《機械》〈パワーエレクトロニクス〉[R05上:問10]スイッチングデバイスの比較に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

パワー半導体スイッチングデバイスとしては近年,主に IGBT とパワー MOSFET が用いられている。通常動作における両者の特性を比較した記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)  IGBT は,オンのゲート電圧が与えられなくても逆電圧が印加されれば逆方向の電流が流れる。

(2) パワー MOSFET は電圧駆動形であり,ゲート・ソース間に正の電圧をかけることによりターンオンする。

(3) パワー MOSFET はユニポーラデバイスであり,一般的にバイポーラ形の IGBT と比べてターンオン時間が短い一方,流せる電流は小さい。

(4)  IGBT はキャリアの蓄積作用のためターンオフ時にテイル電流が流れ, パワー MOSFET と比べてオフ時間が長くなる。

(5) パワー MOSFET ではシリコンのかわりに SiC を用いることで,高耐圧化と高耐熱化が可能になる。

【ワンポイント解説】

 IGBT  MOSFET の動作原理に関する問題です。
今回の誤答の内容は気が付けば当然という内容ですが,問題文をサラッと読んでしまうと合っているような気がしてしまう内容です。
よく読んで一文一文が合っているか確認するようにしましょう。

1. MOSFET の動作原理
 MOSFET  n チャネル)は,図1のように p 形基板表面に n 形のソース S とドレーン D を形成し,ゲート G を電子や正孔を通さない薄いゲート酸化膜を介して形成する素子です。

図1のように,ゲート-ソース間電圧 VGS が零のとき,ドレーン-ソース間電圧 VDS を加えても, p 形基板によりドレーン-ソース間は導通せず,ドレーン電流 ID は流れません。
図2のように,ゲート-ソース間電圧 VGS を加えると,ゲート電極に電子が引き寄せられ,疑似的な n 形の層ができ,ドレーン-ソース間が導通するようになり,ドレーン電流 ID が流れるようになります。そのままドレーン-ソース間電圧 VDS を大きくしていっても,ある値を上限に n 層の導通路の幅が支配的となり,ドレーン電流 ID は大きくなりません。
一方,ゲート-ソース間電圧 VGS を大きくすると, n 層の導通路が大きくなるので,ドレーン電流 ID が大きくなります。
したがって,ドレーン電流 ID はゲート-ソース間電圧 VGS でコントロールできることがわかります。

2. IGBT の動作原理
バイポーラトランジスタと MOSFET を組み合わせたようなデバイスで, MOSFET の速度と大容量化を同時にできる良いとこどりのデバイスです。ただし,速度は MOSFET の方が高速のため,小容量では MOSFET を使用します。特にターンオフ時間はデバイスへのキャリヤの蓄積作用のため長いです。 IGBT の構造は図3のようになります。

動作原理は MOSFET と似ており,ゲート-エミッタ間電圧 VGE をゲート電極に加えることで電子が引き寄せられ,疑似的な n 形の層ができ,コレクタ-エミッタ間が導通するようになり,コレクタ電流 IC が流れるようになります。

【解答】

解答:(1)
(1)誤り
ワンポイント解説「2. IGBT の動作原理」の通り, IGBT オンのゲート電圧が与えられないと動作しない構造の素子です。

(2)正しい
ワンポイント解説「1. MOSFET の動作原理」の通り,パワー MOSFET は電圧駆動形であり,ゲート・ソース間に対しては正の電圧をかけることによりターンオンします。

(3)正しい
問題文の通り,パワー MOSFET は電子もしくは正孔のどちらかが移動するユニポーラデバイスであり,一般的にバイポーラ形の IGBT と比べてターンオン時間が短いですが,流せる電流は小さいです。

(4)正しい
ワンポイント解説「2. IGBT の動作原理」の通り, IGBT はキャリアの蓄積作用のためターンオフ時にテイル電流が流れ, パワー MOSFET と比べてオフ時間が長くなります。

(5)正しい
問題文の通り,パワー MOSFET ではシリコンのかわりに SiC を用いることで,高耐圧化と高耐熱化が可能になります。