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【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
三相同期発電機の短絡比に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 短絡比を小さくすると,発電機の外形寸法が小さくなる。
(2) 短絡比を小さくすると,発電機の安定度が悪くなる。
(3) 短絡比を小さくすると,電圧変動率が小さくなる。
(4) 短絡比が小さい発電機は,銅機械と呼ばれる。
(5) 短絡比が小さい発電機は,同期インピーダンスが大きい。
【ワンポイント解説】
三相同期発電機の短絡比に関する問題です。
本問の内容をしっかりと理解するためには,多くの予備知識を必要とします。
最初は何を言っているかわからないかもしれませんが,色々な項目を理解し再び見直すと理解できるようになりますので,一旦は短絡比が大きい方がコストも大きいけれど,全体的に発電機としての特性は良くなりやすいと覚えておくと良いでしょう。
1.同期発電機の無負荷飽和曲線と三相短絡曲線
同期発電機は図1のような無負荷飽和曲線と三相短絡曲線の特性があります。図中の\( \ V_{\mathrm {n}} \ \mathrm {[V]} \ \)は定格電圧,\( \ I_{\mathrm {n}} \ \mathrm {[A]} \ \)は定格電流,三相短絡曲線は曲線ですが,ほぼ比例の直線と近似できます。
この時,\( \ I_{\mathrm {s}} \ \mathrm {[A]} \ \)は定格電圧時の三相短絡電流であり,短絡比\( \ K \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
K &=& \frac {I_{\mathrm {s}}}{I_{\mathrm {n}}}=\frac {I_{\mathrm {f1}}}{I_{\mathrm {f2}}} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となります。

2.同期発電機の等価回路
同期発電機の一相分等価回路は誘導起電力(相電圧)\( \ {\dot E}_{0} \ \mathrm {[V]} \ \),端子電圧(相電圧)\( \ \dot E \ \mathrm {[V]} \ \),同期リアクタンス\( \ x_{\mathrm {s}} \ \mathrm {[\Omega ]} \ \),電機子巻線抵抗\( \ r_{\mathrm {a}} \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)とすると,図2のようになります。
通常,電機子巻線抵抗\( \ r_{\mathrm {a}} \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)は十分に小さいと考え,無視して考えることが一般的です。
また,等価回路よりベクトル図は図3のようになります。ただし,\( \ \theta \ \)は力率角,\( \ \delta \ \)は負荷角です。
3.百分率インピーダンスと短絡比の関係
同期発電機の百分率同期インピーダンスが\( \ %Z \ \mathrm {[%]} \ \),短絡比が\( \ K \ \)であるとき,その関係は,
\[
\begin{eqnarray}
K&=&\frac {100}{%Z} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
の関係があります。
※百分率インピーダンスの定義式等を用いて\( \ \displaystyle I_{\mathrm {s}}=\frac {V_{\mathrm {n}}}{\sqrt {3}Z_{\mathrm {s}} \ \mathrm {[\Omega ]}} \ \)から上式を求めることはできますが,試験時には暗記しておいた方が良いと思います。
\[
\begin{eqnarray}
I_{\mathrm {s}}&=&\frac {\displaystyle \frac {V_{\mathrm {n}}}{\sqrt {3}}}{Z_{\mathrm {s}} \ \mathrm {[\Omega ]}} \\[ 5pt ]
&=&\frac {V_{\mathrm {n}}}{\sqrt {3}Z_{\mathrm {s}} \ \mathrm {[\Omega ]}} \\[ 5pt ]
\frac {I_{\mathrm {s}}}{I_{\mathrm {n}}}&=&\frac {V_{\mathrm {n}}}{\sqrt {3}Z_{\mathrm {s}} \ \mathrm {[\Omega ]}I_{\mathrm {n}}} \\[ 5pt ]
K&=&\frac {V_{\mathrm {n}}}{\sqrt {3}Z_{\mathrm {s}} \ \mathrm {[\Omega ]}I_{\mathrm {n}}\times 100}\times 100 \\[ 5pt ]
&=&\frac {100}{%Z_{\mathrm {s}}} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
4.短絡比と同期発電機の関係
一般に短絡比が大きいと以下の特徴があります。
・同期インピーダンスが小さい
→百分率同期インピーダンス(∝同期インピーダンス)が短絡比の逆数となるため
・鉄機械となる
→インピーダンスが小さい,すなわち巻線の量の割合が小さくなるため
・電圧変動率が小さくなる
→電圧変動率は\( \ \displaystyle \frac {E_{0}-E}{E} \ \)で定義され,同期インピーダンスが小さい程誘導起電力\( \ E_{0} \ \mathrm {[V]} \ \)と端子電圧\( \ E \ \mathrm {[V]} \ \)の差が小さくなるため
・発電機の安定度が良い
→同期インピーダンスが小さいと電圧変動率が小さくなるため
・発電機の外形寸法,重量が大きくなる
→鉄心が割合が多くなるため
・鉄損及び機械損が大きい
→鉄心が多く,寸法も大きいため
・安定度が良くなる
→同期インピーダンスが小さくなり同期化力\( \ \left( \displaystyle ∝ \frac {1}{X}\right) \ \)が向上するため
【解答】
解答:(3)
(1)正しい
ワンポイント解説「4.短絡比と同期発電機の関係」の通り,短絡比を小さくすると,発電機の外形寸法が小さくなります。
(2)正しい
ワンポイント解説「4.短絡比と同期発電機の関係」の通り,短絡比を小さくすると,発電機の安定度が悪くなります。
(3)誤り
ワンポイント解説「4.短絡比と同期発電機の関係」の通り,短絡比を小さくすると,電圧変動率が大きくなります。
(4)正しい
ワンポイント解説「4.短絡比と同期発電機の関係」の通り,短絡比が小さい発電機は,銅機械と呼ばれます。
(5)正しい
ワンポイント解説「4.短絡比と同期発電機の関係」の通り,短絡比が小さい発電機は,同期インピーダンスが大きくなります。