《機械》〈電動機応用〉[H22:問11]エレベータの昇降に使用する電動機の出力に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

エレベータの昇降に使用する電動機の出力\( \ P \ \)を求めるためには,昇降する実質の質量を\( \ M \ \mathrm {[kg]} \ \),一定の昇降速度を\( \ v \ \mathrm {[m / min]} \ \),機械効率を\( \ \eta \ \mathrm {[%]} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
P &=&9.8\times M\times \frac {v}{60}\times \ \fbox {  (ア)  } \ \times 10^{-3} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。ただし,出力\( \ P \ \)の単位は\( \ \mathrm {[ \ \fbox {  (イ)  } \ ]} \ \)であり,加速に要する動力及びロープの質量は無視している。

昇降する実質の質量\( \ M \ \mathrm {[kg]} \ \)は,かご質量\( \ M_{\mathrm {C}} \ \mathrm {[kg]} \ \)と積載質量\( \ M_{\mathrm {L}} \ \mathrm {[kg]} \ \)とのかご側合計質量と,釣合いおもり質量\( \ M_{\mathrm {B}} \ \mathrm {[kg]} \ \)との\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)から決まる。定格積載質量を\( \ M_{\mathrm {n}} \ \mathrm {[kg]} \ \)とすると,平均的に電動機の必要トルクが\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)なるように,釣合いおもり質量\( \ M_{\mathrm {B}} \ \mathrm {[kg]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
M_{\mathrm {B}} &=&M_{\mathrm {C}}+\alpha \times M_{\mathrm {n}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] とする。 ただし,\( \ \alpha \ \)は\( \ \displaystyle \frac {1}{3}~\frac {1}{2} \ \)程度に設計されることが多い。

電動機は,負荷となる質量\( \ M \ \mathrm {[kg]} \ \)を上昇させるときは力行運転,下降させるときは回生運転となる。 したがって,乗客がいない(積載質量がない)かごを上昇させるときは\( \ \fbox {  (オ)  } \ \)運転となる。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる語句,式又は単位として,正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
\[
\begin{array}{cccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) & (オ) \\
\hline
(1) &  \displaystyle \frac {100}{\eta }  &  \mathrm {kW}  &  差  &  小さく  &  力 行  \\
\hline
(2) &  \displaystyle \frac {\eta }{100}  &  \mathrm {kW}  &  和  &  大きく  &  力 行  \\
\hline
(3) &  \displaystyle \frac {100}{\eta }  &  \mathrm {kW}  &  差  &  小さく  &  回 生  \\
\hline
(4) &  \displaystyle \frac {\eta }{100}  &  \mathrm {W}  &  差  &  小さく  &  力 行  \\
\hline
(5) &  \displaystyle \frac {100}{\eta }  &  \mathrm {W}  &  和  &  大きく  &  回 生  \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

昇降式エレベータに関する問題です。
昇降式エレベータの問題はパターンが決まっていることが多いため,過去問をしっかりと取り組んでおけば,試験本番でも得点源となります。
本問に関しては図が一切与えられていないので,図1のような図を描くと良いかと思います。

1.動力\( \ P \ \mathrm {[W]} \ \)と力\( \ F \ \mathrm {[N]} \ \)の関係
仕事の定義より,力\( \ F \ \mathrm {[N]} \ \)で\( \ l \ \mathrm {[m]} \ \)運ぶのに必要な仕事量\( \ W \ \mathrm {[J]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
W &=& Fl \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であり,単位時間当たりの仕事量が動力\( \ P \ \mathrm {[W]} \ \)であるから,一定の動力で\( \ W \ \mathrm {[J]} \ \)の仕事をするのに\( \ t \ \mathrm {[s]} \ \)かかったとすると,
\[
\begin{eqnarray}
P &=& \frac {Fl}{t} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。上式において\( \ \displaystyle \frac {l}{t} \ \)は速度\( \ v \ \mathrm {[m / s]} \ \)に等しいので,
\[
\begin{eqnarray}
P &=& Fv \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。この式は公式として覚えておきましょう。

2.昇降式エレベータの必要動力
かごの質量\( \ M_{1} \ \mathrm {[kg]} \ \),積載質量\( \ M_{2} \ \mathrm {[kg]} \ \),釣合いおもりの質量\( \ M_{3} \ \mathrm {[kg]} \ \)とすると,上昇させるのに必要な力\( \ F \ \mathrm {[N]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
F &=& \left( M_{1}+M_{2}-M_{3}\right) g \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。機械効率を\( \ \eta \ \)とすれば,速度\( \ v \ \mathrm {[m / s]} \ \)で上昇させるのに必要な電動機の出力\( \ P \ \mathrm {[W]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
P\eta &=& Fv \\[ 5pt ] P&=& \frac {Fv}{\eta } \\[ 5pt ] &=& \frac {\left( M_{1}+M_{2}-M_{3}\right) gv}{\eta } \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] で求められます。

【解答】

解答:(3)
(ア)
ワンポイント解説「2.昇降式エレベータの必要動力」の通りですが,\( \ v \ \mathrm {[m / min]} \ \),\( \ \eta \ \mathrm {[%]} \ \)の単位及び重力加速度\( \ g=9.8 \ \mathrm {[m / s^{2}]} \ \)に注意すると,出力\( \ P \ \mathrm {[W]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
P\times \frac {\eta }{100}&=& M\times 9.8 \times \frac {v}{60} \\[ 5pt ] P&=& 9.8\times M \times \frac {v}{60}\times \frac {100}{\eta } \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,\( \ \displaystyle \frac {100}{\eta } \ \)が適当であることがわかります。

(イ)
(ア)で求めた式と問題に与えられている式を比較すると,問題文の式には\( \ 10^{-3} \ \)があることから,出力\( \ P \ \)の単位は\( \ \mathrm {[kW]} \ \)であることがわかります。

(ウ)
ワンポイント解説「2.昇降式エレベータの必要動力」の通り,昇降する実質の質量は\( \ \left( M_{\mathrm {C}}+M_{\mathrm {L}}\right) \ \mathrm {[kg]} \ \)のかご側合計質量と,釣合いおもり質量\( \ M_{\mathrm {B}} \ \mathrm {[kg]} \ \)のとなります。

(エ)
釣合いおもりを設け,電動機の必要トルク(出力に比例)を平均的に小さくする方が電動機の容量も小さくでき効率的な運用となります。

(オ)
乗客がいないかごを上昇させるときは,釣合いおもりの方が重いので釣合いおもりの重さで自然と上昇する形となり,回生運転となります。