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【問題】
【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)
次の文章は,電気加熱に関する記述である。
電気ストーブの発熱体として石英ガラス管に電熱線を封入したヒータがよく用いられている。この電気ストーブから室内への熱伝達は主に放射と\( \ \fbox { (ア) } \ \)によって行われる。また,このヒータからの放射は主に\( \ \fbox { (イ) } \ \)である。
一方,交番電界中に被加熱物を置くことによって被加熱物を加熱することができる。一般に物質は抵抗体,誘電体,磁性体などの性質をもち,被加熱物が誘電体の場合,交番電界中に置かれた被加熱物には交番電流が流れ,被加熱物自身が発熱することによって被加熱物が加熱される。このとき,加熱に寄与するのは交番電流のうち交番電界\( \ \fbox { (ウ) } \ \)電流成分である。この原理に基づく加熱には\( \ \fbox { (エ) } \ \)がある。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[
\begin{array}{ccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) \\
\hline
(1) & 対 流 & 赤外放射 & と同相の & マイクロ波加熱 \\
\hline
(2) & 対 流 & 赤外放射 & に直交する & マイクロ波加熱 \\
\hline
(3) & 対 流 & 可視放射 & に直交する & 誘導加熱 \\
\hline
(4) & 伝 導 & 赤外放射 & と同相の & 誘導加熱 \\
\hline
(5) & 伝 導 & 可視放射 & と同相の & 誘導加熱 \\
\hline
\end{array}
\]
【ワンポイント解説】
赤外加熱とマイクロ波加熱に関する問題です。
赤外加熱の例としてはサウナ,マイクロ波加熱の例としては電子レンジ等があります。加熱方法と現物を比較しながら理解すると内容も頭に入りやすいかと思います。
1.赤外加熱
可視光との境界である波長\( \ 0.78 \ \mathrm {\mu m} \ \)以上の赤外線による熱放射を利用して,加熱物を加熱する方法です。物質表面から放射される全放射パワーが絶対温度で表した表面温度の\( \ 4 \ \)乗に比例するというステファン・ボルツマンの法則に従って加熱されます。
塗装や印刷の乾燥のほか,食品,電子部品,半導体,プラスチックなどの製造工程においても用いられています。

2.誘電加熱
交番電界中に誘電体を置くことによって,誘電体に誘電損が生じ発熱します。電子レンジ(マイクロ波加熱)はこの原理を利用した電化製品の一つです。
図2に示すように,交番電界により被加熱物自体が発熱するため,予熱等も不要で被加熱物内部まで短時間で加熱することができます。また,電磁波の出力により温度調整も容易に行うことができます。
マイクロ波加熱では,電磁波の浸透深さを示す値として密度が半減する電力半減深度\( \ D \ \mathrm {[m]} \ \)というものがあり,周波数\( \ f \ \mathrm {[Hz]} \ \),比誘電率\( \ \varepsilon _{\mathrm {r}} \ \),誘電正接\( \ \tan \delta \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
D &≒& \frac {3.32\times 10^{7}}{f\sqrt {\varepsilon _{\mathrm {r}}}\tan \delta } \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
で求められます。

【解答】
解答:(1)
(ア)
電気ストーブから室内への熱伝達は主に熱放射と熱対流によるものとなります。熱伝導は物質を伝わって熱が移動する現象で,湯たんぽやカイロ等は熱伝導となります。
(イ)
ワンポイント解説「1.赤外加熱」の通り,ヒータからの放射は波長の長い赤外放射で可視光ではありません。
(ウ)
マイクロ波加熱において加熱に寄与するのは,抵抗分すなわち電界と同相の電流成分になります。
(エ)
ワンポイント解説「2.誘電加熱」の通り,交番電界中に被加熱物を置くことによって加熱することができるのはマイクロ波加熱となります。