《機械》〈電熱〉[H22:問12]マイクロ波加熱の特徴に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

マイクロ波加熱の特徴に関する記述として,誤っているのは次のうちどれか。

(1) マイクロ波加熱は,被加熱物自体が発熱するので,被加熱物の温度上昇(昇温)に要する時間は熱伝導や対流にはほとんど無関係で,照射するマイクロ波電力で決定される。

(2) マイクロ波出力は自由に制御できるので,温度調節が容易である。

(3) マイクロ波加熱では,石英ガラスやポリエチレンなど誘電体損失係数の小さい物も加熱できる。

(4) マイクロ波加熱は,被加熱物の内部でマイクロ波のエネルギーが熱になるため,加熱作業環境を悪化させることがない。

(5) マイクロ波加熱は,電熱炉のようにあらかじめ所定温度に予熱しておく必要がなく熱効率も高い。

【ワンポイント解説】

マイクロ波加熱に関する問題です。
マイクロ波加熱と言われた時に電子レンジを思い浮かべることができれば,この問題の解答はイメージしやすくなると思います。
本問とは関係ありませんが,誘導加熱も関連する知識として覚えておくと良いでしょう。

1.誘導加熱
交番磁界中に導電体を置くことによって,ファラデーの電磁誘導の法則により渦電流が生じ,その抵抗損(ジュール損)によって発熱します。オール電化のコンロ等はこの原理を利用しています。
交番磁束は表皮効果によって被加熱物の表面近くに集まり,渦電流も被加熱物の表面付近に集中します。その指標として誘導加熱による物体への電流浸透の深さ\( \ \delta \ \mathrm {[cm]} \ \)があり,比透磁率\( \ \mu _{\mathrm {s}} \ \),抵抗率\( \ \rho \ \mathrm {[\mu \Omega \cdot cm]} \ \),周波数\( \ f \ \mathrm {[Hz]} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
\delta &=&5.03\sqrt {\frac {\rho }{\mu _{\mathrm {s}} f}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となり,周波数が低いほど物体への電流浸透の深さは深くなります。

2.誘電加熱
交番電界中に誘電体を置くことによって,誘電体に誘電損が生じ発熱します。電子レンジ(マイクロ波加熱)はこの原理を利用した電化製品の一つです。
図2に示すように,交番電界により被加熱物自体が発熱するため,予熱等も不要で被加熱物内部まで短時間で加熱することができます。また,電磁波の出力により温度調整も容易に行うことができます。

【解答】

解答:(3)
(1)正しい
ワンポイント解説「2.誘電加熱」の通り,マイクロ波加熱は,被加熱物自体が発熱し,被加熱物の温度上昇(昇温)に要する時間は照射するマイクロ波電力で決定されます。

(2)正しい
ワンポイント解説「2.誘電加熱」の通り,マイクロ波出力は自由に制御できるので,温度調節も容易です。家庭用の電子レンジでも\( \ 500 \ \mathrm {W} \ \)とか\( \ 600 \ \mathrm {W} \ \)とかを自由に調節可能かと思います。

(3)誤り
ワンポイント解説「2.誘電加熱」の通り,マイクロ波加熱は誘電体に誘電損が生じることで加熱するため,誘電体損失係数の小さい物は加熱できません。

(4)正しい
ワンポイント解説「2.誘電加熱」の通り,被加熱物の内部でマイクロ波のエネルギーが熱になるため,加熱作業環境はほとんど悪化させません。家庭用の電子レンジも何年にもわたってメンテナンスフリーで使用できるかと思います。

(5)正しい
ワンポイント解説「2.誘電加熱」の通り,電熱炉のようにあらかじめ所定温度に予熱しておく必要がないため,熱効率も高くなります。