《電力》〈火力〉[H19:問2]汽力発電の基本サイクルであるランキンサイクルの効率に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

ある汽力発電所において,各部の汽水の温度及び単位質量当たりのエンタルピー(これを「比エンタルピー」という。)\( \ \mathrm {[kJ / kg]} \ \)が,下表の値であるとき,このランキンサイクルの効率\( \ \mathrm {[%]} \ \)の値として,最も近いのは次のうちどれか。

ただし,ボイラ,タービン,復水器以外での温度及びエンタルピーの増減は無視するものとする。


 (1) \( \ 34.9 \ \)  (2) \( \ 36.3 \ \)  (3) \( \ 39.1 \ \)  (4) \( \ 43.3 \ \)  (5) \( \ 53.6 \ \)

【ワンポイント解説】

ランキンサイクルの熱効率を考える問題です。
ボイラで得た蒸気がどれだけタービンで回収されたかを考えるとわかりやすいです。ただし,本問の効率はタービン室効率とほぼ同じで正確な発電端熱効率とは異なるので注意して下さい。
不要なデータが問題に掲載されているため,それに影響されないように自信を持って解いていく必要があります。

1.汽力発電所の各効率
汽力発電所で用いられる効率は以下の通りです。計算簡略化の為,すべて小数表記での計算となっています。効率の低下は燃料の使用量(支出)に影響するため,電力会社では熱効率が非常に重要なファクターとなっています。

①ボイラ効率\( \ \eta _{\mathrm {B}} \ \)
ボイラで燃料を燃焼し,給水を蒸気にする際の熱交換率の指標です。排ガス損失等があります。
\[
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {B}}&=&\frac {ボイラの蒸気として得た熱量}{燃料使用量から換算した熱量} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

②タービン室効率\( \ \eta _{\mathrm {T}} \ \)
タービンに入った蒸気がどの程度のタービン出力になるかの効率で,タービン室という名前はタービンと復水器を合わせた効率という意味です。一般的な汽力発電所では一番ロスが大きい場所となります。
\[
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {T}}&=&\frac {タービン軸出力}{タービンへ入る蒸気の熱量} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

③発電機効率\( \ \eta _{\mathrm {G}} \ \)
発電機の風損や巻線抵抗損等を考慮した効率で,一般的な水素発電機では\( \ \mathrm {98~99%} \ \)程度となっています。
\[
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {G}}&=&\frac {発電機出力}{タービン軸出力} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

④発電端効率\( \ \eta _{\mathrm {P}} \ \)
発電ユニットの効率を表すもので,燃料の熱量がどの程度発電されたかを示す指標です。
\[
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {P}}&=&\frac {発電機出力}{燃料使用量から換算した熱量}&=&\eta _{\mathrm {B}}\cdot \eta _{\mathrm {T}}\cdot \eta _{\mathrm {G}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

⑤送電端効率\( \ \eta _{\mathrm {S}} \ \)
発電端効率から所内率\( \ L \ \)を考慮し算出した効率で,発電所としての総合効率の指標となります。
\[
\begin{eqnarray}
\eta _{\mathrm {S}}&=&\eta _{\mathrm {P}}( 1-L ) \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【解答】

解答:(2)
ワンポイント解説「1.汽力発電所の各効率」の通り,ランキンサイクルの効率\( \ \eta \ \mathrm {[%]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
\eta &=&\frac {h_{1}-h_{2}}{h_{1}-h_{3}}\times 100 \\[ 5pt ] &=&\frac {3 \ 487-2 \ 270}{3 \ 487-138}\times 100 \\[ 5pt ] &≒&36.3 \ \mathrm {[%]}\\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。