《機械》〈回転機〉[H22:問15]三相同期発電機の電機子電流及び出力に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

\( \ 1 \ \)相当たりの同期リアクタンスが\( \ 1 \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)の三相同期発電機が無負荷電圧\( \ 346 \ \mathrm {[V]} \ \)(相電圧\( \ 200 \ \mathrm {[V]} \ \))を発生している。そこに抵抗器負荷を接続すると電圧が\( \ 300 \ \mathrm {[V]} \ \)(相電圧\( \ 173 \ \mathrm {[V]} \ \))に低下した。 次の(a)及び(b)に答えよ。

ただし,三相同期発電機の回転速度は一定で,損失は無視するものとする。

(a) 電機子電流\( \ \mathrm {[A]} \ \)の値として,最も近いのは次のうちどれか。

 (1) \( \ 27 \ \)  (2) \( \ 70 \ \)  (3) \( \ 100 \ \)  (4) \( \ 150 \ \)  (5) \( \ 173 \ \)

(b) 出力\( \ \mathrm {[kW]} \ \)の値として,最も近いのは次のうちどれか。

 (1) \( \ 24 \ \)  (2) \( \ 30 \ \)  (3) \( \ 52 \ \)  (4) \( \ 60 \ \)  (5) \( \ 156 \ \)

【ワンポイント解説】

同期機の電機子電流と出力の導出に関する問題です。
等価回路とベクトル図は与えられていませんので,その二つはご自身で描けるようにしておく必要があります。
今回の問題は誤答は用意されていませんが,三相であることを忘れて一相分の出力を計算しないように注意しましょう。

1.同期発電機の等価回路
同期発電機の一相分等価回路は誘導起電力(相電圧)\( \ {\dot E}_{0} \ \mathrm {[V]} \ \),端子電圧(相電圧)\( \ \dot E \ \mathrm {[V]} \ \),同期リアクタンス\( \ x_{\mathrm {s}} \ \mathrm {[\Omega ]} \ \),電機子巻線抵抗\( \ r_{\mathrm {a}} \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)とすると,図1のようになります。
通常,電機子巻線抵抗\( \ r_{\mathrm {a}} \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)は十分に小さいと考え,無視して考えることが一般的です。
また,等価回路よりベクトル図は図2のようになります。ただし,\( \ \theta \ \)は力率角,\( \ \delta \ \)は負荷角です。


2.同期発電機の出力
同期発電機のベクトル図は誘導起電力(相電圧)\( \ {\dot E}_{0} \ \mathrm {[V]} \ \),端子電圧(相電圧)\( \ \dot E \ \mathrm {[V]} \ \),同期リアクタンス\( \ x_{\mathrm {s}} \ \mathrm {[\Omega ]} \ \),力率角\( \ \theta \ \),負荷角\( \ \delta \ \)とすると図3のようになり,このベクトル図において,①線を求める式より,
\[
\begin{eqnarray}
E_{0}\sin \delta &=&x_{\mathrm {s}}I \cos \theta \\[ 5pt ] I \cos \theta &=&\frac {E_{0}\sin \delta }{x_{\mathrm {s}}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であり,三相同期発電機の出力は\( \ P=3EI\cos \theta \ \mathrm {[W]} \ \)で求められるので,これに上式を代入すると,
\[
\begin{eqnarray}
P &=&3EI\cos \theta \\[ 5pt ] &=&\frac {3E_{0}E\sin \delta }{x_{\mathrm {s}}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。この\( \ 2 \ \)式はどちらも公式として覚えておきましょう。

【解答】

(a)解答:(3)
無負荷電圧(=誘導起電力)\( \ E_{0}=200 \ \mathrm {[V]} \ \),抵抗器負荷を接続したときの電圧\( \ E=173 \ \mathrm {[V]} \ \),力率が\( \ 1 \ \)であるから,ベクトル図を描くと図4のようになる。ただし,\( \ x_{\mathrm {s}} \ \)は同期リアクタンス\( \ 1 \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)である。

図4に三平方の定理を適用すると,
\[
\begin{eqnarray}
E_{0}^{2} &=&E^{2}+\left( x_{\mathrm {s}}I \right) ^{2} \\[ 5pt ] 200^{2} &=&173^{2}+\left( 1\times I \right) ^{2} \\[ 5pt ] I^{2}&=&200^{2}-173^{2} \\[ 5pt ] I&=&\sqrt {200^{2}-173^{2}} \\[ 5pt ] &≒&100.4 → 100 \ \mathrm {[A]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(b)解答:(3)
同期発電機の出力\( \ P \ \mathrm {[kW]} \ \)は,ワンポイント解説「2.同期発電機の出力」の通り,
\[
\begin{eqnarray}
P &=&3EI\cos \theta \\[ 5pt ] &=&3\times 173 \times 100.4 \times 1 \\[ 5pt ] &≒&52100 \ \mathrm {[W]} → 52 \ \mathrm {[kW]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。