直線,(ヘ)円,(チ)\( \ 2 \ \)乗曲線,(リ)半円,(ワ)\( \ 1 / 4 \ \)円,になると思います。
交流側の電流\( \ I \ \),交流側の電圧を\( \ V \ \),整流装置の制御角(点弧角)を\( \ \alpha \ \)とすると、有効電力\( \ P \ \)及び無効電力\( \ Q \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
P &∝& VI\cos \alpha \\[ 5pt ] Q &∝& VI\sin \alpha \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,\( \ \sin ^{2}\alpha +\cos ^{2}\alpha =1 \ \)なので,
\[
\begin{eqnarray}
\left( \frac {P}{VI}\right) ^{2}+\left( \frac {Q}{VI}\right) ^{2} &=& 一定 \\[ 5pt ] P^{2}+Q^{2} &=& 一定 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,\( \ P\gt 0 \ \)及び遅れ無効電力において有効-無効電力の変動軌跡は原点を中心とした\( \ 1 / 4 \ \)円を描くことになります。(こちらの空欄も試験では暗記を前提として解答することになります。)

(4)解答:ト
題意より解答候補は,(ロ)\( \ 33 \ \),(ト)\( \ 50 \ \),(ヲ)\( \ 20 \ \),になると思います。
(2),(3)及びワンポイント解説「2.交流アーク炉と直流アーク炉の比較」の通り,直流アーク炉の電力動揺の範囲は交流炉の\( \ 50 \ \mathrm {[%]} \ \)程度となります。

(5)解答:ル
題意より解答候補は,(イ)ピンチ効果,(ル)偏向,(カ)不平衡,になると思います。
ワンポイント解説「2.交流アーク炉と直流アーク炉の比較」の通り,直流アーク炉では,直流母線に流れる電流が作る磁場により,アーク偏向が発生することがあります。



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