《機械》〈情報伝送及び処理〉[R4下:問13]さまざまな電気通信の説明に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,電気通信に関する記述である。

電気通信において,信号に変換された情報を伝える媒体を伝送路と呼ぶ。伝送路などから混入し,送りたい信号を変化させてしまうことがある不要な成分を\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)という。

身近な通信手段の一つとして電話がある。地域間をまたがる電話網において多数の通話を効率的に中継するために,\( \ 1 \ \)本の伝送路を用いて同時に多数の通話を伝送する技術を\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)という。

無線通信では,送りたい情報を信号波と呼ばれる電気信号に変換した後,送信機によって,周波数のより高い搬送波と呼ばれる信号と合成し,\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)を作る。\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)を作り出したり,受信機において\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)から信号波を取り出す方式はいくつかある。

アナログ信号をディジタル信号に変換する\( \ \mathrm {A – D} \ \)変換においては,アナログ信号の最高周波数に対して,その\( \ 2 \ \)倍以上の周波数で\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)を行えば,\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)された信号から元のアナログ信号を再現できる。これを\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)定理という。

画像や音声,ビデオなどの情報をそのまま記録・伝送しようとすると,データのサイズが大きくなるために,データの\( \ \fbox {  (オ)  } \ \)が行われる。静止画像の代表的な\( \ \fbox {  (オ)  } \ \)方法として\( \ \mathrm {JPEG} \ \)という国際標準規格がある。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[
\begin{array}{cccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) & (オ) \\
\hline
(1) & 雑音(ノイズ) & 輻輳 & 正弦波 & 標本化 & 圧縮 \\
\hline
(2) & 側波帯 & 多重化 & 変調波 & 標本化 & 伸長 \\
\hline
(3) & 雑音(ノイズ) & 多重化 & 変調波 & 標本化 & 圧縮 \\
\hline
(4) & 雑音(ノイズ) & 多重化 & 変調波 & 量子化 & 伸長 \\
\hline
(5) & 側波帯 & 輻輳 & 正弦波 & 量子化 & 圧縮 \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

伝送路を使用した電気通信に関する問題です。
これまであまり\( \ \mathrm {A} \ \)問題では出題されてこなかった内容が,令和4年上期から出題されるようになりました。
大きな出題傾向の変化かもしれませんので,あまり対策をされていない方は電験のテキストを離れ,情報伝送の勉強を取り入れるようにしてみて下さい。

1.伝送路における多重化
\( \ 1 \ \)本の伝送路を使用して,伝送路を効率的に運用し,同時に多数の情報を伝送する技術を多重化といいます。

多重化には,それぞれの通話を別のデータとして取り扱うための搬送波の周波数帯を分割してそれぞれに割り当てる周波数分割多重や通信時間を区切って割り当てる時分割多重,通信信号ごとに符号を分ける符号分割多重があります。

次図のように,無線通信では信号波を周波数の高い搬送波と合成し,変調波として伝送を行いますが,周波数分割多重ではこの搬送波の周波数を異なる信号により多重化を行うことが可能となります。

2.ディジタル伝送方式
ディジタル伝送方式は,アナログ量である情報をディジタル量に変換(\( \ \mathrm {A / D} \ \)変換)してから情報を伝送する仕組みで,下記のような過程を経て情報を伝送します。量子化されていることから雑音(ノイズ)の影響を受けにくいことやコンピュータで処理しやすい等の特長がありいます。

①標本化(サンプリング)
 アナログ量の大きさを一定周期\( \ T \ \)ごとに読み取り,期間\( \ T \ \)の間はその値が一定であるようにすることです。\( \ \displaystyle \frac {1}{T} \ \)をサンプリング周波数と言います。サンプリング周波数の\( \ \displaystyle \frac {1}{2} \ \)以上の周波数(ナイキスト周波数)を持つと,折り返し誤差が発生する(エイリアシング現象)ので,フィルタで除去する必要があります。

②量子化
 標本化した情報を\( \ \mathrm {A / D} \ \)変換器でディジタル値に変換することを言います。

③符号化
 量子化した情報をサンプリング周波数毎のパルス化することを言います。

3.静止画像の圧縮技術
画像データを伝送するためにデータのサイズを小さくする技術を圧縮といい,\( \ \mathrm {JPEG} \ \),\( \ \mathrm {PNG} \ \),\( \ \mathrm {GIF} \ \)等があります。
\( \ \mathrm {JPEG} \ \)は圧縮率が高く,データを伝送する際によく使用される技術ですが,一度圧縮してしまうと元に戻すことができない非可逆性圧縮であり,圧縮率を上げすぎるとモスキートノイズが発生する可能性があります。
\( \ \mathrm {PNG} \ \)は可逆性圧縮であり,透明背景とする場合に便利ですが,\( \ \mathrm {JPEG} \ \)と比較すると容量が大きくなってしまう場合があります。
\( \ \mathrm {GIF} \ \)は静止画像だけでなく,アニメーション画像にも対応できる方式です。

【解答】

解答:(3)
(ア)
伝送路などから混入し,送りたい信号を変化させてしまうことがある不要な成分を雑音(ノイズ)といいます。

(イ)
ワンポイント解説「1.伝送路における多重化」の通り,\( \ 1 \ \)本の伝送路を用いて同時に多数の通話を伝送する技術を多重化といいます。

(ウ)
ワンポイント解説「1.伝送路における多重化」の通り,信号波と周波数のより高い搬送波を合成して作るものを変調波といいます。

(エ)
ワンポイント解説「2.ディジタル伝送方式」の通り,\( \ \mathrm {A / D} \ \)変換において\( \ 2 \ \)倍以上の周波数で読み取る操作を標本化といいます。

(オ)
ワンポイント解説「3.静止画像の圧縮技術」の通り,データのサイズを小さくする技術を圧縮といいます。