《法規》〈電気設備技術基準〉[R4下:問11]高圧架空電線の引張強さに関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

高圧架空電線において,電線に硬銅線を使用して架設する場合,電線の設計に伴う許容引張荷重と弛度について,次の(a)及び(b)の問に答えよ。

ただし,径間\( \ S \ \mathrm {[m]} \ \),電線の引張強さ\( \ T \ \mathrm {[kN]} \ \),電線の重量による垂直荷重と風圧による水平荷重の合成荷重が\( \ W \ \mathrm {[kN / m]} \ \)とする。

(a) 「電気設備技術基準の解釈」によれば,規定する荷重が加わる場合における電線の引張強さに対する安全率が,\( \ R \ \)以上となるような弛度に施設しなければならない。この場合\( \ R \ \)の値として,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 (1) \( \ 1.5 \ \)  (2) \( \ 1.8 \ \)  (3) \( \ 2.0 \ \)  (4) \( \ 2.2 \ \)  (5) \( \ 2.5 \ \)

(b) 弛度の計算において,最小の弛度を求める場合の許容引張荷重\( \ \mathrm {[kN]} \ \)として,正しい式を次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 (1) \( \ \displaystyle \frac {T}{R} \ \)  (2) \( \ T\times R \ \)  (3) \( \ \displaystyle S\times \frac {W}{R} \ \)

 (4) \( \ S\times W\times R \ \)  (5) \( \ \displaystyle \frac {T+S\times W}{R} \ \)

【ワンポイント解説】

電気設備の技術基準の解釈第66条とその知識を利用した問題です。
不要な情報が「ただし,~」にあるため,難易度以上に多くの受験生が困惑したであろうと予想されます。本問のように不必要な情報が与えられる問題も電験では出題されますので,しっかりとした知識を持って自信を持って解くことが重要となります。

1.電線の許容引張荷重
電気設備の技術基準の解釈第66条において,許容引張荷重は電線の引張強さから安全率を加味して選定するように規定されていて,
\[
\begin{eqnarray}
許容引張荷重 &=&\frac {電線の引張強さ}{安全率} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] の関係があります。

【解答】

(a)解答:(4)
電気設備の技術基準の解釈第66条66-1表の通り,硬銅線の引張強さに対する安全率は\( \ 2.2 \ \)以上とする必要があります。

(b)解答:(1)
電線の引張強さ\( \ T \ \mathrm {[kN]} \ \),安全率\( \ R \ \)とすれば,許容引張荷重\( \ W_{\mathrm {m}} \ \mathrm {[kN]} \ \)は,ワンポイント解説「1.電線の許容引張荷重」の通り,
\[
\begin{eqnarray}
W_{\mathrm {m}} &=&\frac {T}{R} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] で求められます。

<電気設備の技術基準の解釈第66条(抜粋)>
高圧架空電線は、ケーブルである場合を除き、次の各号に規定する荷重が加わる場合における引張強さに対する安全率が、66-1表に規定する値以上となるような弛度により施設すること。

一 荷重は、電線を施設する地方の平均温度及び最低温度において計算すること。

二 荷重は、次に掲げるものの合成荷重であること。

 イ 電線の重量

 ロ 次により計算した風圧荷重

  (イ) 電線路に直角な方向に加わるものとすること。

  (ロ) 平均温度において計算する場合は高温季の風圧荷重とし、最低温度において計算する場合は低温季の風圧荷重とすること。

 ハ 乙種風圧荷重を適用する場合にあっては、被氷荷重

            66-1表
\[
\begin{array}{|c|c|}
\hline
 電線の種類  &  安全率  \\
\hline
 硬銅線又は耐熱銅合金線  &     \color {red}{\underline {2.2}}  \\
\hline
 その他  &     2.5  \\
\hline
\end{array}
\]