《理論》〈電子理論〉[H29:問4] 半導体の電気伝導に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,半導体に光を照射した際に生じる電気伝導に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

長さ\( \ L \ \)の真性半導体試料に,上方から光を均一に照射したところ,場所によらず均一に,単位時間,単位体積当たり\( \ g \ \)個の電子-正孔対が生成した。ここで試料の厚さは十分薄く,光吸収に伴う厚さ方向の電子-正孔対密度の変化は無視できるものとする。
いま,熱平衡状態における試料の電子密度を\( \ n_{0} \ \),正孔密度を\( \ p_{0} \ \)とし,光照射により生成した電子密度の増加分を\( \ \Delta n \ \),正孔密度の増加分を\( \ \Delta p \ \)とするとき,\( \ \Delta n \ \)と\( \ \Delta p \ \)の大きさの関係を式で表すと,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)である。光照射により,生成した電子のうち,単位時間,単位体積当たり\( \ \displaystyle \frac {\Delta n}{\tau } \ \)個が正孔と再結合して消滅する場合を考える。この\( \ \tau \ \)は再結合までの時間の目安であり,\( \ \fbox {  (2)  } \ \)と呼ばれる。定常状態では電子-正孔対の生成と消滅の割合は釣り合うことから,\( \ \Delta n=\fbox {  (3)  } \ \)となる。
ここで図のように半導体試料の両端に電極を取り付け,電圧\( \ V \ \)を印加する。このとき,試料中には長さ方向に一様な電界\( \ E=\fbox {  (4)  } \ \)が発生し,電子と正孔は電界\( \ E \ \)からの力を受けて定常状態に達すると,\( \ E \ \)に比例したそれぞれ一定の平均速度で運動する。この比例定数を電子,正孔についてそれぞれ\( \ \mu _{\mathrm {e}} \ \),\( \ \mu _{\mathrm {h}} \ \)とし,正孔の電荷量を\( \ q \ \)とすると,この運動による電流密度を計算することができる。光照射時の電流密度から,光を照射していないときの電流密度を差し引いて,光生成キャリアのみによる電流密度の大きさを求めると,\( \ \fbox {  (5)  } \ \)となる。これは,太陽電池や光検出器の基本原理として広く応用されている。

〔問4の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& \frac {q\tau gV(\mu _{\mathrm {h}}-\mu _{\mathrm {e}})}{L}   &(ロ)& キャリア寿命   &(ハ)& \frac {g}{\tau } \\[ 5pt ] &(ニ)& \Delta n\Delta p =n_{0}p_{0}    &(ホ)& \frac {V}{2L}   &(ヘ)& \frac {V}{L} \\[ 5pt ] &(ト)& 緩和時間   &(チ)& \Delta n\Delta p = (n_{0}+p_{0})\sqrt {n_{0}p_{0}}   &(リ)& \frac {1}{\tau g} \\[ 5pt ] &(ヌ)& \frac {2V}{L}   &(ル)& \frac {q\tau gV(\mu _{\mathrm {h}}+\mu _{\mathrm {e}})}{L}   &(ヲ)& 回復時間 \\[ 5pt ] &(ワ)& \Delta n =\Delta p   &(カ)& \tau g   &(ヨ)& \frac {q\tau gV(\mu _{\mathrm {h}}-\mu _{\mathrm {e}})}{2L}
\end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

問題自体はそれほど難解ではないのですが,あまり一種では出題されて来なかった分野なので,苦戦を強いられた受験生も多かったと思います。ただし,二種では過去に類題が出題されていたことがありますので,二種の過去問もカバーしていれば解ける問題かと思います。

1.電気伝導に関する公式
電界\( \ E \ \)が加わっている電界中に正孔と電子があるとすると,正孔は電界と同方向に,電子は電界と反対方向に動きます。その時の正孔と電子の速度を\( \ v_{\mathrm {h}} \ \),\( \ v_{\mathrm {e}} \ \),正孔と電子の移動度を\( \ \mu _{\mathrm {h}} \ \),\( \ \mu_{\mathrm {e}} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
v_{\mathrm {h}}&=&\mu _{\mathrm {h}}E \\[ 5pt ] v_{\mathrm {e}}&=&\mu _{\mathrm {e}}E \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。ここで,正孔の電荷量が\( \ q \ \),電子の電荷量が\( \ -q \ \)で,正孔と電子の密度が\( \ p \ \),\( \ n \ \)であるとすると,正孔と電子の電流密度\( \ J_{\mathrm {h}} \ \),\(J_{\mathrm {e}} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
J_{\mathrm {h}}=qpv_{\mathrm {h}}=qp\mu _{\mathrm {h}}E \\[ 5pt ] J_{\mathrm {e}}=-qnv_{\mathrm {e}}=-qn\mu _{\mathrm {e}}E \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

【解答】

(1)解答:ワ
熱平衡状態における電子密度と正孔密度の増加分は等しいので,
\[
\begin{eqnarray}
\Delta n &=&\Delta p \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。

(2)解答:ロ
\( \ \tau \ \)は再結合までの時間の目安で,キャリア寿命を言います。

(3)解答:カ
定常状態において,電子-正孔対の生成量\( \ g \ \)と消滅量\( \ \displaystyle \frac {\Delta n}{\tau} \ \)は等しいので,
\[
\begin{eqnarray}
g&=&\frac {\Delta n}{\tau} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となるから,
\[
\begin{eqnarray}
\Delta n &=&\tau g \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(4)解答:ヘ
長さ\( \ L \ \)の試料にて電圧\( \ V \ \)を印加した時の電界\( \ E \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
E&=&\frac {V}{L} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。

(5)解答:ル
正孔と電子の光生成キャリアのみによる電流密度の大きさを\( \ \Delta J_{\mathrm {h}} \ \),\( \ \Delta J_{\mathrm {e}} \ \)とすると,ワンポイント解説「1.電気伝導に関する公式」より,
\[
\begin{eqnarray}
\Delta J_{\mathrm {h}} &=& q\Delta p v_{\mathrm {h}} \\[ 5pt ] &=& q\Delta n\mu _{\mathrm {h}}E \\[ 5pt ] &=& q\tau g\mu _{\mathrm {h}}\frac {V}{L}
\end{eqnarray}
\] \[
\begin{eqnarray}
\Delta J_{\mathrm {e}} &=& -q\Delta n v_{\mathrm {e}} \\[ 5pt ] &=& -q\tau g\mu _{\mathrm {e}}\frac {V}{L}
\end{eqnarray}
\] となる。よって,電流密度の大きさ\( \ \Delta J \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
\Delta J &=& \Delta J_{\mathrm {h}}-\Delta J_{\mathrm {e}} \\[ 5pt ] &=& q\tau g\mu _{\mathrm {h}}\frac {V}{L}+q\tau g\mu _{\mathrm {e}}\frac {V}{L} \\[ 5pt ] &=& \frac {q\tau gV(\mu _{\mathrm {h}}+\mu _{\mathrm {e}})}{L} \\[ 5pt ] \end{eqnarray} 
\] と求められる。



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