《機械》〈パワーエレクトロニクス〉[H22:問10]降圧チョッパのダイオードに流れる電流に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

図1は,降圧チョッパの基本回路である。 オンオフ制御バルブデバイス\( \ \mathrm {Q} \ \)は,\( \ \mathrm {IGBT} \ \)を用いており,\( \ \displaystyle \frac {T}{2} \ \mathrm {[s]} \ \)の期間はオン,残りの\( \ \displaystyle \frac {T}{2} \ \mathrm {[s]} \ \)の期間はオフで,周期\( \ \displaystyle T \ \mathrm {[s]} \ \)でスイッチングし,負荷抵抗\( \ \mathrm {R} \ \)には図2に示す波形の電流\( \ i_{\mathrm {R}} \ \mathrm {[A]} \ \)が流れているものとする。

このとき,ダイオード\( \ \mathrm {D} \ \)に流れる電流\( \ i_{\mathrm {D}} \ \mathrm {[A]} \ \)の波形に最も近い波形は,図2の(1)から(5)のうちのどれか。


【ワンポイント解説】

降圧チョッパの還流ダイオードに流れる電流の波形に関する問題です。
まずはオンオフ制御バルブデバイス\( \ \mathrm {Q} \ \)がオンのときとオフのときの電流の流れを回路図に描き,リアクトル\( \ L \ \)のエネルギーがどのように増減していくか検討すると良いと思います。

1.降圧チョッパの動作
図3-1及び図3-2は降圧チョッパの例となります。
スイッチ\( \ \mathrm {S} \ \)がオンになると,図3-1のように電源からの電流はスイッチ\( \ \mathrm {S} \ \)を通り,リアクトル\( \ L \ \)側に電流が流れますが,ダイオード\( \ D_{\mathrm {F}} \ \)は逆向きなので電流が流れません。
スイッチ\( \ \mathrm {S} \ \)がオフになると,図3-2のように電源から電流は流れず,リアクトルに蓄えられてるエネルギーから出力側と還流ダイオード\( \ D_{\mathrm {F}} \ \)に電流が流れます。
したがって降圧チョッパの出力電圧の平均値\( \ V_{\mathrm {out}} \ \)は,スイッチのオン時間を\( \ T_{\mathrm {on}} \ \),オフ時間を\( \ T_{\mathrm {off}} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
V_{\mathrm {out}}&=&\frac {T_{\mathrm {on}}}{T_{\mathrm {on}}+T_{\mathrm {off}}}V_{\mathrm {in}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] で求められます。このとき,\( \ V_{\mathrm {in}} \ \)の係数
\[
\begin{eqnarray}
\gamma &=&\frac {T_{\mathrm {ON}}}{T_{\mathrm {ON}}+T_{\mathrm {OFF}}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] を通流率といいます。


【解答】

解答:(5)
ワンポイント解説「1.降圧チョッパの動作」の通り,\( \ \mathrm {Q} \ \)がオンの時はリアクトルにエネルギーが蓄えられ,負荷抵抗\( \ \mathrm {R} \ \)の電流\( \ i_{\mathrm {R}} \ \mathrm {[A]} \ \)は徐々に増加し,\( \ \mathrm {Q} \ \)がオフの時はリアクトルに蓄えられていたエネルギーが放出され\( \ i_{\mathrm {R}} \ \mathrm {[A]} \ \)は徐々に減少する。

また,ダイオード\( \ \mathrm {D} \ \)にはオフの時に電流が流れ,その大きさは\( \ i_{\mathrm {R}} \ \mathrm {[A]} \ \)と等しい。

以上の条件を満たす波形は(5)と求められる。