《法規》〈電気施設管理〉[R06上:問10]配電用遮断器及び需要家の開閉器の役割に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

図はある配電用変電所の送り出し遮断器\( \ \mathrm {A} \ \)から需要家構内の主遮断器までの電路を表したものである。図中に\(\boldsymbol {\Large{ \times }}\)印で示した地点で短絡事故が発生した場合の遮断器\( \ \mathrm {A} \ \)と,区分開閉器\( \ \mathrm {B} \ \)\(\left( \ \mathrm {SOG} \right. \ \)機能付\(\left. \ \mathrm {PAS} \ \right) \ \)の動作の記述として,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

ただし,遮断器\( \ \mathrm {A} \ \)の配電系統及びこれに接続する全ての需要家構内に分散型電源は無いものとする。

なお,本問で\( \ \mathrm {SOG} \ \)機能付\( \ \mathrm {PAS} \ \)とは,過電流蓄勢トリップ付地絡トリップ形トリップ装置付過電流ロック形高圧気中負荷開閉器をいう。

 (1) \( \ \mathrm {A} \ \)が開路したのち,\( \ \mathrm {B} \ \)が開路し,その後\( \ \mathrm {A} \ \)が閉路する。

 (2) \( \ \mathrm {B} \ \)が開路したのち,\( \ \mathrm {A} \ \)が開路し,その後\( \ \mathrm {A} \ \)が閉路する。

 (3) \( \ \mathrm {A} \ \)と\( \ \mathrm {B} \ \)が同時に開路し,その後\( \ \mathrm {A} \ \)が閉路する。

 (4) \( \ \mathrm {A} \ \)が開路する。(\( \ \mathrm {B} \ \)は開路しない。)

 (5) \( \ \mathrm {B} \ \)が開路する。(\( \ \mathrm {A} \ \)は開路しない。)

【ワンポイント解説】

配電用変電所の遮断器と需要家の区分開閉器の保護協調に関する問題です。
問題文の最後で「\( \ \mathrm {SOG} \ \)機能付\( \ \mathrm {PAS} \ \)とは,過電流蓄勢トリップ付地絡トリップ形トリップ装置付過電流ロック形高圧気中負荷開閉器をいう。」となっているので,一見短絡電流を遮断できると勘違いしてしまいそうですが,基本的に\( \ \mathrm {PAS} \ \)には短絡電流のような大きな事故電流を遮断できる機能はありませんので注意して下さい。

1.遮断器,開閉器,断路器
断路器,開閉器,遮断器はいずれも開閉設備ですが,用途が異なるためそれぞれの遮断できる電流値が異なります。
電験では細かな構造等は出題されませんが,その違いを理解しておくようにしましょう。
①遮断器
電路の開閉を行う装置の中で,最も大きな電流を開閉できる装置です。
通常運転時の電流のみでなく,短絡・地絡事故時に発生する故障電流を遮断して,事故箇所を切り離す役割があります。
電路開閉時にアークが発生するため,アークを消弧する機能を有し,その方法により,ガス遮断器,真空遮断器,空気遮断器,油遮断器,磁気遮断器等があります。
現在は\( \ \mathrm {SF_{6}} \ \)ガスをアークに吹き付け消弧するガス遮断器と真空バルブ内でアークを拡散させて消弧する真空遮断器が主流であり,電験でも出題が多いのはガス遮断器真空遮断器に関する内容です。

②開閉器
通常運転時の負荷電流は遮断することは可能ですが,事故時の故障電流は遮断することができない開閉装置です。
発変電所等の特別高圧ではなく,配電線路での開閉に使用されることが多い設備です。
気中開閉器\( \ \left( \mathrm {PAS} \right) \ \)や真空開閉器\( \ \left( \mathrm {VCS} \right) \ \),ガス開閉器\( \ \left( \mathrm {PGS} \right) \ \)等があります
電験では配電の内容である,高圧カットアウトや区分開閉器に関する問題が出題されることが多いです。

③断路器
通電時には開閉できず,電流が流れていないときに開閉可能な開閉装置です。ただし,変圧器の励磁電流等の小さな電流は開閉することが可能です。
電路の保守作業を行う際等に作業箇所を切り離すために開閉することが多いです。
遮断器とセットで使用されることが多く,送電停止時には遮断器を開放してから断路器を開放し,送電開始時には断路器を投入してから遮断器を投入します。

2.\( \ \mathrm {SOG} \ \)機能付\( \ \mathrm {PAS} \ \)
一般送配電事業者と需要家との責任分界点に設ける\( \ \mathrm {SOG} \ \)機能付高圧気中負荷開閉器をいいます。
需要家構内で短絡事故が発生した際には,配電用変電所の遮断器が動作しますが,その際に無電圧を検知した上で\( \ \mathrm {PAS} \ \)を開放・ロックします。
需要家構内で地絡事故が発生した際には,配電用変電所の遮断器が動作する前に,\( \ \mathrm {PAS} \ \)を開放・ロックします。

\( \ \mathrm {SOG} \ \)は\( \ \mathrm {Storage \ Over \ current \ Ground} \ \)の略で過電流蓄勢・地絡,\( \ \mathrm {PAS} \ \)は\( \ \mathrm {Pole \ Air \ Switch} \ \)の略で高圧気中負荷開閉器となります。

【解答】

解答:(1)
ワンポイント解説「2.\( \ \mathrm {SOG} \ \)機能付\( \ \mathrm {PAS} \ \)」の通り,短絡事故が発生した場合には,まずは遮断器\( \ \mathrm {A} \ \)が開路したのち,\( \ \mathrm {B} \ \)が開路し,その後\( \ \mathrm {A} \ \)が閉路して,事故が発生した需要家以外の需要家には再び安全に電力を供給することになります。