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【問題】
【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)
水力発電に関する記述として,誤っているのは次のうちどれか。
(1) 水管を流れる水の物理的性質を示す式として知られるべルヌーイの定理は,力学的エネルギー保存の法則に基づく定理である。
(2) 水力発電所には,一般的に短時間で起動・停止ができる,耐周年数が長い,エネルギー変換効率が高いなどの特徴がある。
(3) 水力発電は昭和\( \ 30 \ \)年代前半までわが国の発電の主力であった。現在では,国産工ネルギ一活用の意義があるが,発電電力量の比率が小さいため,水力発電の電力供給面における役割は失われている。
(4) 河川の\( \ 1 \ \)日の流量を年間を通して流量の多いものから順番に配列して描いた流況曲線は,発電電力量の計画において重要な情報となる。
(5) 水力発電所は落差を得るための土木設備の構造により,水路式,ダム式,ダム水路式に分類される。
【ワンポイント解説】
水力発電所で適用される理論や水力発電の特徴に関する問題です。
近年は新エネルギー発電が普及し,出題時と比べても発電電力量の比率は変わってきていますが,水力発電は発電時に二酸化炭素を出さないので,地球環境との調和から近年も多く利用されている発電方式となります。
1.ベルヌーイの定理
水力発電所の水路において,流速\( \ v \ \mathrm {[m/s]} \ \),圧力\( \ p \ \mathrm {[Pa]} \ \),水の密度\( \ \rho \ \mathrm {[kg/m^{3}]} \ \),重力加速度\( \ g \ \mathrm {[m/s^{2}]} \ \)とすると,位置水頭は\( \ h \ \mathrm {[m]} \ \),圧力水頭は\( \ \displaystyle \frac {p}{\rho g} \ \mathrm {[m]} \ \),速度水頭は\( \ \displaystyle \frac {v^{2}}{2g} \ \mathrm {[m]} \ \)で表され,これらの総和はエネルギー保存則によりどの場所でも等しくなります。
\[
\begin{eqnarray}
h+\frac {p}{\rho g}+\frac {v^{2}}{2g}&=&一定 \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
2.水力発電所の取水方式
①水路式
下図のように,比較的自然勾配のある河川を取水ダムでせき止め,導水路と水圧管を経て落差を得て,水車へ水を送る方式です。
出典:尾上建夫;みんなが欲しかった!電験三種 電力の実践問題集 P.2,TAC出版
②ダム式
下図のように,ダムにより河川をせき止めることで生じる落差を利用して水車へ水を送る方式です。サージタンクが不要という特徴があります。
ダムの建設に両岸の頑丈な地盤が必須であり,水路式に比べると一般に建設コストが高くなります。
出典:尾上建夫;みんなが欲しかった!電験三種 電力の実践問題集 P.3,TAC出版
③ダム水路式
水路式とダム式を組み合わせたような方式で,ダムで貯水した水を導水路で落差が得られる地点まで導き,その後水車へ水を送る方式です。
【解答】
解答:(3)
(1)正しい
ワンポイント解説「1.ベルヌーイの定理」の通り,ベルヌーイの定理は力学的エネルギー保存の法則に基づく定理です。
(2)正しい
問題文の通り,水力発電所は一般的に短時間で起動・停止ができる,耐用年数が長い,エネルギー変換効率が高いなどの特徴があります。
(3)誤り
問題文の通り,水力発電は昭和\( \ 30 \ \)年代前半まで発電の主力でしたが,その後火力発電が主力となり,現在はエネルギーの安定供給と経済性及び地球環境への貢献の観点から多様な発電方式が運用されています。水力発電も再生可能エネルギーに分類され,純国産エネルギーとしてその一旦を担っていますので,電力供給面における役割は失われていません。詳しくは電力調査統計等に掲載されていますので,最新のものを確認しておいて下さい。
(4)正しい
問題文の通り,河川の\( \ 1 \ \)日の流量を,年間を通して流量の多いものから順番に配列して描いたものを流況曲線といい,発電電力量の計画において重要な情報となります。電験1種平成25年電力管理科目問1に流況曲線の出題がされていますので,どういうものか確認したい場合は確認しておくと良いかと思います。
(5)正しい
ワンポイント解説「2.水力発電所の取水方式」の通り,水力発電所は落差を得るための土木設備の構造により,水路式,ダム式,ダム水路式に分類されます。