《電力》〈水力〉[R06上:問15]水車の回転速度と比速度及び水車の種類に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★★★(難しい)

水車の種類,回転速度と比速度の関係について,次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a) ある水車を有効落差\( \ 200 \ \mathrm {m} \ \),水車出力\( \ 85 \ 000 \ \mathrm {kW} \ \)で運転するときの水車の比速度が\( \ 100 \ \mathrm {m\cdot kW} \ \)であった。このときの水車の回転速度とこの水車に対し一般に用いられる水車の種類との組合せとして,最も適切なものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[
\begin{array}{ccc}
& 水車の種類 & 回転速度 \ \mathrm {[{min}^{-1}]} \\
\hline
(1) &  フランシス水車  &  217  \\
\hline
(2) &  カプラン水車  &  217  \\
\hline
(3) &  カプラン水車  &  258  \\
\hline
(4) &  フランシス水車  &  258  \\
\hline
(5) &  ペルトン水車  &  258  \\
\hline
\end{array}
\]

(b) この水車を同期発電機と直結し,\( \ 50 \ \mathrm {Hz} \ \)の電力系統に接続して,同様に有効落差\( \ 200 \ \mathrm {m} \ \),水車出力\( \ 85 \ 000 \ \mathrm {kW} \ \)で運転する場合,小問(a)の回転速度に最も近い回転速度で運転できる同期発電機の磁極数とそのときの回転速度による比速度の組合せとして,最も適切なものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[
\begin{array}{ccc}
& 磁極数 & 比速度 \ \mathrm {[m\cdot kW]} \\
\hline
(1) &  28  &  83  \\
\hline
(2) &  28  &  97  \\
\hline
(3) &  26  &  89  \\
\hline
(4) &  24  &  83  \\
\hline
(5) &  24  &  97  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

水車の比速度,回転速度,磁極数に関する問題です。
これまで\( \ 3 \ \)種では比速度に関する問題は少なかったこと,また,回転速度から水車の種類を特定する知識は求められなかったことから,受験生にとっては大変厳しい問題であったかと思います。
比速度の定義式及び計算方法等,この問題でマスターしておくようにしましょう。

1.三相同期発電機の同期速度\( \ N_{\mathrm {s}} \ \)
三相同期発電機の極数が\( \ p \ \),電源の周波数が\( \ f \ \mathrm {[Hz]} \ \)の時,同期速度\( \ N_{\mathrm {s}} \ \mathrm {[{min}^{-1}]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
N_{\mathrm {s}} &=&\frac {120f}{p} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。同期機は同期速度で回転します。

2.比速度の定義
水車の形状を相似に保ったまま大きさを小さくし,\( \ 1 \ \mathrm {m} \ \)の有効落差で\( \ 1 \ \mathrm {kW} \ \)の出力を発生するときの回転速度を言います。定格回転数を\( \ n \ \mathrm {[min^{-1}]} \ \),水車の出力を\( \ P \ \mathrm {[kW]} \ \),有効落差を\( \ H \ \mathrm {[m]} \ \)とすると,比速度\( \ n_{\mathrm {s}} \ \mathrm {[m\cdot kW]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
n_{\mathrm {s}} &=&n \cdot \frac {\displaystyle P^{\frac {1}{2}}}{\displaystyle H^{\frac {5}{4}}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

3.各水車の落差と比速度の関係
各水車の落差と比速度の関係は下表の通りとなり,一般に高落差の物ほど比速度は小さくなります。
\[
\begin{array}{|c|c|c|}
\hline
& 落差 \ \mathrm {[m]} & 比速度 \ \mathrm {[m\cdot kW]} \\
\hline
ペルトン水車 &  150 ~ 800  &  小  \\
\hline
フランシス水車 &  40 ~ 500  &  小~中  \\
\hline
{\displaystyle 斜流水車}\atop {\displaystyle (デリア水車)} &  40 ~ 180  &  中~大  \\
\hline
{\displaystyle プロペラ水車}\atop {\displaystyle (カプラン水車)} &  5 ~ 80  &  中~大  \\
\hline
\end{array}
\]

【解答】

(a)解答:(4)
水車出力\( \ P=85 \ 000 \ \mathrm {[kW]} \ \),有効落差\( \ H=200 \ \mathrm {[m]} \ \),比速度\( \ n_{\mathrm {s}}=100 \ \mathrm {[m\cdot kW]} \ \)なので,回転速度\( \ n \ \mathrm {[min^{-1}]} \ \)は,ワンポイント解説「2.比速度の定義」の通り,
\[
\begin{eqnarray}
n_{\mathrm {s}} &=&n \cdot \frac {\displaystyle P^{\frac {1}{2}}}{\displaystyle H^{\frac {5}{4}}} \\[ 5pt ] n &=&n_{\mathrm {s}} \cdot \frac {\displaystyle H^{\frac {5}{4}}}{\displaystyle P^{\frac {1}{2}}} \\[ 5pt ] &=&100\times \frac {\displaystyle 200^{\frac {5}{4}}}{\displaystyle 85 \ 000^{\frac {1}{2}}} \\[ 5pt ] &=&100\times \frac {\left( \sqrt {\sqrt {200}}\right) ^{5}}{\sqrt {85 \ 000}} \\[ 5pt ] &≒&258.0 \ \mathrm {[min^{-1}]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められ,有効落差\( \ H=200 \ \mathrm {[m]} \ \)より,水車の種類として適切なのはフランシス水車となる。

(比速度には水車ごとに限界値があり,本問の条件ではペルトン水車は比速度をもっと小さくする必要があります。)

(b)解答:(5)
(a)の条件において,周波数\( \ f=50 \ \mathrm {[Hz]} \ \)なので,磁極数\( \ p \ \)は,ワンポイント解説「1.三相同期発電機の同期速度\( \ N_{\mathrm {s}} \ \)」の通り,
\[
\begin{eqnarray}
n &=&\frac {120f}{p} \\[ 5pt ] p &=&\frac {120f}{n} \\[ 5pt ] &=&\frac {120\times 50}{258.0} \\[ 5pt ] &≒&23.3 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] なので,最も近いのは\( \ p=24 \ \)と求められる。このときの回転速度(同期速度)\( \ n^{\prime } \ \mathrm {[min^{-1}]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
n^{\prime } &=&\frac {120f}{p} \\[ 5pt ] &=&\frac {120\times 50}{24} \\[ 5pt ] &=&250 \ \mathrm {[min^{-1}]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。したがって,比速度\( \ n_{\mathrm {s}}^{\prime } \ \mathrm {[m\cdot kW]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
n_{\mathrm {s}} &=&n^{\prime } \cdot \frac {\displaystyle P^{\frac {1}{2}}}{\displaystyle H^{\frac {5}{4}}} \\[ 5pt ] &=&250 \cdot \frac {\displaystyle 85 \ 000^{\frac {1}{2}}}{\displaystyle 200^{\frac {5}{4}}} \\[ 5pt ] &=&250\times \frac {\sqrt {85 \ 000}}{\left( \sqrt {\sqrt {200}}\right) ^{5}} \\[ 5pt ] &≒&97 \ \mathrm {[m\cdot kW]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。