《法規》〈電気施設管理〉[H30:問12]送電線の電圧降下に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

図のように電源側\(\mathrm {S}\)点から負荷点\(\mathrm {A}\)を経由して負荷点\(\mathrm {B}\)に至る線路長\( \ L \ \mathrm {[km]} \ \)の三相3線式配電線路があり,\(\mathrm {A}\)点,\(\mathrm {B}\)点で図に示す負荷電流が流れているとする。\(\mathrm {S}\)点の線間電圧を\( \ 6600 \ \mathrm {V} \),配電線路の\(1\)線当たりの抵抗を\( \ 0.32 \ \mathrm {\Omega /km} \ \),リアクタンスを\( \ 0.2 \ \mathrm {\Omega /km} \ \)とするとき,次の(a)及び(b)の問に答えよ。

ただし,計算においては\(\mathrm {S}\)点,\(\mathrm {A}\)点及び\(\mathrm {B}\)点における電圧の位相差が十分小さいとの仮定に基づき適切な近似式を用いるものとする。

(a) \(\mathrm {A} – \mathrm {B}\)間の線間電圧降下を\(\mathrm {S}\)点線間電圧の\(1%\)としたい。このときの\(\mathrm {A} – \mathrm {B}\)間の線路長の値\([\mathrm {km}]\)として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 (1) \(0.39\)  (2) \(0.67\)  (3) \(0.75\)  (4) \(1.17\)  (5) \(1.30\)

(b) \(\mathrm {A} – \mathrm {B}\)間の線間電圧降下を\(\mathrm {S}\)点線間電圧の\(1%\)とし,\(\mathrm {B}\)点線間電圧を\(\mathrm {S}\)点線間電圧の\(96%\)としたときの線路長\(L\)の値\([\mathrm {km}]\)として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 (1) \(2.19\)  (2) \(2.44\)  (3) \(2.67\)  (4) \(3.79\)  (5) \(4.22\)

【ワンポイント解説】

電圧降下の近似式を用いて,線路長を求める比較的過去問でも出題されやすい問題です。電圧降下の式の\(\sqrt {3}\)は非常に計算忘れしやすい係数なので,注意するようにしましょう。

1.送電線の電圧降下の近似式
①単相回路の電圧降下
図1のような回路において,ベクトル図を描くと図2のようになります。
図2のベクトル図において,\(\dot E \)と\(\dot V\)の位相差が十分に小さいと仮定すると,線路の電圧降下\(\varepsilon =E-V\)は,
\[
\begin{eqnarray}
E&≃&V+RI\cos \theta +XI\sin \theta \\[ 5pt ] E-V&=&RI\cos \theta +XI\sin \theta \\[ 5pt ] \varepsilon &=&I\left( R\cos \theta +X\sin \theta \right) \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められます。


②三相3線式送電線の電圧降下
三相回路においても,電圧を\( \ \displaystyle \frac {1}{\sqrt {3}} \ \)倍すれば,一相分の等価回路及びベクトル図は図1及び図2と同様にに描くことができ,三相分の電圧降下\(\varepsilon \)は,
\[
\begin{eqnarray}
\varepsilon &=&\sqrt {3}I\left( R\cos \theta +X\sin \theta \right) \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められます。

※従って本問においては\(\sqrt {3}\)の計算忘れに注意が必要です。

【解答】

(a)解答:(2)
題意より,\(\mathrm {A} – \mathrm {B}\)間の線間電圧降下を\(\mathrm {S}\)点線間電圧の\(1%\)とするので,点\(\mathrm {A} – \mathrm {B}\)間の電圧降下\(\varepsilon _{\mathrm {AB}}\)は,
\[
\begin{eqnarray}
\varepsilon _{\mathrm {AB}} &=&6600\times 0.01 \\[ 5pt ] &=&66 \ \mathrm {[V]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。力率\(\cos \theta =0.85\)であるから,
\[
\begin{eqnarray}
\sin \theta &=&\sqrt {1-\cos ^{2}\theta} \\[ 5pt ] &=&\sqrt {1-0.85 ^{2}} \\[ 5pt ] &≒&0.52678 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となるので,ワンポイント解説「1.送電線の電圧降下の近似式」より,点\(\mathrm {A} – \mathrm {B}\)間の線路長を\(L_{\mathrm {AB}}\)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
\varepsilon _{\mathrm {AB}} &=&\sqrt {3}I_{\mathrm {AB}}\left( R\cos \theta +X\sin \theta \right) \\[ 5pt ] 66 &=&\sqrt {3}\times 150\times \left( 0.32\times L_{\mathrm {AB}} \times 0.85 +0.20\times L_{\mathrm {AB}} \times 0.52678 \right) \\[ 5pt ] 66 &≒&\sqrt {3}\times 150\times 0.37736 L_{\mathrm {AB}} \\[ 5pt ] L_{\mathrm {AB}}&≒&0.67319 → 0.67 \ \mathrm {[km]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(b)解答:(1)
題意より,\(\mathrm {S} – \mathrm {A}\)間の線間電圧降下は\(\mathrm {S}\)点線間電圧の\(3%\)となるので,点\(\mathrm {S} – \mathrm {A}\)間の電圧降下\(\varepsilon _{\mathrm {SA}}\)は,
\[
\begin{eqnarray}
\varepsilon _{\mathrm {SA}} &=&6600\times 0.03 \\[ 5pt ] &=&198 \ \mathrm {[V]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。(1)と同様に点\(\mathrm {S} – \mathrm {A}\)間の線路長を\(L_{\mathrm {SA}}\)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
\varepsilon _{\mathrm {SA}} &=&\sqrt {3}I_{\mathrm {SA}}\left( R\cos \theta +X\sin \theta \right) \\[ 5pt ] 198 &=&\sqrt {3}\times \left( 50+150\right) \times \left( 0.32\times L_{\mathrm {SA}} \times 0.85 +0.20\times L_{\mathrm {SA}} \times 0.52678 \right) \\[ 5pt ] 198 &≒&\sqrt {3}\times 200\times 0.37736 L_{\mathrm {SA}} \\[ 5pt ] L_{\mathrm {SA}}&≒&1.5147 \ \mathrm {[km]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となるので,線路長\(L\)は,
\[
\begin{eqnarray}
L &=&L_{\mathrm {SA}}+L_{\mathrm {AB}} \\[ 5pt ] &=&1.5147+0.67319 \\[ 5pt ] &≒&2.1879 → 2.19 \ \mathrm {[km]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。