《機械》〈水力・自動制御〉[H30:問18]水力発電所のシーケンスに関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

一般的な水力発電所の概略構成を図1に,発電機始動から遮断器投入までの順序だけを考慮したシーケンスを図2に示す。図2において,\(\mathrm {SW}\)は始動スイッチ,\(\mathrm {GOV}\)はガバナ動作,\(\mathrm {AVR}\)は自動電圧調整器動作,\(\mathrm {CBC}\)は遮断器投入指令である。

\(\mathrm {GOV}\)がオンの状態では,ガイドベーンの操作によって水車の回転速度が所定の時間内に所定の値に自動的に調整される。\(\mathrm {AVR}\)がオンの状態では,励磁装置の動作によって発電機の出力電圧が所定の時間内に所定の値に自動的に調整される。水車の回転速度及び発電機の出力電圧が所定の値になると,自動的に外部との同期がとれるものとする。

この始動シーケンスについて,次の(a)及び(b)の問に答えよ。なお,シーケンス記号は\(\mathrm {JIS \ C \ 0617-7}\)(電気用図記号-第7部:開閉装置,制御装置及び保護装置)に従っている。


(a) 図2の(ア)~(ウ)に示したシンボルの器具名称の組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

\[
\begin{array}{cccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) \\
\hline
(1) & 押しボタンスイッチ & 自動復帰接点 & 手動復帰接点 \\
\hline
(2) & ひねり操作スイッチ & 瞬時動作限時復帰接点 & 限時動作瞬時復帰接点 \\
\hline
(3) & 押しボタンスイッチ & 瞬時動作限時復帰接点 & 限時動作瞬時復帰接点 \\
\hline
(4) & ひねり操作スイッチ & 自動復帰接点 & 手動復帰接点 \\
\hline
(5) & 押しボタンスイッチ & 限時動作瞬時復帰接点 & 瞬時動作限時復帰接点 \\
\hline
\end{array}
\]

(b) 始動スイッチをオンさせてから遮断器の投入指令までの時間の値[秒]として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。なお,リレーの動作遅れはないものとする。

 (1) \(5\)  (2) \(10\)  (3) \(20\)  (4) \(30\)  (5) \(35\)

【ワンポイント解説】

シーケンスのメカニズムに関する問題で,電験としては非常に珍しい問題と言えます。実務で取り扱っている方であれば比較的容易に解けるかもしれませんが,そうでない方は他の問題を選択した方が無難であると思います。

【解答】

(a)解答:(3)
図の記号の(ア)は押しボタンスイッチ,(イ)は瞬時動作限時復帰接点,(ウ)は限時動作瞬時復帰接点の図記号です。瞬時動作限時復帰とは,例えば(イ)の\(\mathrm {TLR1}\)の場合,左の\(\mathrm {TLR1}\)の作動コイルに電流が流れると,瞬時に動作して,\(5\)秒後に復帰する接点という意味です。また,限時動作瞬時復帰接点とは,例えば(ウ)の\(\mathrm {TLR2}\)の場合,左の\(\mathrm {TLR2}\)の作動コイルに電流が流れると,\(20\)秒後に動作して,すぐに復帰する接点という意味です。

(b)解答:(4)
遮断器投入までの動作は次に示す順序となります。

① \(\mathrm {SW}\)を押すと作動コイル\(\mathrm {R}\)に電流が流れます。
② \(\mathrm {R}\)に電流が流れると,右横の\(\mathrm {R}\)の接点が導通し,作動コイル\(\mathrm {TLR1}\)に電流が流れます。
③ \(\mathrm {TLR1}\)に電流が流れると,瞬時に(イ)の\(\mathrm {TLR1}\)接点が導通し,作動コイル\(\mathrm {GOV}\)に電流が流れます。
③ \(\mathrm {GOV}\)に電流が流れると,右横の\(\mathrm {GOV}\)の接点が導通し,\(\mathrm {R}\)の接点も導通しているので,作動コイル\(\mathrm {TLR2}\)に電流が流れます。
④ \(\mathrm {TLR2}\)に電流が流れると,20秒後に(ウ)の\(\mathrm {TLR2}\)接点が導通し,作動コイル\(\mathrm {AVR}\)に電流が流れます。
⑤ \(\mathrm {AVR}\)に電流が流れると,右横の\(\mathrm {AVR}\)の接点が導通し,\(\mathrm {GOV}\)の接点も導通しているので,作動コイル\(\mathrm {TLR3}\)に電流が流れます。
⑥ \(\mathrm {TLR3}\)に電流が流れると,10秒後に\(\mathrm {TLR3}\)接点が導通し,作動コイル\(\mathrm {CBC}\)に電流が流れます。

よって,合計時間は\(20+10=30 \ \mathrm {[s]}\)となります。