《機械》〈直流機〉[H21:問1]各直流発電機の特性に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

直流発電機に関する記述として,正しいのは次のうちどれか。

(1) 直巻発電機は,負荷を接続しなくても電圧の確立ができる。

(2) 平複巻発電機は,全負荷電圧が無負荷電圧と等しくなるように(電圧変動率が零になるように)直巻巻線の起磁力を調整した発電機である。

(3) 他励発電機は,界磁巻線の接続方向や電機子の回転方向によっては電圧の確立ができない場合がある。

(4) 分巻発電機は,負荷電流によって端子電圧が降下すると,界磁電流が増加するので,他励発電機より負荷による電圧変動が小さい。

(5) 分巻発電機は,残留磁気があれば分巻巻線の接続方向や電機子の回転方向に関係なく電圧の確立ができる。

【ワンポイント解説】

タービン発電機で採用されている水素冷却方式に関する問題です。
発電機の冷却媒体として水素は空気より優れた性能を有するため,火力発電所では多くのタービン発電機に採用されています。

1.他励発電機及び電動機の等価回路と特性
他励発電機の等価回路を図1-1,他励電動機の等価回路を図1-2に示します。ただし,図において,\( \ E \ \mathrm {[V]} \ \)は誘導起電力(電動機の場合は逆起電力),\( \ V \ \mathrm {[V]} \ \)は端子電圧,\( \ I_{\mathrm {a}} \ \mathrm {[A]} \ \)は電機子電流,\( \ I_{\mathrm {f}} \ \mathrm {[A]} \ \)は界磁電流,\( \ R_{\mathrm {a}} \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)は電機子抵抗,\( \ R_{\mathrm {f}} \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)は界磁抵抗です。
界磁回路が別電源で励磁されているのが特徴です。図を見て分かる通り,発電機も電動機もほぼ同じ等価回路となります。
磁束を\( \ \phi \ \mathrm {[Wb]} \ \),回転速度を\( \ N \ \mathrm {[{min}^{-1}]} \ \)とすると,\( \ \phi ∝ I_{\mathrm {f}} \ \)となるので,誘導起電力(逆起電力)\( \ E \ \mathrm {[V]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
E &=&k_{\mathrm {e}}\phi N \\[ 5pt ] &=&k_{\mathrm {e}}^{\prime } I_{\mathrm {f}} N \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。またトルク\( \ T \ \mathrm {[N\cdot m]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
T &=&k_{\mathrm {f}}\phi I_{\mathrm {a}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

2.分巻発電機及び電動機の等価回路と特性
分巻発電機の等価回路を図2-1,分巻電動機の等価回路を図2-2に示します。ただし,図において,\( \ E \ \mathrm {[V]} \ \)は誘導起電力(電動機の場合は逆起電力),\( \ V \ \mathrm {[V]} \ \)は端子電圧,\( \ I_{\mathrm {a}} \ \mathrm {[A]} \ \)は電機子電流,\( \ I_{\mathrm {f}} \ \mathrm {[A]} \ \)は界磁電流,\( \ R_{\mathrm {a}} \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)は電機子抵抗,\( \ R_{\mathrm {f}} \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)は界磁抵抗です。
界磁を同じ電源から得る自励式ですが,界磁回路が電機子回路に並列に接続されているのが特徴です。
磁束を\( \ \phi \ \mathrm {[Wb]} \ \),回転速度を\( \ N \ \mathrm {[{min}^{-1}]} \ \)とすると,\( \ \phi ∝ I_{\mathrm {f}} \ \)となるので,誘導起電力(逆起電力)\( \ E \ \mathrm {[V]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
E &=&k_{\mathrm {e}}\phi N \\[ 5pt ] &=&k_{\mathrm {e}}^{\prime } I_{\mathrm {f}} N \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。またトルク\( \ T \ \mathrm {[N\cdot m]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
T &=&k_{\mathrm {f}}\phi I_{\mathrm {a}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

3.直巻発電機及び電動機の等価回路と特性
直巻発電機の等価回路を図3-1,直巻電動機の等価回路を図3-2に示します。分巻発電機の時と同様に,\( \ E \ \mathrm {[V]} \ \)は誘導起電力(電動機の場合は逆起電力),\( \ V \ \mathrm {[V]} \ \)は端子電圧,\( \ I_{\mathrm {a}} \ \mathrm {[A]} \ \)は電機子電流,\( \ I_{\mathrm {f}} \ \mathrm {[A]} \ \)は界磁電流,\( \ R_{\mathrm {a}} \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)は電機子抵抗,\( \ R_{\mathrm {f}} \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)は界磁抵抗です。
分巻は電機子回路と界磁回路が並列なのに対し,直巻は界磁回路が直列である特徴があります。
磁束を\( \ \phi \ \mathrm {[Wb]} \ \),回転速度を\( \ N \ \mathrm {[{min}^{-1}]} \ \)とすると,\( \ \phi ∝ I_{\mathrm {f}}=I_{\mathrm {a}} \ \)となるので,誘導起電力(逆起電力)\( \ E \ \mathrm {[V]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
E &=&k_{\mathrm {e}}\phi N \\[ 5pt ] &=&k_{\mathrm {e}}^{\prime } I_{\mathrm {f}} N \\[ 5pt ] &=&k_{\mathrm {e}}^{\prime } I_{\mathrm {a}} N \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。またトルク\( \ T \ \mathrm {[N\cdot m]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
T &=&k_{\mathrm {f}}\phi I_{\mathrm {a}} \\[ 5pt ] &=&k_{\mathrm {f}}^{\prime } I_{\mathrm {a}}^{2} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,トルクが電機子電流の\( \ 2 \ \)乗に比例するという特徴があります。

【解答】

解答:(2)
(1)誤り
ワンポイント解説「3.直巻発電機及び電動機の等価回路と特性」図3-1の通り,直巻発電機は,界磁回路が直列に接続されているため,負荷を接続しないと界磁電流が流れず電圧の確立ができません。

(2)正しい
複巻発電機(内分巻)の等価回路は図4のような回路であり,問題文の通り,平複巻発電機は,全負荷電圧が無負荷電圧と等しくなるように(電圧変動率が零になるように)直巻巻線の起磁力を調整した発電機となります。

(3)誤り
ワンポイント解説「1.他励発電機及び電動機の等価回路と特性」の通り,他励発電機は,界磁巻線が分かれているため,界磁巻線の接続方向や電機子の回転方向に関係なく電圧の確立は可能です。

(4)誤り
ワンポイント解説「2.分巻発電機及び電動機の等価回路と特性」の通り,負荷電流によって端子電圧が降下すると,オームの法則により界磁電流が減少するので,他励発電機より負荷による電圧変動が大きいです。

(5)誤り
分巻発電機は,残留磁気があれば分巻巻線の接続方向や電機子の回転方向によっては電圧が確立できる場合がありますが,界磁電流の界磁磁束が打ち消す方向である場合には電圧の確立はできません。